受講料は何のために払うのか? ライター講座の講師が抱える葛藤
「受講料を払っているんだから、(受講生が課題として書いた)記事に対する講師のフィードバックはあまり厳しくしないでほしい」
こうした声を最近まれに、ライティング系プログラムの受講生からいただくようになりました。
講師として、受け止めないといけないと反省する一方で、この問題は突き詰めると「受講料の対価は何か?」という問いにぶち当たります。
ganasはこれまで、ライティング系や言語系など10以上のプログラムを開講してきました。受講生の総数は累計でおよそ2200人。これだけの人数が集まれば何を対価に求めるのか、価値観はそれぞれ違ってもまったく不思議ではありません。
ganasのライティング系プログラムは大別すると「スキルアップ重視型」と「エンジョイ型」の2種類があります。
スキルアップ重視型のプログラムの代表格は、ganasの記者になる「77日記者研修」(期間は12週間)、伝わる書き方と途上国を同時に学べる「グローバルライター講座」(同8週間)の2つです。
いずれもウリは、短期間(なるべく最短距離)でライティングスキルを上げること。つまり受講料をいただく対価は「最速でのスキルアップ」です。
そのために講師として、利益を度外視しても「できることはなんでもやろう」というのが基本的なスタンス。伝わる書き方を体系化し、30個ちょっとのライティングティップス(伝わる書き方のコツ)をご紹介。たった30のことを意識して書けば、だれもが伝わる文章を書けるようになるわけです。
とは言っても練習は不可欠。ですので毎週、課題として短い記事を書いていただきます。そのフィードバックとして、ライティングティップスがうまく使えていれば「わかりやすいですね!」と心からほめますし、できていなければ問題点をストレートに、また具体的に指摘します(これがグサッと刺さってしまうのかもしれません)。講師がリライトして修正案をお見せすることも。
フィードバックする際に講師にはひとつだけ「こだわり」があります。それは、むやみやたらにほめないこと。理由は、「なんとなくわかった」という見せかけの満足度を得てもらうのではなく、短期間で本当にスキルアップしてほしいからです。実際、毎回出席し、毎回課題を出す受講生はほぼ例外なく書く力をつけています。
適当にほめて、受講生を良い気分にするのは簡単。フィードバックにかける時間(受講生が多いタームはフィードバックだけで毎週2日費やします)も劇的に減るので、講師の業務はかなり楽ちんになります。
でもそれでいいのだろうか、というのが、講師が抱える葛藤なのです。受講料をいただいているのに、スキルアップを後押しすることを放棄してしまっていいのか? 受講生のスキルアップを講師が諦めたら無責任ではないのか? 教える資格はないのでは、とまで考えてしまいます。
一方で、エンジョイ型のライティング系プログラムになると、話はがらりと変わります。
エンジョイ型のプログラムの代表格は、「JICA海外協力隊のためのエッセーの書き方講座(初級編)」であり、海外発のエッセーを書こう!グローバルライター講座「初級コース」です。
ウリは、エッセーを書く際のアイデア(ネタや切り口)を見つける方法のコツを習得してもらうこと。受講料の対価は「アイデアの引き出しが増えること」です。アイデアを考えるのは楽しいので、だれもが気軽にエンジョイできますよね。まずは「書く(考える)楽しさを味わってほしい」というメッセージも繰り返し伝えています。厳しいフィードバックはしません。
と、ここまで説明しましたが、考えてみればこれはすべて講師側・運営側の論理ですよね。告知文に書いてあるといっても、読まない人も少なくないのが現実。
ではどうするか? わかりません‥‥。
ただここ数年強く感じるのは、「スキルアップを求める受講生」と「実はそうでもない(であろう)受講生」がかなり混在していること。
もっといえば、ライティング系プログラムに受講生が求めるのは何か。ひょっとすると今はスキルアップよりも、「コミュニティ」なのではないかということです。
おそらく5年ぐらい前はビジネス書のブームとも相まって、自分をアップデート(スキルアップ)するのがトレンドでした。ganasのライティング系プログラムの受講生でも社会人が激増したのはこのころです。
またコロナ禍が始まる前は、ganasのプログラムは基本オフライン(リアルの場)でしたので、おのずとコミュニティの要素も入っていました。顔をあわせながら誰もが気軽に話せたし、懇親会も頻繁に開いていました。
ですがオンラインだと、コミュニティの要素はどうしても抜け落ちてしまいます。オンライン飲み会(もはや死語?)をやっても話しにくいし、盛り上がりもいまひとつ。必然的にコミュニティ(的な楽しさ)を求める気持ちが強くなっていき、それが冒頭の発言につながったのかもしれません。
こう考えると腑に落ちます。葛藤が融解していきます。
終わりそうでなかなか終わらないコロナ禍。第7波が押し寄せたことで、プログラムをオフラインに戻す計画はまた遠のきました。
ですが待っていても時間は過ぎ去るだけ。「できることはなんでもやろう」の精神がこの夏を無駄にしない唯一の方法かもしれません。
というわけで、グローバルライター講座の〆切はあす7月22日(金)です。夏休みを使って最短でのスキルアップを目指しませんか? 第7波の合間を縫ってリアルの懇親会も開きましょう!
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【〆切7/22】最後のコロナの夏「伝わる書き方」と「途上国」を学ぼう! グローバルライター講座(21期)の受講者募集
https://www.ganas.or.jp/news/20220617gwc/
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それ以外の募集中のプログラムはこちら。
【早割7/27】ganas編集長と学ぶ「途上国ニュースの楽しい読み方ゼミ」、8月の水曜夜に開講します!
https://www.ganas.or.jp/news/20220612newspapers/
【早割8/24】JICA海外協力隊のためのエッセーの書き方講座(初級編)の2期生を募集! 候補生・現役隊員・OVまで
https://www.ganas.or.jp/news/20220710jocv/
【7/31まで追加募集】レッスン料がベネズエラ人を救う!『命のスペイン語レッスン』(5月8日~10月31日)
https://www.ganas.or.jp/news/20220404espanol/