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「オフビート芝居」と「たっぷり芝居」

金曜の朝に「あさイチ」を横目に見ながら出かける準備をしていたら、

ゲストの新井浩文さんがいきなりコアな演技論をしゃべり始めてビックリ仰天w。。。テレビの前から動けなくなりましたーw。

新井さんの飲み友達でもある俳優・山本浩司さんについて、彼を「唯一の天才」と激賞しながら唐突に、演技には「オフビート芝居」と「たっぷり芝居」があると・・・ヤバいですよね。あさイチですよ?(笑)

その「オフビート芝居」とは新井さんや浅野忠信や松田龍平みたいな低音で喋る、抑えた、生っぽい芝居だと。

で「たっぷり芝居」っていうのはその逆でいわゆる、やりすぎな分かりやすい芝居だと。 小芝居だと。 ひゃー☆言うなあ。

で、山本浩司さんは基本「オフビート芝居」の天才なんだけど「たっぷり芝居」も好きでやるので、その時は新井さんは「やめてください、嫌いです」って言うんです、と(笑)。嫌いですって、ステキですよね。

「オフビート芝居」はわかるけど「たっぷり芝居」って・・・珍しい言葉ですよね。おそらく「芝居気たっぷりに」あたりが語源なんでしょう。

別の場所では新井さんは「たっぷり芝居」の例として香川照之さんを挙げてたらしいです。わかりやすーい! たーっぷり演じてるものなあ。

表現力豊かで、紋切りではないのだけれど、なんだか説明的で大げさな芝居・・・「たっぷり芝居」かあ、なるほど便利な言葉ですねw。

俳優同志で飲んでこういう話をしてるんですねー。いいなあ。

たしかに山本浩司さんといえば『ばかのハコ船』『どんてん生活』など「キング・オブ・日本のオフビート俳優」でしたよねー。無表情でありながらエモーショナルな演技が最高で、それでいて初期の作品では竹中直人のコントの演技の影響で超コミカルな演技もするキュートな俳優さんでした。

「無表情だけどエモーショナル、でキュート」

って新井浩文、浅野忠信、松田龍平なんかにも通じてますよね。ビル・マーレイとかもそうだ。アダム・ドライバーやライアン・ゴズリングも。オフビート芝居の重要な3要素なのかもしれませんね。

てゆーかそもそも日本では「オフビート芝居」とか「リアルな芝居」ってけっこう誤解されてると思うんですよね。<地味で分かりにくい!>みたいな。<もっとハッキリ演じないと伝わらないよ!>みたいな。

いやいや、いやいやいやいや。

ビル・マーレイの芝居のどこが分かりにくいんですか?と。あんなに心情が観客に伝わる演技、ないじゃないですか。「よきオフビート俳優」の芝居はディテールが豊かでちゃんと伝わるんです。

ただ「オフビート芝居」って失敗しやすいんですよねー。失敗した「失敗オフビート芝居」は全く分かりにくいし壊滅的に観客に伝わらない。・・・失敗には大きく分けて以下の2種類があります。

失敗例その① 「無表現芝居」

「たっぷり芝居」の対極の演技を表現する「芝居をしない」って言葉があるじゃないですか。あれって「演技をしない」という意味ではなく「普段通りに反応する」という意味なんですよね。

それを勘違いして演技しないで大道具みたいにボーッとしてて、ボソボソ喋りづらそうに喋りたくなさそうに喋る雰囲気芝居・・・これ、俳優本人はリアルなつもりですが、現実世界の人間ってもっと感情豊かな生き物ですからね。不自然です。

そして表現をしてないわけですから、当然心情はまったく観客には伝わりません。

失敗例その② 「内向的芝居」

ナルシスティックに自分の世界に閉じこもって演じている芝居です。すごく近い距離を見ながらボソボソ喋りづらそうに喋りたくなさそうに台詞を喋る雰囲気芝居・・・これ、俳優本人は芝居してるつもりですが、内向してるので外からは心情が全く見えない。映像にまったく映らないんですよねー。当然心情はまったく観客には伝わりません。

オフビートって人物と人物の間に生まれる空気感が重要な芝居じゃないですか。無表現や内向では人物間に空気は生まれない、つまりオフビートが発生しないんです。注意したいですね。

「よきオフビート芝居」は無表現でもないし、内向もしてないんですよ。

「よきオフビート俳優」の芝居は心の中が怒りや悲しみや喜びで荒れ狂ってます。

それを「たっぷり芝居」みたいに大げさに表現しないだけで、ディテールでしっかり反応しています・・・反応って何に反応しているのか?それは外界です。

目の前にいる相手であり、相手の発した言葉であり、目の前で起きている出来事そのものにたいして心が小刻みに揺れ動いている。

俳優自身が「よき受信機」であることが「よきオフビート芝居」をする上でのポイントですね。

…となると「よきたっぷり芝居」をする俳優は「よき発信機」を持っている感じですかね。豊かな発信機を。

とまあ今回の『でびノート☆彡』は「あさイチ」を見ててびっくりした感想でしたw。

新井浩文さんの映画、観たくなったなあ。

小林でび<でびノート☆彡>

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