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デザイナーから学んだ「学習のデザイン」のまとめ(20)
年明けから3ヶ月の間、12人が実践している学習のデザインの方法を見てきました。今回はこれまでを振り返り、10の気づきにまとめてみます。
1.分けずに混ぜる
学習の科目を分けずに、多面的にものごとを理解しようとする態度をとることで、見えていなかった多くのことに気づき、学び自体が楽しくなります。
阿部雅世さんは「百科的デザインの学び」として、1つの事柄を複数の科目から捉えることで、新しい発見と学びの好奇心を生み出しています。
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工藤和美さんは学校建築で、物理的にも心理的にも壁を取り除いた学習環境を設計しています。
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2.科学的に創造する
絵を描くことやアイデアを考える創造的なことは、学校教育のなかではセンスや才能という言葉に片付けられがちですが、意外にもデザイナーの学習方法は科学的なアプローチです。
ブルーノ・ムナーリさんは木の描き方をロジックと法則性で教えます。
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山中俊治さんは骨格や構造を解剖することで、モノの成り立ちを教えます。
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3.手で学ぶ
深い学びは、自身で考えたりつくったり試してみることで、自身が気づく過程が欠かせません。これからはもっと、レクチャーの割合を減らし、学生が主体的に活動して学ぶ時間を増やすべきです。
秋岡芳夫さんは、竹とんぼを手で繰り返しつくることで、設計・流体力学・美しさ・素材などの学びが得られることを、体現しています。
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ジョン・マエダさんはSTEAM教育のなかで実在性を強調し、理論だけではなく実際につくって試してみることを大学に採り入れています。
本書の中で「面白い!」と思った学生の事例があります。それは、ガラスを粉々にしたものと小麦粉を混ぜ合わせて新しい素材を開発し、焼いて形をつくり、強度や腐食といったことを研究する取り組みです。こんなの普通の学校だったら止めなさいと言われそう。これこそがアートとして向かう姿勢だと思います。
4.夢中にさせる
勉強は楽しく感じられないと、頭に入ってこないし身につきません。学ぶことと楽しむことは対比と捉えがちですが、夢中になっている状態は、この2つが両立している状態です。これはデザインすることが可能です。
佐藤雅彦さんはわかり方を考えることからはじめ、同じ内容でも面白く学べる学習方法を考え、テレビ番組・絵本・小〜中学性が読む参考書などでデザインしています。
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秋岡芳夫さんは、竹とんぼつくる理由をシンプルに「遊びです」と述べています。
学習には「遊び」が欠かせません。遊ぶから、自分なりに試行錯誤してみるし、工夫するし、よりよくしようと競ったり協力しあったりする。
上田信行さんは、教育を学問として研究した結果、没頭できることの重要性に気づき、教育プログラムをデザインします。
「人は没頭できる活動と環境さえあれば、やる気が生まれてくる」僕はそこに注目したのです。
5.見えていないことに目を向ける
学問は、世界やものごとの見方が大きく変わるための教養であり知恵です。哲学が文学といった知的な類のことに限らず、例えば、差別といった事象は目を向けなければ気づかないけれど、歴史や社会の成り立ちを知ることで、その問題の重要性が理解できるようになります。
佐藤雅彦さんは、ビジュアルやメディアという表現をつかって、見えることや分かることに気づく知的好奇心を探索しています。
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阿部雅世さんは「デザイン体操」を通じて、いかに人は見えていないか、気づいていないかを自覚し、身近な環境からも多くの発見と学びがあることを教えています。
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6.行動と理解をセットにする
メラビアンの法則によると、理解するうえで言語情報そのものは全体の7%しかないと言われています。なのでただ伝えるだけよりも、計算問題を解いたり、実験したり、意見を戦わせることが、理解度を高めることにつながります。そこで、学習のステップを意識したプログラムを提供できると、実践と学びの足並みがそろい、高い学習効果を発揮できます。
宮本茂さんは、スーパーマリオを通じて、説明書を使わずにプレイしながら段階的に学んでいけるインタラクティブ・デザインを体現しています。
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TENTの青木亮作さんは常に「次の次の一歩がわかること」を学生のゴールとして、授業を組み立てています。
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7.簡単に答えを与えない
世の中は複雑です。一面だけでは見えないことがあるし、社会にはたくさんの矛盾があるし、正解は誰もわからないことだらけです。なので、テストの点数で計れることは、ほんの一部です。より深い学びとは、自分なりに考えを探索する姿勢そのものであるといえます。
美馬のゆりさんは、学習には葛藤が欠かせないと述べています。
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ジョン・マエダさんはただつくるのではなく、批判性を取り入れた、考え抜くことの重要性をRISDで教えていました。
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8.学び方をデザインしなおす
PDCA・LeanUX・アジャイルなど、いまのプロダクトやサービス開発は仮説と検証の繰り返しで改善を繰り返していくことが普通です。教育ではこのサイクルが十分に行われているでしょうか?授業での教え方についてもそうだし、学生自身の学び方についても、振り返りは常に必要です。
宮本茂さんは、ゲームに詳しくない人に遊んでもらい、どこが分からないのか、何でつまづくかを「肩越の視線」で観察し、常に検証しています。
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上田信行さんは、メタ認知する省察の必要性を述べています。
省察とは、「状況と対話する」ことである。(中略)要するに、刻々と変化する状況のなかで、この状況をどう把握すればいいのか、その状況に対していまの自分の行動にはどのような意味があったのかをメタ認知してみることである。
9.肯定する
学習はときに悩み苦しむこともあります。そういった状況のとき、安心して学べる環境であることや、誰かと一緒に学びあえる状況は、志を持って取り組める精神的な支えとして欠かせません。
工藤和美さんは、学校が誇れる場所であるべき、ということのエピソードをこのように語っています。
先輩建築家と話したときに、こう言われたことがある。「僕らが小学生のときは、学校の建物は家よりよっぽどよかった。学校の方がはるかに立派な建物だったから、胸を張って通ったものだ。しかし、いつしか住居の方が立派になってしまった。だから僕たちはもう一度、立派な学校、ある意味で精神的にも、物理的にも、住居に負けないような空間をつくらないといけないんだよね。」
美馬のゆりさんは、学生同士が創発しあえる学習環境が大切であることを述べ、アトリエ・ミュージアム・スタジオの形式を学校に採り入れています。
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10.長い目で教える
今日の確立されている学問は、誰かが生涯をかけて知ったことや、時代を超えて受け継がれた知識や知恵の集積です。なので、深い学びとは、1日で分かるようなものではなく、卒業後社会に出て分かることや、10年以上経ってあの時の教えに気づくことなど、人生という単位の営みです。
柳宗悦さんは民藝を、簡単に分かりやすい言葉だけで伝えるのではなく、思想や考え方を後世を伝えていたことで、民俗学や美術品のあり方だけではなく、現代の工業デザインにも継承させています。
工藝は美の問題であると共に精神の問題であり、物質の問題であり社会の問題なのです。
まとめのまとめ
3ヶ月、12人のデザイナーたちの、本・実績・メディアを通じて、学習をデザインするうえでの観点を学ぶことができました。このテーマ自体あまり確立されたものではなかったので、独学的なアプローチでしたが、個人的にはたくさんの発見がありました。
さて4月からですが、社会人大学院に通うことになりました。
もちろん学習を研究テーマとして、最終的にはデザイナーなりの成果を出したいと思っていますが、まだ自分には教育に対して基礎的な知識や経験が足りていないので、今年1年はじっくり学ぶことに集中します。
なので、ここからしばらくは学んだことをまとめて、共有していくようなスタイルで連載を続けたいと思いますが、さもすると真面目で固くなりがちなので、なるべく楽しめる内容を心がけます。(ちょっと休息期間はとるつもりです)
引き続き、お楽しみに。
デザインとビジネスをつなぐストラテジーをお絵描きしながら楽しく勉強していきたいと思っています。興味もっていただいてとても嬉しく思っています。