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ゲーム屋人生へのレクイエム 112

デタラメな事業計画を作らされて辟易していたころのおはなし

「オンラインでダウンロードするゲームには返品も値引きもないって話をしたよね」

「ええ、在庫がないし、小売りを通さなくても販売できるからですよね」

「そう。もうひとつすごくいいことがある。さてそれは何でしょう」

「店に買いに行かなくてもいい!」

「まあ、間違っては無いが。正解は発売した後にソフトを変更できるということだ」

「アップデートですね」

「そう。アップデートと言えば聞こえはいいが、バグの修正も含まれるから微妙だけど。

ディスクやカートリッジで売ったゲームはもし何かソフトに問題があったとしてもどうすることもできない。回収して直すとかできないからな。

けれどオンラインなら修正ソフトをダウンロードしてもらう事で解決できる。それ以外にもマップやアイテムとかを本体とは別に売ることもできる。いわゆる課金だな。これはゲーム業界では革命的なことだったんだ。

今のスマホゲームを見ればわかる。どれもみんな課金だ。そしてソフトアップデートして不具合対策する。それまでのゲームでは考えられないことだったんだ」

「今じゃ普通ですよね」

「ゲームの仕事を長くやっている間にずいぶんと技術は進歩したよ。

それでその最先端のオンラインゲームの事業なんだけど、Wiiウェアを中心に進めることにしてね」

「なんでWiiなんです?」

「それは任天堂の審査が簡単だったからだよ。マイクロソフトとはXBOXでリリースしたスポーツものオンラインゲームで技術的な問題が出たでしょ。あれ以来険悪な関係になっててね。何も対処してくれなかったから胸くそ悪くてしばらく距離を置くことにしたんだ。

ソニーは相変わらず企画審査が厳しくてちょっとやそっとではタイトルをリリースできない。よほどのいい企画があって高い予算を組めるようになったらやってみる事にしたんだ。

それでまずは低予算で制作できるWiiに的を絞ったんだよ。

第一弾は近所にあった開発会社にアクションゲームの制作を依頼した。いかにもアメリカ開発ですって感じのデザインが良くてね。第一弾にふさわしい出来のゲームになったんだ。日本の販売会社にもライセンスして日米同時配信したんだ」

「売れたんですか?」

「タローはいつもそればかり聞くな。ダウンロード数は悪くなかったけど開発費が高くて黒字にはならなかった。いいゲームだったけど売れなければ商売としては失敗だ。

でもね、失敗を恐れていたんじゃ何も始まらない。大事なのはその後どうするかだよ。失敗から学んだとすれば損したとは思わないだろう。開発費を抑えるにはどんな企画や制作をすればいいのかを考えながら仕事をする癖がスタッフに染みついてきたって感じたよ」

続く

フィクションです

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