分類その5「本格推理小説」
前4日に渡り、推理小説をテーマ(主たる目的)という視点で分類して来たが、今回からその形式的な位置づけに照明を当てていこうと思う。
前4回でのテーマを私が理想とする割合で考えると、次のようになる。
謎解きトリック 30%
名探偵の魅力 30%
知的雑学要素 25%
人間や社会問題 15%
断っておくが、これはそれらのテーマに割く枚数ではなく印象である。一文の中にでさえ、それぞれの割合を加味する事は可能なので、物理的には計れないし、読む側の受け取り方の個人差もあるだろう。
私は独断と偏見に基き、これらのバランスを持った作品を「本格推理小説」と名付けたい。
もとより「本格もの」というジャンルは存在しないのであって、亜流があってはじめて何が本格的なそれであるか知るものである。邪道がなければ王道を括れない。ミステリの三大奇書と言われる、小栗虫太郎「黒死館殺人事件」、夢野久作「ドグラ・マグラ」、中井英夫「虚無への供物」は異端と言われるが、果たして彼等はそれほど推理小説から離れたものを書いた自覚があっただろうか?
人が殺されないと推理小説ではない、わけではない。知的好奇心を満足させるものは全て推理小説と言える。
日本国内で言えば、雑誌「新青年」の時代は「探偵小説」という呼び方が主流だった。系譜から語れば、これらの文学は押川春浪や黒岩涙香の「冒険小説」から受け継いだ血脈である。
海外でも、ミステリやスリラーやサスペンスを定義する明確な縛りがあるわけではない。相当適当に扱われているのを目の当たりにする事も多いと思う。
そう考えると、小説は須く推理小説な気すらしてくる。読書という行為は、たとえオーブン・トースターの取扱説明書であってさえも「知の探究」なのだ。そこに謎と論理的洞察を求めさえすれば、どんな書物でも「本格推理小説」と成り得るのだ。
今日は締まりのない終わり方になってしまったが、「バランス」という意味で一考いただきたい本があるので、それぞれ4つの趣向性が何%だったか、読了後ご意見をいただきたい。
2023.3.20
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