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CTOが語るワンキャリア技術開発部の歩み vol.2

はじめに

こんにちは、ワンキャリアでCTOをしている田中です。
前の記事では、私がワンキャリアに入社した経緯と当時の組織課題についてご紹介しました。まだ、読んでない方は一読いただけると幸いです。

入社したばかりの私は、その後のプロダクトラインナップ増加をはじめとする事業のスケールを狙うにあたり、3つの定性目標を掲げました。

  • プロダクト開発チーム間連携ができる状態を作る

  • エンジニアリングの知見を社内に蓄積していく

  • R&D投資余力を確保する

言うは易し行うは難し、実際にトライしてみたところ一筋縄には行きません。この記事では、上のような体制づくりにおいて我々が実際に実行したトライ&エラーと、そこで得た学びを記していきます。

組織方針と基本戦術

3つの目標それぞれに対し、次のアプローチを採りました。

  • 「プロダクト開発チーム間連携ができる状態を作る」+「エンジニアリングの知見を社内に蓄積していく」

    • ①内製体制の構築: 連携ホップ数を減らす(図を参照)

もし外注のままプロダクトが増えたら: 異ドメイン間連携のホップ数は3(左)
内製化したら: 異ドメイン間連携のホップ数は1(右)
  • 「R&D投資余力を確保する」

    • ②開発工数の確保と効率化

    • ③余剰工数のR&D投資

アプローチ①, ②は、何はともあれ社内工数の調達/採用が必須です。ここで基本戦術としてまずは正社員採用の募集と並行して、SESを活用し常駐の業務委託エンジニアを増やすことにしました。
しばらくの間は、SES事業者との間の取引も純増し、順調に内製化に近づいていると思われましたが、案の定いくつかの問題が生じました。

発生した課題と対策

技術仕様fixや実装の最終段階が進まない、仕掛りの案件がたくさん溜まっていく

開発方針を決定し、ディレクションできるメンバーの不足により、技術仕様や実装内容が最終決定されていない状態の案件が増えました。
(対策①)意思決定できる正社員メンバーを増やすこと
(対策②)私自身もテクニカルディレクションに入り、方針決定から実装タスクのクロージングまで責任を持つこと。


②については、短期的に対処可能だったので徐々に改善したものの、①は長期的な取り組みが必要な事項なので、その後じっくりと取り組んでいくことになります。

課題(の本質)に対して不適切なソリューションを実装してしまう

ビジネスサイドとエンジニアサイドの課題に対する捉え方の差異と、その差異に気づかないまま行われるコミュニケーションが多発しました。結果的に、作ったものが課題を解決できない、作ったものが使われないようなケースが生じました。
(対策①)要件定義力が高いメンバーを採用すること
(対策②)要件定義のチェックやフォローに入ってアウトプット要件定義内容のクオリティを上げること。


①はやはり長期的な努力が必要です。②については、私自身も適宜交通整理に入って、知識差を埋めるフォローやコンテクストの統合などを実施することで解決を目指しました。

技術負債が貯まる

SESエンジニアの契約期間が伸び悩み、人の入れ替わりが多くなりました。結果的に設計等における長期視点が弱くなり、のちに技術負債になるような実装が増えていきました。
(対策①)エンゲージメントの向上
(対策②)コードレビュールールの改善などチームで質を担保する体制の構築

対策①として1on1の実施や課題感のヒアリングなどを実施しました。②も実施しましたが、両者決定的な対処ができたわけではなく、対処療法的であったと思います。

長期的なナレッジの蓄積ができない

2019年には正社員デザイナー3名(うち1名は兼ディレクターかつ上長)の退職が相次ぎました。
新卒1年目の伊藤と、2019年3月に配属されたもう1名が正社員ディレクターとして残され、デザイナーは不在の状態に。サービスデザインの経緯を始めとして、過去のナレッジが蓄積できないリスクが高まりました。

(対策①)伊藤のデザイナー転向
(対策②)ディレクター及びデザイナー職の採用

対策①は思い切った判断だったと思いますが、結果的に功を奏しました。本質的には②採用を実施した上で社員のエンゲージメントを高め、長く勤められるチームにしていく必要がありました。
結局の所、課題の大部分は長期目線で事業を捉え、裁量を持って意思決定をしながらプロダクトづくりに関わる正社員を増やすことで解消していくしか無いような状況で、採用が部署としても全社としても重要な経営課題になったわけです。

正社員採用への注力、モメンタム

このように2019年は非常に波乱のあった1年となりましたが、2020年にかけて新しい風も吹き始めました。

2020年4月に新卒で宮川が入社。バックエンド領域からインフラ領域を担当するエンジニアとしてグングン伸びていきます。また、ただ作るだけではなく、事業や組織に対する提案にも積極的で、皆で事業を良くしていこうというカルチャーの担い手になっていきます。

SREエンジニア 宮川


8月には、初のエンジニアリングマネージャーとなる岩本が当時の執行役員のリファラルで入社しました。攻めのエンジニアリングとメンバーの成長支援がとてもうまく、構想段階にとどまっていた大量の技術施策を実行に移すことができました。エンジニアリングの垣根を超えて他事業部と協働し成果を出した結果、岩本はのちに執行役員となります。

執行役員 岩本


9月には、4人目のエンジニアとして宇田川が入社し、複数のプロダクト間で落ちがちな開発タスクのボールを保有し、会社全体としてやらねばならない技術側面の穴を職人的に塞いでいってくれました。

バックエンドエンジニア 宇田川

事業面では、ONE CAREER CLOUDという名称でBtoBプロダクトのスピンアウト&開発が進みました。新卒領域で得られたデータを元に、就活生のみならず企業の採用も改善していくことに対して会社全体でコミットし始めました。データ連携も多いながら、ONE CAREER開発チームとONE CAREER CLOUD開発チーム間の連携は一定程度ワークし、無事にリリースまで漕ぎ着けることができました。

この時期から、ワンキャリアの技術開発部は抱えていた課題に徐々に解決の兆しが見え、次のステージにあゆみを進めたと振り返っています。

失敗から得られた組織づくりの3つの学び

組織のあるべき姿を目指してトライ&エラーを繰り返してきましたが、その過程で失敗したことから得られた学びをまとめるとすると以下の3つが挙げられます。次にやるときは絶対同じ轍は踏まない。

  1. 安易にスタッフを増やすという発想はせず、組織設計は初期段階から綿密に
    決して軽視していたわけではないが、想像以上に優先度を上げて初期から設計しなければならなかった。立ち上げ期は少数精鋭を目指し、取り組むべきIssueは厳選する。重要でない仕事は断ることも含め、選択と集中を徹底する。

  2. ナレッジの定着が組織の土台を作る
    実装即ち仕様という状態のソフトウェアに向き合う必要があった。そのうえで、経緯を知るものが少ないという状況は、その後の開発スピードに想像以上に悪影響を与えることもわかった。過去からもたらされるナレッジを定着させ、整理してその後の開発を加速させる必要がある。

  3. 良いチームじゃないと良いプロダクトは作れない
    上の2つを包含しますが、足元のチーム運営が安定化しない限り、本題であるプロダクトに集中したくてもできない。全員が同じ方向を向いて初めてチームはプロダクトをより良くすることに知恵を割けるようになる。

また月並みですが、開発のスケールにおいて重要な要素を実体験として痛感できたのは、チームにとっても自分にとっても非常に貴重な学びとなりました。

終わりに

プロダクトづくりだけではなく、組織づくりの意識もしっかり持つメンバーが集まってきたことで、当時は内製開発のイメージが無かった弊社でも一歩ずつ前進させてこれました。この時期に入社してくださったメンバーには感謝してもしきれないほどです。

2021年以降も着実に仲間集めが進み、やはり皆良いチームを目指すカルチャーを共有している状態で徐々にスケールしていますが、これ以降のあゆみについてはまた次の記事で書こうと思います。


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