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巫女の視点で語る「人類の行方」と「人類の未来」

①57年目の冬に思うこと

昭和から平成、そして令和へと時間が進み、私は今年、まれてから57年目の今を生きている。
父は戦中派の人で、海軍に従事した人だったようだ。「~だったようだ」と言うのも父が生前私にその話しをしたことは一度もなく、当時日常的に「北部屋」に幽閉されながら暮らしていた私はその部屋の一角に聳え立つ大きな箪笥の中身が気になり、両親が家を空ける隙を見計らって中身をそっと確認し始めた。
そこにおそらく父が戦時中にどこかの図書館から譲り受けたか、或いは借りたままになっていたと思われる図書館の印の入った「ナチス関連」や「アウシュビッツ強制収容所」について詳細に綴られた書籍が、幾つも眠っていた。

所々に古い栞が挟まれており、そのページを捲るとひっきりなしに赤い線が縦書きの行間に引かれていた。子供の私には余りにも凄まじく惨い出来事が記録されたその本を、まさか小学生だった当時の私が盗み読みをしていたとは当時の父は気付かなかっただろう。

血は争えない。何を隠そう私は法律家の血を引いており、亡き祖父は日本弁護士協会の会長を務めた人物だ。今でこそ私は音楽を営ってはいるが、根っこは生粋の「正義の魂」を持つ家系の末裔にあたる。

箪笥の中の書籍の中に、ふと数枚の写真が無造作に挟まれているのを見つけた。恐る恐る数枚の写真を手に取ると、若い頃の父が写っていた。飛行機に乗る前なのか、カーキ色の軍服に白いスカーフをなびかせて彼は空を見上げていた‥。
その目はうっすらと濡れていて、これから自身の身に起きるであろう出来事をじっと見据えているようにも見えた。その写真を見た時、それまで実家で私に為されていた幾多の虐待の歴史の壁一枚裏にある、全く別の「父の歴史」を紐解いてしまった後悔に苛まれ、以後父に戦時中の話をけっして尋ねまい‥ と、そう心に決めたのだった。

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