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英語学習におすすめの洋書:Flowers for Algernon(アルジャーノンに花束を)

私は、英語力の鍛錬のため、原作が英語の小説はできるだけ原書、つまり洋書で読むようにしています。ビジネス系ではありますが一応翻訳の仕事もしていて、小説翻訳家の翻訳は芸術の域であると思っているのですが、やはり、その作家が執筆したオリジナルの一語一句を読むほうがいいように思ってしまうわけです。

しかし中には、原書を読んだにもかかわらず、これは翻訳されたときどんな日本語になるのだろう?と興味がわいて止まらなくなり、翻訳版で再読してしまうものもあります。今日は、そんな一冊をご紹介します。

これから洋書に挑戦したいと思っているいわゆる洋書デビュタント(新人さん)にもお勧めできる一冊です。

作品の原題は、「Flowers for Algernon」、直訳すると、アルジャーノンへの花、そう、翻訳タイトルは「アルジャーノンに花束を」です。

世界的ベストセラーのSF名著であり、日本でもユースケ・サンタマリアさんや山下智久さんの主演で何度かドラマ化され、数えきれないほど舞台化もされていますので、ご存知の方も多いと思います。

あらすじ

これは主人公の日記形式で進行するストーリーです。実はこの主人公チャーリーは知的障害者。かしこくなりたいなと切望しながら、一生懸命パン屋さんで働いています。

ある日、彼の元に夢のような話が舞い込みます。とある研究所で「頭がよくなる研究」が行われていて、その実験に参加しないかと打診されたのです。脳の手術です。動物実験ではアルジャーノンというハツカネズミが、その手術を受けて天才ネズミになったということを知り、頭が良くなりたいチャーリーは手術を受ける決心をします。手術後、徐々にチャーリーは天才へと変貌してゆくのですが…

人間の価値とは何かを考えさせられる非常に切なく深い物語です。
もっとあらすじを知りたい人は、Wikipediaをご参照ください。
(涙腺の緩めの人は、あらすじ読むだけでも泣けてきます)


英語で読む醍醐味


この作品を特別なものにしているのは、全て一人称「I」の視点で書かれていること。そして私が、これを日本語訳で読んでみたいと思ったのは、一人称の冒頭の文体の特異さからです。知的障害者の主人公が書く日誌なので、文章がとてもたどたどしく不完全。その部分がどのように翻訳され、世界観がどう表現されるのかを読んでみたかったと同時に、その翻訳家の思考回路と出力の技を確認したかったからです。翻訳者は小尾 芙佐氏で、翻訳文もうーんとうならせる素晴らしいものでした。

さて、私が手に入れた洋書の方ですが、比較的薄く、216ページでした。ちなみにBookOffの店頭ワゴンで奇跡的に見つけた100円のセール本です。古い本なのに何度も読むもんだから、もうページがばらばらになりそうです(笑)

この一冊を洋書デビュタントにお勧めする理由は読みやすさです。

主人公の知能は6歳程度という設定なので、先ほども述べたように、まず冒頭がつたない文章で書かれています。スペルミスなどで「ん?」となることもあり、多少混乱するとしても、それでもやはり語彙的に平易で非常に読みやすいのです。

下は冒頭部分のショットです。Progress Report 1 March 3とすべきところが、堂々のスペルミスの状態で書かれているのがわかると思います。

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徐々に文章のレベルは上がり、絶妙なバランスでスペルミスも減っていくのですが、物語が稀有で秀逸なだけに、この冒頭の読みやすい部分から、読者は一気に物語に引き込まれます。そして洋書読書にありがちな「あーもうよくわかんないからやーめた!」という風にはなりにくいのです。

つまり、入門レベルの冒頭で引き込み、知らず知らずのうちに英語の壁をも打ち破る魅力で物語にのめり込ませ、自然と読了させてしまうというマジカルな一冊なのです。

文庫本も出ていますので、この本のように一気に読めてしまうものは、日本語版の同時進行や後追いなどで読むと、英語の学習の助けにもなります。

何よりも、一度ならず二度三度と読みたくなる作品、読んでよかったと思える良著なので、老若男女誰にでもおすすめします。

おまけ

最後に、作者のダニエル・キイス氏の言葉をご紹介します。

I love the fact that 'Flowers for Algernon' is doing its part to get people reading.
ーDaniel Keyes

「アルジャーノンに花束を」が人々を読書に駆り立てるのに役立っている事実が私はとてもうれしい。

そんな本を紹介できて、私もうれしいのです。

作品データ

著者:ダニエル・キイス Daniel Keyes
1966年長編発表 311ページ
英語:アメリカ英語 
難易度★★★☆☆
R言語★☆☆☆☆

オーディブル(朗読本)もあります。お試し期間は無料なので、実質無料で聴けます!


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