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Helpless 浅野忠信 光石研 青山真治 (監督 脚本) レビュー

Reviewed in Japan on July 29, 2004 Amazon(一部改変)


私にとってこの作品が、「EUREKA」よりもはるかに素晴らしいものとして今なお心に残っているのは一体なぜなのか。その理由を、すぐ思い浮かぶありきたりな言葉を離れてどう語ればいいのか、今だにその言葉を私は探しているのかもしれない。

あえて一つだけ指摘すれば、半透明な膜に包み込まれたかのような風景、その色彩の忘れ難さがある。特に導入部の。浅野が演じる若者は、その膜に包み込まれたかのような、何の変哲もない風景からどうあがいても逃れられないことに無意識に気づいた。そもそもの初めから不毛な物語の中で、若者が殺す前にいわばその風景に絞め殺されてしまう若者の父親の姿は、ほどなくやってくる自らの破滅あるいは崩壊を鮮明に映し出す。それは、絶望などという生易しさを超えたところで始まる、いや始まることすら出来ない旅であり、他者と自己をともに破壊した(殺した)ところで終わることのない不毛の旅だ。

ここには、いかなる形でも、「出口」(他者と交わされる言葉)はない。ここに私は、「EUREKA」にはない「純粋さ」を夢見てしまうのだ。たとえ、ここから偶然の事故のように始まってしまった「物語」のみならず、上記の色彩(を生み出した物質的・テクノロジー的基盤を含めて)その他ほとんどすべてが、「EUREKA」へといたる作品へと確かに継承されていようとも。


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