見出し画像

ゲーム屋人生へのレクイエム 27話

前回までのあらすじ。知人の子供にゲームクリエーターになるにはどうすればいいのか尋ねられた元ゲームクリエーターが自分の過去を語る。勤める会社の先行きに暗雲立ち込める。自分の将来に希望が見えなくなって会社を辞めてアメリカに行くことを決心してからのおはなし。

「よろしくお願いします」


「誰に向かって言ってるんですか?」


「元副社長のお父さんもゲーム業界で働いててさ。ゲーム業界を創った人のひとりでさ。すごい人なのよ。その人は元居た会社は退職されてコンサルティング会社を経営されててさ。そこへ挨拶に行ったんだよ。目茶苦茶緊張したよ。ゲーム業界では伝説の人で誰も頭があがらないくらいすごい人なんだから。初めてお会いしてさ、小柄なおじいちゃんって感じだったけど目つきが鋭くってさ、背筋ピーンってなったよ」


「どうして挨拶に行ったんですか?」


「アメリカで働くには就労ビザを取らなきゃならないでしょ。それで日本とアメリカを行ったり来たりすることになるだろうから、日本に滞在する間はお父さんの会社にお世話になることになってね。それで挨拶に行ったんだよ」


「お父さんは何て言ったんですか?」


「おう。そうか」


「それだけ?」


「それだけ」


「そんな感じでまずは一旦アメリカへ出発したんだ。アメリカ着いてから、以前出向してた会社がついに閉鎖することが決まったって聞いてね。自分がいた場所がなくなるって寂しいものだよ。それで、閉鎖する会社の基板修理サービスを俺が引き継ぐことになってね。修理用の部品やら道具やらをそこから買い取ってさ。ゲーム業界誌に広告出してさ、修理しますよって。機械を買ったお客さんも会社無くなるって聞いて困ってたからさ、どこも修理できないから。それですぐに会社は修理依頼の基板で一杯になったよ」


「へえ。じゃあ元々やってた仕事に戻ったんですね?」


「そういうこと。朝から晩まで修理と電話での対応。そうそう、このころは英語で電話サポートできるまで何とか上達してさ。故障した機械のトラブルシューティングとかしてたよ。修理の仕事はまずまず順調に経費以上に稼いでいたけど、ブローカーの商売はきつそうだったな。売り手と買い手が揃わないと商売成立しないからね。そういつもタイミングよくいかないしね。ブローカーの仕事は社長一人でやり取りしてたけど大変そうだった。そうこうしているうちに俺のアメリカ就労ビザを申請することになってさ、日本に一時帰国することになったよ。東京にあるアメリカ大使館に書類申請して面接しなきゃならんからね」


「行ったり来たり忙しいですね」


「俺の人生行ったり来たり,行き当たりばったりだから」


「ホントそのとおりですねえ」


「ん?」


続く


*この物語はフィクションです。実在する人物、企業、団体とは一切関係ありません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?