直感と論理をつなぐ思考法02

まわり道しないと自分ごと化できない:直感と理論をつなぐ思考法

僕は短時間のグループワークがあまり好きではありません。

その理由は、みんなの妥協点を見つけて強引にまとめるよりも、1人が深く考えた世界観の方が強く伝わるものがあると信じているからです。マンガや音楽には個の想いや表現に魅力を感じるし、グループであっても個がぶつかりあってできているバンドや映画作品には同じような感動があります。

ビジネス上でのグループワークは特に、デザイン思考が注目されたころから割合が増えてきたように感じます。それを否定はしないけど、内向的な僕は個人ワークを大事にしていきたいのです。

と思っていたら、デザイン思考を推進している立場の佐宗さんが、新しい本の帯には「妄想を手なづけ...」とあります。あれっ?と思いました。内面に向き合うこのと大切さが書かれている内容だと思われるからです。

気になるので読んでみました。

直感と論理をつなぐ思考法01

直感と理論をつなぐ思考法
佐宗邦威
ダイヤモンド社 2019.03

僕が思うこの本のハイライトは、序章の終わりから1章へのつながりです。

ざっくり要約すると、序章は社会で取り組まれているアプローチの説明で、1章は個人の妄想を具現化するアプローチが説明されています。どちらかについて書かれた本は数多くあれど、2つをつなげて考察したビジネス書はめずらしいと思います。

これは、かつては法律やマーケティングといった論理的な領域を追求し、あるとき壁に当たり、そこからクリエイティブな領域に移り活躍した、という著者自身の経験から言えることなのだと思います。

では、社会アプローチ、個人アプローチ、2つをつなげるアプローチそれぞれについて、自分の解釈もまじえて紹介してみます。


1. デザイン思考を俯瞰的に捉える

まず、社会アプローチです。2000年以降で注目されていることの1つがデザイン思考であり、解説している本やネット記事はたくさんありますが、受け手によって解釈が変わりやすいので、端的に表すのは難しい概念です。

が、本書ではデザインを相対的な関係で捉えることで、デザイン思考が得意なことと苦手なことをフラットに把握できる図が紹介されています。2軸で捉えると、デザイン思考は0-1の創造について、イシュードリブンの課題解決に適しているということです。

直感と論理をつなぐ思考法03

ちなみに、この逆に位置するのが、僕が関心を持っている戦略(ストラテジー)で、これは1-100の効率性とビジョンドリブンの課題提起に適したアプローチです。僕はこのデザインにストラテジーをつなげることで、ビジネスのなかでデザインの価値を高めたいと考えています。

ということを図で説明できます。日本ではいままでカイゼンに重点が置かれがちだったので、その反動としてデザイン思考に注目が高まった側面も強いかと思いますが、4つを適材適所で扱える必要性が分かります。


2. 内発的動機に触れる機会を持つ

一方で、クリエイティブな発想や、高い志と目標を定める意思はどこから来るのかというと、個人のアプローチから生まれてくるものです。

本書は、ここに目を向けて鍛えよう、というメッセージがあります。ここでアプ出てくるキーワードは、妄想・知覚・組替・表現で、どれも受験勉強で身につくものではないし、ビジネスシーンなど数値的な評価を求められる場面では使われる機会が少ないスキルです。なので自発的に意識しないと身につかないセンスやスキルになります。

直感と論理をつなぐ思考法04

僕は内向的な性格とモノづくりをしていたバックグラウンドがあるので、割と馴染みあるほうなのですが、それでも日々考えるクセをつけたり、手を動かす 習慣を続けていないと抜け落ちていくような感覚になります。この本ではそれを具体的にどのようにやっていくかが、後半の方で丁寧に書かれています。


3. 落ちないと上がれない

では、なんで社会アプローチと個人アプローチの両方がつながる必要性があるのか?これが本書のキモとなる点ですが、端的にいうと、下がしっかり根付いていないと上が安定しないからです。例えるなら、根をしっかりはっていないと幹が高くのびないように。

なので、ほとんど上のレイヤーだけで動いていた人(高学歴で理論的なタイプ)は、一度下に潜って内面を見つめなおすことが必要となります。上の2軸の図に真ん中に穴が空いているのはこれが理由です。上と下の関係性には重力もあって(僕の勝手な解釈もあるけど)上から下には落ちるけど、下から上には勝手には浮かび上がらず自分で登っていくしかありません。妄想からはじまり表現につなげることでカタチになり、そこでやっと上のレイヤーの社会に示していくことができます。

直感と論理をつなぐ思考法02

ここからわかることは、一度下に降りてじっくり考えカタチにしてみるまわり道をしないと、上のレイヤーでいくらフレームワークをなぞっても縦の伸びがない、ということです。

デザイン思考が批判される理由の多くも、下のレイヤーに触れずにやってしまっているからと考えます。イノベーションの多くは下の領域の妄想から生まれることが多く、高い創造性と実行力を持つデザイナーは下の領域を大切にしています。デザイン思考の本来の意味も下を大事にしているはずなので、そこに解釈の齟齬がうまれているのだと思います。

・・・・・

以上、この本で紹介されている図を2つの層と3軸(縦が見えない軸として大事)という観点で、自分なりに考察してみました。

この図は本に掲載しているもので、別に僕のオリジナリティはありません。またここで書いたことは抽象的な説明だけなので、具体的にどういうことなのか?とか、では実際にどうすればいいか?ということは本書を読んでみてください。

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読書感想文

デザインとビジネスをつなぐストラテジーをお絵描きしながら楽しく勉強していきたいと思っています。興味もっていただいてとても嬉しく思っています。