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『グラン・トリノ』の演技の話

先日たまたまテレビをつけたらBSで映画『グラン・トリノ』をやっていて、ついついそのままラストまで見ちゃって落涙・・・やっぱいい映画や。

『グラン・トリノ』は2008年の公開当時、クリント・イーストウッドの俳優引退作!として話題になった映画です。もちろん皆さんご存じのようにその10年後、彼は『運び屋』でしれっと俳優復帰するのですが(笑)。

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映画が始まって最初の葬式のシーン、そこで我々が見たものは「ぐるるーっ」と犬のように唸るクリント・イーストウッドの姿でした。

衝撃・・・そう、彼が演じるコワルスキーは昔近所によくいた「凶暴な犬」みたいな爺さんなんですが、その役をまさに「近所の凶暴な犬」の演技で演じているのですよ。イーストウッドの約50年間にわたる栄光の俳優生活の締めくくりとして・・・なんという境地w。

その老犬を手なずけようと財産目当てで近づいてくる親戚や、老犬だからと舐めてかかる近所のチンピラ達に、彼はキッツいジョークでもってガブリガブリと噛み付いてゆく・・・うわあ面白い。

老いてゆくアメリカを風刺漫画的なユーモアでもって描いているんですよねー。スヌーピーとかのあれですね。 このユーモアがボディブローみたいに効いてくると、この渋~く重い映画が、段々とキュートに感じられてくるんです。

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そしてイーストウッドのタバコを喫う演技はやはり天下一品!
なんてセクシーな老人なんだ!と。近所のモン族のおばちゃんたちが先を争って差し入れを持ってくるわけだと(笑)。

「凶暴な犬」であるコワルスキーもタバコを喫っているときは、タバコを心の底から楽しんでいて、その深い深い快感が画面に溢れているんですよねー・・・イーストウッドの喫煙シーンはいつも喜びに満ちているのです。

スポーツ選手とか楽器演奏者って時にセクシーに見えるじゃないですか。将棋の名人とかも。イーストウッドのセクシーさってアレですよね。「喜びとともにある」ってこと。けっして「セックス的な演技」をしているわけじゃない。

その老いた肉体でタバコを喫う・ポーチで風を感じながらビールを飲む・・・彼はその肉体で感じる喜びの深さを惜しみなく演じる・・・この『グラン・トリノ』のような怒りに満ちた映画だからこそイーストウッドは喜びを演じるのです。

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…とまあ映画『グラン・トリノ』の演技について思いつくままに書いてみましたが、この映画のイーストウッドの演技は「肝心の心情の変化をセリフで説明してしまっている」という大きな不具合があったんですが、それを10年後の『運び屋』で全面解決するのは『運び屋』のブログで書きました。そちらも読んでいただけると嬉しいでーす。
<「結果」を演じるか?「過程」を演じるか? イーストウッド主演作『運び屋』>

そして演技とは関係ない話ですが、映画『グラン・トリノ』のラスト。
遺言状の読み上げがあって、グラン・トリノでドライブするタオの描写があって、観客の感動が頂点に達したときに鳴り始める『グラン・トリノ』主題歌・・・え?イーストウッド本人が歌ってる!?

これはもう毎回泣き笑いですよね。「お前が歌うんかーい!(笑)」って。 いや、このユーモアは意図されたものかどうかは分かりませんがwww。 ボクは毎回、泣きながらツッコんでますw。

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しかしコロナどうですか?
もう何か月も見たい新作映画のオアズケを食らってる日々が続いてますよねー。
ボクにとってはつまり「世界の映画の演技の最前線」を見ることができない日々がホントつまらないのですが、でもそれが理由でこの演技ブログがなかなか書けないのも口惜しいので、こんな軽い感じで過去のいろんな映画の素晴らしい演技を短めに紹介してゆくシリーズを始めようかと思ってます。

また書けたら・・・また来週、お会いしましょう(笑)。

小林でび <でびノート☆彡>

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