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「著者が天才すぎる」「情熱に胸を打たれた」ダイヤモンド社“書籍”副編集長2人のオススメ本8選

こんにちは! この春に出版社のダイヤモンド社に入社したての新入社員の菱沼です。同期4人で担当しているこの連載も、残すところあと2回となってしまいました。読書の秋ということで、第28回では前回に引き続きダイヤモンド社の編集者たちが普段どんな本を読んでいるのかを掘り下げてみたいと思います! 今回は、田畑博文(たばた・ひろふみ)さん(第3編集部副編集長)、中村明博(なかむら・あきひろ)さん(第4編集部副編集長)にいくつかのテーマに沿っておすすめの本を聞きました! 読書を楽しむ1冊を探すきっかけになったら嬉しいです。

サイエンス書といったらこの人! 第3編集部・副編集長が選ぶこの1冊

『若い読者に贈る美しい生物学講義』『ウォード博士の驚異の「動物学入門」動物のひみつ』『すばらしい人体』『読み終えた瞬間、空が美しく見える気象のはなし』など、サイエンス書のヒット作を多く生み出している田畑博文(たばた・ひろふみ)さんにおすすめ本を聞いてみました!

他には、文学、SF、ファンタジーなどの文庫、映画、音楽、落語の単行本、漫画の棚などがあります。

Q. 本棚の中から、イチオシの本を教えてください

『進化しすぎた脳』(池谷裕二・著)
 わかりやすさと奥深さをどのように両立するか。講義という形式、有山達也さんのデザイン、長崎訓子さんのイラスト。「多くの読者に開かれた科学書」のお手本のような本だと思っています。現在は講談社ブルーバックス版が流通していますが、元々は朝日出版社から刊行されたもの。同社の第二編集部から刊行されたさまざまな教養書には大きな影響を受けましたし、いまも新刊を楽しみにしています。

Q. 最近買った本と、なぜその本を買ったか教えてください

『WHAT IS KARATE?』(Masutatsu Oyama・著)
 『WHAT IS LIFE? 生命とは何か』(ポール・ナース著)という本を担当してから『WHAT IS ―』という書名に意識が向くようになりました。ふとした時間に、Amazonで「WHAT IS ―」検索をしていますが、この本は『What is Tanuki?』(佐伯緑著)という本の書名の元ネタとして紹介されていたので購入。
 極真空手の創始者・大山倍達の著書で、1966年にアメリカで出版されています。空手とは何か? 中身が濃すぎる本で、空手の歴史、その道徳的な意味、打撃や防御の基本、さまざまな型のバリエーションなどが、ふんだんな写真やイラストで紹介されており、デザインのパターンも豊富で眺めていて飽きない本で、英語圏の人たちに空手の真髄を伝えたいという情熱に胸を打たれます(ちなみに、私は空手はまったく詳しくありません)。巻末では著者と牛が取っ組み合いをしています。


『WHAT IS KARATE?』のカバー。
砕破という型の紹介のようですが、分解写真が細かくてわかりやすくレイアウトも楽しい。 (『WHAT IS KARATE?』p124より)
護身術の紹介は道着ではなく洋服で実演することで、しっかりとリアリティを出している。 (『WHAT IS KARATE?』p154より)

Q. 編集に携わりたいと思った本と、その理由を教えてください

『ストリートワイズ』(坪内祐三・著)
 本を読むこと、人と出会うこと、街を歩くこと、横断的に知と向き合うこと。学生の頃に出会って衝撃を受けた本です。大学の近くにあった、神保町のすずらん通りや東京堂書店で見かける坪内さんの姿はいつもかっこよかった。
 著者がさまざまな作品で描いたある種の出版史のなかには編集者の姿が活写されていて、「出版=作家たちが作り上げていくもの」という、私の単純な物の見方は覆されました。そうしていくうちに、自分もいつかその世界の末席に加わりたいと思うようになった気がします。
 余談ですが、ダイヤモンド社に転職したあと、この会社は、坪内さんのご尊父が社長を務めていた会社であることを思い出しました(色々大変な時代だったようですが…)。

Q. ご自身が編集した本の中から、最もおすすめしたい本と、その理由を教えてください

『若い読者に贈る美しい生物学講義』(更科功・著)
 担当書はどれもおすすめですが……。6万部を突破したロングセラーになっている生物学の入門書です。著者は古生物学者の更科功さん。
 ローリング・ストーンズを愛し、優しさの中に反骨を隠し持った著者の文章に惹かれ、サイエンス書として「生命とは何か」をわかりやすく理解すると同時に、「人生とは・生きるとは」について考えるための何かが埋め込まれた生物学の本を作りたいと思い、著者に執筆を依頼しました。

「きっと、どんなことにも美しさはある。そして美しさを見つけられれば、そのことに関心をもつようになり、その人が見る世界は前より美しくなるはずだ。きっと生物学だって、(もちろん他の分野だって)美しい学問だ。そして、この本は生物学の本だ。もしも、この本を読んでいるあいだだけでも(できれば読んだあとも)、生物学を美しいと思い、生物学に関心をもち、そしてあなたの人生がほんの少しでも豊かになれば、それに優る喜びはない。」(本書の「おわりに」より)


どんなジャンルでもヒット作連発! 第4編集部・副編集長が選ぶこの1冊

 『会話もメールも英語は3語で伝わります』『経済は世界史から学べ』『経済は地理から学べ』『ぶっちゃけ相続【増補改訂版】』『あした死ぬ幸福の王子』など、幅広いジャンルで数多くのヒット作を生み出してきた中村明博(なかむら・あきひろ)さんにおすすめ本を聞いてみました!

自宅の本棚です。妻の本も入っています。就寝前、10分ほど読書するのが日課です。

Q. 本棚の中から、イチオシの本を教えてください

『英語に強くなる本』(岩田一男・著)
 1961年に刊行され、たった3か月で100万部を突破したベストセラーです。単なるハウツー本ではなく、言語学的な視点から英語の面白さも教えてくれます。ユーモアを交えた軽快な語り口で、まるでエッセイを読んでいるかのように、ぐいぐい引き込まれ、一気読み間違いなし。50年以上前に書かれた本ですが、読み返す度に新鮮な驚きを与えてくれます。実用書であり、教養書であり、エッセイでもある。知的で素敵な1冊です。

Q. 最近買った本と、なぜその本を買ったか教えてください

『戦争広告代理店』(高木徹・著)
 2002年、講談社ノンフィクション賞と新潮ドキュメント賞をダブル受賞した本です。知人の経営者に勧められて読みました。1992年、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争で窮地に陥ったボスニア政府は、国際社会の支援を得るために、アメリカのPR企業に助けを求めます。「情報」という武器を使い、国際世論を徐々に味方につけていく様子が、生々しく、そしてダイナミックに描かれています。スパイ映画さながらの駆け引きがめちゃくちゃ面白いです。PR企業のリーダーは、自身の仕事を次のように語ります。「私たちの仕事は、メッセージのマーケティングです」。書籍編集にも通じる話が多く、とても勉強になりました。

Q. 編集に携わりたいと思った本と、その理由を教えてください

『そして誰もいなくなった』(アガサ・クリスティ・著)
 言わずと知れた世界的なミステリー小説です。「孤島に集められた10人の男女が、童謡になぞらえて殺されていく」というお話です。皆が疑心暗鬼になり、追い詰められていく描写が秀逸で、ページをめくる手が止まりません。1人、また1人と殺されていき、「そして誰もいなくなった」ことで、物語も終わりを迎えます。高校生のときに読み、ものすごい衝撃を受けました。「この著者は天才すぎる。どんな人なんだろう」と思い、本作り(編集)に興味を持つようになりました。

Q. ご自身が編集した本の中から、最もおすすめしたい本と、その理由を教えてください

『ぶっちゃけ相続【増補改訂版】』(橘慶太・著)
 「タンス預金は税務署にバレる」「親の介護をがんばっても、もらえる遺産はほぼ同じ」など、“お金の損得”に焦点を当てた相続本です。実際のトラブル事例を多数紹介し、合法的な節税ノウハウをやさしく解説。お金の話だけではなく、相続争いを防ぐための「家族間での配慮や気遣い」も細かく書かれています。「おわりに」のエピソードは1人でも多くの人に読んでほしいです。相続というと、「縁起が悪い」「考えたくない」と感じる人が多いと思いますが、本書を読めば、その気持ちも必ず変わります。

 今回はダイヤモンド社の編集者おすすめの本を紹介しました! 読んでみたくなった本はありましたか?

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