老いた狼は弱者か、強者か

あるところに若いヤギと若いぶたがおりました。
この若いヤギとぶたは幼い頃から、
年長者は敬いなさい、弱いものを助けなさい、
優しい気持ちで人に接しなさい、と母親から言われ育ち、この教えに従順に従って、とても立派な若者に育ちました。

若いヤギは毎日、汗水流してものを運び、
若いぶたは毎日、汗水流して畑を耕しておりました。聡く、力があり、心根の優しい彼らは周りから頼りにされ、とても愛されておりました。

ある日、仕事帰りに二人はごはんを食べて帰ることにしました。その日は、一仕事終えて気分良く、お互いの健勝を讃えあい、明日もまた頑張ろうなと励まし合い、楽しい時間を過ごしました。

その帰り道、二人はいつもの道で、布を被った、年老いたものと出会いました。
その年老いたものは、すごくお腹すかせ、飢えて動けなくなっていました。
かわいそうに思ったヤギは、ぶたに"家まで送ってやろう"と持ちかけました。
ぶたは、二つ返事で"当たり前だ、年長者には優しくしなきゃ"と言いました。
二人は、年老いたものに声をかけ、彼が示す方へ年老いたものを担いで連れていきました。

無事に年老いたものは帰路につくことができ、
"ありがとう、お若いものよ"といいました。
"いえいえ、お安い御用だよ"とヤギは伝え去ろうとしたその時、
その年老いたものは、若いヤギの腕を強く掴みいいました。

"ありがとう、お若いものよ、我らのこやしになっておくれよ"

彼らが送り届けた先は、年老いた狼たちの巣でありました。奥からぞろぞろと数え切れないほどの年老いた狼が出てきました。
彼らは力こそあったものの、心根の優しさが邪魔をし、数の暴力に逆らい逃げることができません。

その頃、若いヤギとぶたの家では、
彼らの母親と彼らの家族が、帰りを待っておりました。ただ、その日以降彼らが帰ってくることはなく、その後、年老いた狼の巣の近くで、骨になった若いヤギとぶたの骨が見つかりましたとさ。

あとがき

彼らは優しく育ちました。ですが自らの身を守ることは叶いませんでした。
若いヤギとぶたは強く優しい強者でしょうか、
弱者でしょうか?
年老いた狼はひ弱でひもじい弱者でしょうか、強者でしょうか?
あなたの目にはどううつりましたか?

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