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すでに稼働している、次なる証券市場


証券市場というプラットフォーム

 これから分散型台帳技術(DLT)やブロックチェーンが各種業界に波及していき、プラットフォームビジネスのしくみやサービスも変化していきます。

「次なる新たなプラットフォーム」といえど、既存のプラットフォーマーたちがやっていることや、恩恵を受けていることと同様の作用が働く面もあり、そのようなプラットフォーマーに先行投資したいところです。

今回は、「証券市場」というプラットフォームについて紹介します。
既存の証券市場と、
これから普及していく証券市場の姿
を紹介します。

簡単な図であらわすと以下のイメージです。



既存の証券市場


国法証券取引所

 よく聞く国法証券取引所として、以下のNYSE、Nasdaq、JPXなどが挙げられます。

・ニューヨーク証券市場(NYSE)

https://www.nyse.com/


・Nasdaq

https://www.nasdaq.com/

・ユーロネクスト

https://www.euronext.com/


・JPX 日本取引所

https://www.jpx.co.jp/

 各国・各地域ごとに株式や債権を売買するプラットフォーマーが存在します。



私設取引システム(ATS)

 国法証券取引所以外にも、「私設取引システム」(ATS)として、Cboeなどが有名です。

https://www.cboe.com/

 私設取引システム(ATS)では、上掲の国法証券取引所で扱えない資産や銘柄を扱います。



証券取引所というプラットフォームへの株式投資 (例;ICE)

 日々莫大なお金がやりとりされる証券市場であり、わかりやすいプラットフォームビジネスです。

 個人投資家がその証券市場ビジネスの収益から分け前を得るとすれば、証券市場を運営する企業(ICEなど)の株式を保有する方法となるでしょう。

 例えば、「ICE」は「インターコンチネンタル取引所」という、複数の取引所を運営する企業です。NYSEに上場しており、ティッカーコード「ICE」に投資することが可能です。


証券取引所の収益の柱 (例;Nasdaq)

 つぎにNasdaqを例に1つポイントを提示します。

 Nasdaqの事業セグメント別の収益推移のうち、投資インテリジェンスセグメントは堅調に収益を増加させています。下のグラフ2つを参照ください。

JPXレポートより


JPXレポートより


 上図からもわかるように、Nasdaqは、「証券を売買する場の提供」による手数料収入・上場時収入だけが収益の柱なのではなく、市場で日々やりとりされる膨大な「売買データ」をもとに
・マーケットデータ
・指数の提供
・アナリティクス

という「データ分析」「データ開示」の投資インテリジェンスサービスでも収益を上げていっているのです。


既存の証券取引所の課題

 既存の証券取引所、例えばNYSEとNasdaqでは、平日の朝9:30〜16:00までしか取引することができません。
 取引所で働く人の休日や休憩時間、その他バックオフィス業務、手続きの時間が必要なためです。

https://www.smbcnikko.co.jp/products/stock/foreign/usa/knowledge/003.html

 日本から米国株投資をしていれば、時差のため、日本の夜中に取引操作をする必要があります。


 よくある株式銘柄の値動きとして、企業が良いニュースまたは悪いニュースを週末の金曜日夜中や週末土日に発表し、その影響を受けて週明けの月曜日に激しい値動きをする、というのがよくあります。

 このような週末の非稼働日があることは、巨額資金を動かす機関投資家も、個人投資家にとっても好ましいことではありません。
 良いニュース、悪いニュースが公表されれば、タイムリーに市場で取引をしたいとだれもが思っています。




これからの証券市場


証券業界にも分散型台帳技術、Web3が応用されていく

 株式市場にも分散型台帳技術、ブロックチェーン、デジタルID、セルフカストディなどの技術やサービスが展開されていく流れがあります。

 ブロックチェーンやスマートコントラクトの活用により、さきほど紹介していた既存証券市場の課題である「取引可能日・時間」についても、24時間/365日の取引が可能なプラットフォームがすでに登場しています。(→ INX )

https://www.inx.co/


 このことは世界中の機関投資家の多くはすでに知っているでしょう。しかし多くの個人投資家はまだまだ認知していないことと思います。


 これまでの株式や債権の売買、上場に関連する中間コストや無駄時間が排除され、運営者にとっても、そして上場する企業、証券を売買する投資家にとってもメリットが多いです。 (これについても別途記事をアップ予定)

 このような既存の証券に、分散型台帳技術(ブロックチェーン等)を応用した証券を「デジタル証券」(Security Token)といいます。



証券をセルフカストディ(自己保管)する

 デジタル証券(セキュリティトークン)は、証券会社へ預けるのではなく、投資家が自ら「セルフカストディ」するようになっています。

 これまで暗号資産に関与していない方はイメージがつきにくいかと思いますが、MetamaskやLedgerのような「デジタルウォレット」を活用して、デジタル証券を保有します。

https://metamask.io/


https://www.ledger.com/



デジタル証券市場プラットフォーマーが発行する自社トークン

 デジタル証券市場を運営する INXやその他のLCX、MERJといった企業は、自社のセキュリティトークンを発行しています。

 このセキュリティトークンを保有していれば、デジタル証券市場での取引手数料収入や市場データ販売による収益の分け前を、トークンホルダー(トークン投資している人々)も受取ることができます。

 さきほど記事の前半部で書いていた「ICEの株を保有する」ようなイメージをしていただければと思います。


(例えば、INXトークンは世界中で 9,902人のホルダーが現在います)

https://etherscan.io/token/0xbbc7f7a6aadac103769c66cbc69ab720f7f9eae3


 これまで証券市場プラットフォーマーの株式を保有するしか投資手段がありませんでしたが、これからは証券市場運営社のネイティブトークン(この場合ネイティブトークン自体がデジタル証券(セキュリティトークン)として発行されている) を保有することで、そのプラットフォームビジネスの分け前を得ることができます。


デジタル証券市場のデータ販売という収益

 デジタル証券市場においても、上段で述べたNasdaqのように、
デジタル証券(さまざまなトークン化された資産)を売買することで得られる膨大な「売買データ」を分析・活用し、投資インテリジェンスサービスを売買することで、さらなる収益拡大が期待できるでしょう。

 これから進展するトークン化経済では、「RWA」(Real World Asset)とよばれる、現実世界の資産をトークン化する巨大な潮流が見込まれています。

 これまで売買物(投資銘柄)として流動化されていなかったさまざまな資産がトークン化され、そのトークンがデジタル証券市場で世界中で売買されていけば、既存の証券市場よりも巨大な市場となることが見込まれています。



AIや高速処理コンピュータのさらなる活用

 今後もますますAIや高速処理コンピュータを使った、HFT(超高速取引)が市場を占めていくことも予想されています

https://www.fsa.go.jp/frtc/report/honbun/2022/20221025_SR_Article_HFT.pdf

 

そのAIが学習するための大きな要素である「市場データ」はINXやLCXなどのデジタル証券市場運営企業のみが持つデータとなるでしょう


 まさにこれからは「石油の世紀」ではなく「データの世紀」と言われるように、証券市場においても膨大なデータをもつ企業が有利となっていくでしょう。

 もちろん既存の証券取引所も、旧態依然(昔のままで少しも進歩や発展がないさま)ではなく、分散型台帳技術・Web3といった仕組みを取り入れていっているでしょう。(詳細な開発状況は見えませんが)




以上

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