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Design Scramble Cast #9 小杉幸一さん

Design Scramble Cast」は、デザインプロジェクト『Design Scramble』が運営する、参加型の音声番組です。
毎回様々な分野の第一線でご活躍されているクリエイターさんと、そのクリエイターさんと「お話がしたい」と応募してくださった若手クリエイターさんをお迎えして対談の様子をお送りしています。
こちらのマガジンでは、対談いただいた内容を一部抜選してご紹介します。全ての内容を知りたい方は、音声番組「Design Scramble Cast」をぜひご視聴ください。

 
今回ご出演いただいたのは、小杉 幸一(onehappy|アートディレクター)さんと、山崎(ヤフー|デザイナー )さんです。

小杉 幸一 さん
アートディレクター / クリエイティブディレクター / グラフィックデザイナー
1980年神奈川生。武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科。2019年株式会社博報堂を経て、2019年株式会社「onehappy」を設立。企業、商品のブランディングのために、デザイン思考をベースに、クリエイティブディレクション、アートディレクションを行う。CIデザイン、VIデザイン、広告デザイン、空間デザイン、プロダクトデザイン、エディトリアルデザイン、パッケージデザイン、ウェブデザインなど。グローバル戦略を見据えたアパレル事業のブランディングや、自己ブランド「FLOWORD」開発も積極的に行う。
https://one-1-happy.com/


小杉:小杉幸一です。武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科を2004年に卒業して、そのあとは2019年まで株式会社博報堂に在籍していました。現在は独立して、onehappyという会社でクリエイティブディレクター、アートディレクターとして活動しています。

山崎:山崎栞奈と申します。私も武蔵野美術大学を卒業後、現在はヤフー株式会社でUI/UXデザイナーとして働いています。ムサビ生にとって憧れの小杉さんとお話させていただきたく、今回応募しました。今後のキャリアとしてどんなアートディレクターを目指したいと考えたときに、小杉さんがお話されている「考え方を翻訳するアートディレクター」が、私が目指したい姿に近いと思いました。最近では、ヤフーとLINEの経営統合の新聞広告を小杉さんに担当していただいたことも、一社員として嬉しかったですし、お礼をお伝えしたいと思っていました。本日はよろしくお願いいたします。

1. 人を喜ばせたいという想いが、全てのモチベーション

山崎:小杉さんがアートディレクターを目指されたきっかけや、今に至るまでの原動力となったエピソードなどがあれば教えていただきたいです。

小杉:子どもの頃から、自分が描きたいから描くというより、みんなを喜ばせることが目的でした。そこで高校の美術の先生に相談したら、「目的のためにつくるのはデザインだ」と言われて、デザイン学科に入学しました。
大学生のときは、ムサビの工藤強勝先生に相談していました。現役でエディトリアルのデザインをされていて、大学だけに止まらず、デザイン業界に精通している方だったんです。面識はなかったけど、週末の夜にいきなり電話をして悩みを聞いてもらいました。ポスターをつくりたいという僕に対して、「人に見てもらうことが根本のモチベーションなのでは?広告は東京でつくっても沖縄の人に見てもらえる」と言語化してもらったんです。
当時は大貫卓也さんや佐藤可士和さん、森本千絵さんなどがいて、デザインが世の中を引っ張っていく時代でした。たとえば大貫さんは、ペプシのペットボトルのふたをメディアにしたり、佐藤可士和さんはSMAPで街中をメディアにしていました。今は当たり前でも、当時は新しい視点ですよね。目的のためなら何でもメディアにできる自由さに憧れていました。

山崎:私も森本千絵さんのミスチルのジャケットをはじめとした、みなさんの作品を見て、広告のアートディレクターってすごくかっこいいなと、今でも憧れています。

小杉:大学生のとき、森本さんが担当した「8月のキリン」を手伝っていました。当時、森本さんは特に自由だったんですよね。「手書きでいいじゃん!」「シール貼っちゃえばいいじゃん!」って(笑)。楽しんでる姿を横で見て学ばせていただきました。

山崎:博報堂に入社されて、佐野研二郎さんのもとでお仕事をされていたと思いますが、社会人3年目くらいまでは具体的にどんなお仕事されていたのでしょうか?

小杉:入社式の日に佐野さんに挨拶に行ったら、「入稿できる?」って聞かれて、スーツのままポスターの版下をつくりました(笑)。佐野さんの元では、つくったものが世の中に出ていくサイクルがすごく早くて、最初は追いつくのに必死で、やることが多すぎてパニックになりました。でも佐野さんってエスパーみたいで、考えを先取りして言語化してくれるんです。そうやって僕が大変なときには「どんな作業も全部デザインだから」と言って背中を押してもらいました。ポスターをつくるために紙を選ぶことや、プリンティングディレクターとのコミュニケーションもデザイン。バイク便をが来る時間を調整して、そのあとのスケジュールをうまく進めていくのもデザイン。それを聞いて、なにも苦じゃなくなりました。「全部うまくなればいいじゃん!」と、ポジティブに思えたんです。しかも考え方がポジティブになればなるほど、アウトプットとプロセスもポジティブになります。全て反映されるんですよね。これを若い時に教えていただいたけたのは本当によかったです。

山崎:私も社会人3年目で、目の前のことだけではいけないと思いつつ、実際に仕事をしながら自主制作をするのは大変だと実感しています。キャリアの悩みとして、インハウスデザイナーと広告デザイナーとの違いにも悩んでいます。一流のアートディレクターになるには、広告業界のような下積みも必要なんじゃないかと思っています。アートディレクターになりたい私は今、何をすればいいんだろう?……と。

小杉:インハウスデザイナーは、プロジェクトとの関わり方が密ですよね。僕はデザインを翻訳だと考えているので、プロジェクトごとに自分の場所を変えながら翻訳の仕方も変えていけることは、ひとつの大きなモチベーションになると思います。加えて、アウトプットへの責任を誰よりも持ち続けることは、美大生の強みですよね。アートディレクターになるときに、ビジョンを明確に持てるようになるかで仕事での立ち位置が変わると思います。今いる場所をポジティブに捉えて頑張ってください。
山崎:ありがとうございます!

2.「目標は常に2つ持ち続けろ」

山崎:2008年(当時28歳ごろ)にJAGDA新人賞を受賞されて、若くして成功された方と認識しているのですが、賞を獲るまでに小杉さんにも悩まれていた時期はありましたか?

小杉:1_WALL(当時は「ひとつぼ展」)とういう公募制の展覧会があるんですが、デザインよりはアート寄りの表現の魅力を重視している賞でした。社会人3年目くらいの時、僕はそれに出し続けていたんですけど、全然受賞できなくて。表現の個性がないことに、良い意味で諦めがつきましたね。受賞できずモヤモヤしていたときに、佐野さんから「目標は常に2つ持ち続けろ」と言われました。1_WALLの賞を獲ることしか目標がなかったら、それがダメだったときに気持ちが落ちてしまいますよね。なのでJAGDA新人賞を、2つ目の目標にしました。そうすると普段のアプローチも変わってきました。それで結局、手前の目標はダメでも、奥の目標を達成することができたんです。今でも人生や自分の仕事のプロセスに対して、目標を2つ持つことは続けています。

山崎:今まで様々なことを乗り越えられてきて、現在の小杉さんの目標はなんですか?

小杉:1つ目は秘密なんだけど、2つ目にアートディレクターとして、誰もやったことがないようなポジションで仕事をしてみたいという考えがあります。形として世の中に出るものだけではなく、プロセスの部分で活躍することもアートディレクターの仕事だと思ってるんですよね。例えば、政治の取り組みも伝わりやすいデザインにすることによって、国民によく伝わって、プロジェクトが前進するとか。まぁこれは想像ができる範疇ですが。もっとみんながびっくりするようなことをやりたいです。

山崎:今後の小杉さんの展望をお伺いできて、とてもわくわくしてきました。

小杉:アートディレクターの役割として、システムを変えることも大事だけど、絵や色を変えることで叶うこともあります。たとえば、卓球台を緑から青くしたのは浅葉克己さん。それだけで一気に卓球がモダンなスポーツに見えますよね。システムを変えるだけでは叶わなかった部分だと思います。そういったところに、やらなきゃいけないことがまだまだあると思うんです。

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小杉さん、山崎さん、ありがとうございました!
続きが気になる方は「Design Scramble Cast」をご視聴ください。

📮 Design Scramble Castへの参加者を募集しています

Design Scramble Cast」では毎月1つ、対談を配信予定です。
また、憧れのクリエイターさんと「お話ししてみたい」「相談してみたいことがある」という若手クリエイターの方も募集しています!
参加希望の方は、Googleフォームからぜひエントリーしてください。

それではまた、お会いしましょう👋🌷

Design Scramble Cast 公式サイト:https://designscramblecast.jp/

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