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Le Havre

監督:アキ・カウリスマキ/2011年/フランス


あらすじ

フランスの港町ル・アーヴルに住むマルセルは、靴磨きの仕事をしながら街の商人達や妻のアルレッティに支えられ、貧乏ながら幸せな生活を送っていた。しかしアルレッティに癌が発覚。緊急入院してしまう。悲しみの最中、アフリカから貨物船がたどり着きコンテナに大勢の密航者が運ばれてきた。警察は密航者を一斉確保するが、少年のイドリッサだけは警察から逃れ、マルセルの家に隠れる。心優しいマルセルはイドリッサを母親のいるロンドンへ行かせてあげたいと、必死に知恵を凝らす。するとル・アーヴルの住民が少しずつ手を貸していく。しかし警視庁モネが目を光らす...。


邦題なんてクソくらえ!

アキ・カウリスマキがこの映画につけたタイトルは「Le Havre」だ。シンプルに街の名前であり、これ以上ない程の秀逸なタイトルだ。

しかし、邦題は「ル・アーヴルの靴みがき」だ。「靴みがき」というキーワードを入れた事によって、多くの視聴者がこの映画の最大のテーマを見失うことになるだろう。

結論から言って、「Le Havre」の最大のテーマとはアルレッティの癌と密航者イドリッサを比喩している事であり、一見ハートフルな映画に思えるが、本当は人種差別をテーマにしたブラックユーモアが本題としてある。

劇中でマルセルはアルレッティの癌が治ると信じ続ける。そしてイドリッサをロンドンへ連れて行くことも決して諦めない!マルセルは信頼できる仲間たちにイドリッサの事を打ち明け、徐々にロンドン出航計画を進めていく。しかし警視庁のモネが調査を進め少しずつマルセルに近づいてくる。

マルセルのミッションは大きく分けて2つある。

1 ロンドン出向への資金集め!

2 イドリッサの輸送経路を確保する!

マルセルが資金集めの為に出した答えはイベントの開催であった。ル・アーヴルの住民を巻き込む大胆なアイディアは大成功!!資金は十分に集まった!後イドリッサを送るだけだ!

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しかし警察がマルセルの家を突撃!家はもぬけの殻。

マルセルとイドリッサは商店のみんなの協力で身を隠しながら港へたどり着く。

まるでオーシャンズ11のようなチームワーク

いや、もはや!マルセルズLe Havre!!

イドリッサは船に乗り込みロンドンへ出航だーー!ちょっと待った!!!

警視庁モネが船を止め、イドリッサの身柄を確認。もう言い訳は効かない。

誰もが諦めた...

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しかし、ル・アーヴルが一丸となった姿を目の当たりにしたモネはイドリッサを見逃す。こうして船はロンドンへ向かうのであった。

警察すらも巻き込むというマルセル達の予想を超えたル・アーヴルの奇跡は無事に幕を閉じた。

その後、アルレッティの癌もきれいに消え去り、夫婦のゆっくりとした時間はまた始まる。



あなたはこの映画のタイトルになんと付けますか?



不可能を可能に!

確かに表面上は靴みがきの男が巻き起こした奇跡ともとれる。しかし、マルセルがたまたまイドリッサと出会って救われた構造を思い返すと、「ル・アーヴルの密航者」でも成立する。

もっというとイドリッサが密航してまで、遠くに住む母親に会いに行くというストーリーが前提にあり、不可能を可能にしたのはイドリッサである!

そしてイドリッサがたまたま辿り着いたル・アーヴルという街の出来事を切り取った映画なのだ。


今後、難しい事への挑戦などを志す方はこの映画を思い出して欲しい。行動すれば物語は勝手に動き出し、きっと目的地に辿り着く。

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