消費期限・賞味期限と食品ロス
こんにちは。管理栄養士のTany.(タニィ)です。
食と健康に関する、小難しい国の基準や法令をわかりやすく伝えています。
今回は消費期限・賞味期限と食品ロス問題について書きたいと思います。
「消費期限」と「賞味期限」の違い
加工食品には食品表示法によって、消費期限と賞味期限を表示することが義務付けられています。
一部省略することが可能な食品もありますが、それは後で話すとします。
基本的には以下の通りです。
消費期限は開封前の状態、書いてある方法で保存した場合に食中毒などの問題が起きない期限です。よって、消費期限が過ぎたものは食べないようにしてくださいと注意喚起されています。
消費期限は弁当や調理パン、そうざい、肉、生菓子、生めん類など劣化しやすい食品に年月日が表示されています。
賞味期限は開封前の状態、書いてある方法で保存した場合に風味なども含めて「おいしく」食べられる期限です。よって、賞味期限が過ぎたからと言ってすぐに食べられなくなるわけではありません。食べられるかどうかは、消費者個人の判断にゆだねられていますが、私はそういったものがあった場合は、見て触ってにおいを嗅いで、少し食べてみて・・というように聴覚以外の五感(四感?)をフル活用して判断します。消費者庁の資料にも、調理法を工夫することにより食品の無駄な廃棄を減らしていくことも重要です、と書かれていますので、賞味期限は過ぎても食べられる、ということかと思います。もちろんその時の体調やモノにもよると思いますが・・・。
賞味期限は缶詰や冷凍食品、スナック菓子、即席めん類など比較的日持ちする食品に表示されています。
賞味期限の表示の仕方は通常年月日まで表示することになっていますが、製造日から賞味期限までが3か月を超えるものは年月のみの表示が認められています。
例えば2021年2月14日が賞味期限となる食品には2021年2月ではなく、2021年1月と表示する、と表示されます。
注意点は、どちらの期限も、「開封前+書いてある保存方法で保存した場合」のことです。よって一度開封したものは早めに食べるのがよいかと思います。
以上の話をイメージ図でわかりやすく整理したものが図1、図2です。
図1 賞味期限と消費期限のイメージ
図2 賞味期限と消費期限の比較
期限はどのように設定しているのか
食品期限表示の設定のためのガイドラインでは、輸入食品等は輸入業者、輸入食品以外の食品は、製造業者、加工業者または販売業者が責任をもって期限表示をすることとなっています。基本的な考え方としては、各業者は食品の性質や特徴に合った、客観的な指標を作って検査し、総合的に判断して期限を設定することが望ましいと言われています。
一般的には、期限の短い消費期限の表示対象となる食品は、食中毒菌、大腸菌その他の微生物試験が必要だと考えられています。また実際に保存期間中にどの菌が増えやすいかなど細かくチェックしていくことも必要だと考えられています。
比較的期限の長い賞味期限の表示対象となる食品は、その特徴に応じてどの試験を行うのかを選択します。ここは食品業者によって判断が様々あるかと思います。
一般財団法人 食品産業センターには食品別の試験方法の抜粋がアップされています。
興味のある方はご覧ください。
https://www.shokusan.or.jp/publishing/page/10/
なお、一つ一つの商品に対して試験をするのは現実的でないということで、似たような性質の食品が複数ある場合には一つの試験の結果を流用してよいとしています。
賞味期限の表示が省略できるものとして食品表示基準に定められているもので、意外な感じがするものがアイスクリーム類です。
-18度で保存すると微生物が増殖しないため長期的に保存可能な食品です。気づいたら冷蔵庫の中が賞味期限切れのものだらけになっていた!ということになりがちな方も多めに買っていても大丈夫なものです。
もう一つ豆知識のような話があります。卵は生鮮食品にあたり期限表示が必須であるため賞味期限が書かれています。卵は生のまま食べて安全な期限が賞味期限とされていますので、加熱するのであれば賞味期限を過ぎていても問題ありません。またその期限が迫ってきたときに保存性を高めようとゆで卵にする方がいるのですが、実はゆで卵より生卵のままの方が日持ちします。
これは生卵には殺菌作用のあるリゾチームという酵素が含まれていますが、加熱することによって酵素の殺菌作用が失われてしまうことによります。ゆで卵にした場合は作ってから3-4日ほどで食べるようにしましょう。
暗黙の了解「1/3ルール」から見える力関係
法令上の根拠はなく、慣習のようなものなのですが、製造と小売(販売)の間に1/3ルールというものが一部存在するようです。
例えば2021年2月1に製造し、2022年1月31日に賞味期限を迎えるものがあったとすると、販売店舗への納入期限は2021年5月末まで、2021年9月末までで製造に返品する、ということです。
イメージ図を以下に示します。
図3 1/3ルールのイメージ
このルールがあると、製造(食品メーカー等)に期限まで少しある商品が多く戻ってきてしまいます。原則として再出荷することは認められていないため、処分するしかない・・・と考えているところもありそうです。
割引するなどして販売する小売店やスーパーも増えてきましたが、そういったものを置いていないところもあります。
昔は、賞味期限が迫っている商品を置いているお店ってどうなの!?という感情があったかもしれませんが、ノーベル平和賞を受賞したワンガリ=マータイさんの「MOTTAINAI」が広まってきたころから、賞味期限の近い商品を割引してでも販売(購入)することは環境に配慮していること、というイメージに徐々についてきたように思います。
少し古いデータですが、平成28年時点で食品廃棄物等の内食べられると考えられるものの量は推計で643万トンでした。
図4 食品廃棄物の発生量(平成28年度推計)
食品ロス量の移り変わりは図5の通りです。平成29年度では、平成24年度以降で最も少ない量になりました。
規格外の商品も販売したり予約制にして余分に作らなかったり、フードバンクに寄付したりと食品ロス量を減らすための取り組みを行っているところもあります。食べ放題のお店で「大量に食べ残しがあった場合には料金をいただきます」という内容の注意書きをよく見かけるようになったようにも感じます。
図5 食品ロスの推移(平成24~29年度)
図6 家庭系食品ロス量の推計結果(平成26年~28年度)
家庭系についても平成29年度で一番少ない量になっています。
直接廃棄:賞味期限切れ等、食材・食品として使用・提供されずに廃棄したもの
過剰除去:大根の皮の厚むきなど、過剰に除去した食べられる部分
食べ残し:提供された食品のうち、食べ残して廃棄したもの
生ごみ処理機購入助成制度の後押しがあって、生ごみ処理機で生ごみを堆肥にして使う方もいたと思いますし、食べる分量だけ買い物をする、たくさん買ったら小分けして冷凍保存するなど心掛けている方も多いと思います。
確かに全体的には食品ロス量が少なくなってきているものの、平成27年に国連で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)のターゲットでは「2030年までに小売り・消費レベルにおける世界全体の一人あたりの食糧の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食糧の損失を減少させる」となっていて、まだまだみんなで協力していく必要があると感じます。
(廃棄の半減のラインは図5の赤い横線です。)
個人でできることは限られていますが、今回いろいろと調べてみて、賞味期限が切れていても食べられるものは食べていきたいですし、食品を買いに行くときは食べられる分量だけを買うことでお財布にもやさしい生活をしようと思いました。(当たり前のことかもしれませんが)
ちなみに食糧ロスは2015年に国連サミットで採択されたSDGs(持続可能な開発目標)の12番目の 「つくる責任 つかう責任」にあたります。
以上、参考になれば嬉しいです。
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≪参考資料≫
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_sanitation/expiration_date/pdf/syokuhin375.pdf
消費者庁/食品の期限表示に関する情報 期限表示とは
https://www.maff.go.jp/j/jas/kaigi/pdf/guide_0502.pdf
農林水産省/食品表示のためのガイドライン(平成17年)
https://www.maff.go.jp/j/jas/hyoji/pdf/qa_ka_2_h2304.pdf
農林水産省/加工食品の表示に関する共通Q&A
https://www.shokusan.or.jp/publishing/page/10/
一般財団法人 食品産業センター/食品別ガイドラインの概要
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/information/notice/pdf/syokuhin53.pdf
消費者庁/食品の期限表示に関する情報 消費期限又は賞味期限の適切な取扱いについて
https://www.maff.go.jp/j/press/shokusan/kankyoi/attach/pdf/190412_40-1.pdf
農林水産省/食品廃棄物の発生量(平成28年度推計)
https://www.env.go.jp/recycle/H30_houkokusyo.pdf
農林水産省/平成30年度 食品廃棄物等の発生抑制及び再生利用の促進の取組に係る実態調査
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/sdgs/sdgs_target.html
農林水産省/SDGs17の目標と169のターゲット
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