寂れた町をヘンテコな学生たちが盛り上げる!豊岡市日高町で「ヘンテコウィーク」開催!
伝所鳩のある豊岡市には、日本で初めてとなる”芸術文化”と”観光”の2つの視点を学ぶことができる「芸術文化観光専門職大学」があります。
先日、こちらの学生の一人がお店にやってきて、一枚のチラシを渡してくれました。
ヘンテコウィーク…?
チラシの表紙には、川の中で一人の男性が佇み、見つめる先には青年団の拠点である江原河畔劇場が見える。このイベントはいったいなんだろう。ヘンテコウィークという名前の通り、よく分からない。
芸術文化を学ぶ学生たちが企画するイベントだから、ちょっと変わったイベントなのかなと思ってページを開くと、中に書かれたイベント内容もどれもヘンテコなものばかり。でも、なぜかワクワクする。
だって、
この町を散歩するイベントがあったり、スーパーに買い物に行って食事を作るだけのイベント。他にも、空き家を散歩するイベント、倒立が一日でできるようになるワークショップまで。週末に行われるパフォーマンスは、予定時間がなんと7時間と書かれた恐ろしく長いイベントまである。
いったいなにをやるんだろう。
誰でも参加OKだし、子連れOKのものもあるし、見学だけOKのものもあると書いてあるけど、正直ちょっと参加はしづらい。どういう人がやってきて、どういう人が参加するんだろう。チラシを見れば見るほど、謎は深まるばかり。
ということで、このイベントのことを根掘り葉掘り聞いてみました。
ヘンテコウィークってなんですか?
チラシを持って来てくれたのは、末本あおいさん。福井県の出身で、芸術文化観光専門職大学の2年生。ヘンテコウィーク実行委員の一人であり、マーケティング担当だそう。
末本さん、ヘンテコウィークおもしろそうですね!東京にいた頃はこういったイベントは頻繁にありましたが、日高町ではとても珍しいイベントなので、チラシを見るだけでワクワクしました。
でも、正直なにをやるのか全く分かりません。誰でも参加していいものなの?
実は、私もあまりよく分かっていないので、詳しいことを知っている実行委員長の竹内さんがいる「江原 101」に一緒に行きましょう!
マーケティング担当なのに知らないの…?
末本さんに連れて行ってもらったのは、日高町江原(えばら)地域にある「江原 101」。伝所鳩からも歩いて10分ほどです。
建物の前で待っていてくれたのは、スキンヘッドのちょっと近寄りがたい見た目の一人の男性。ちょっと怖い。
江原 101は、シェアハウスで、普段は芸術文化観光専門職大学の学生たちがシェアしながら住んでいます。ただ、普通のシェアハウスではなく、芝居小屋機能を持ち合わせ、メインホールは吹き抜けになったスタジオ空間になっています。演技やダンスの練習、勉強会など多目的に使えるのがここの最大の特徴です。
そんな江原 101は、ヘンテコウィークの会場「ヘンテコ案内所」になり、すべてのプログラムの入口となる場所です。
竹内さんは、東京の出身で芸術文化観光専門職大学の4年生。ヘンテコウィークの実行委員長であり、フェスティバルディレクターを務める。近寄りがたい見た目とは裏腹に、この地域を愛する一人です。
早速ですが、竹内さん。ヘンテコウィークってなんですか?
僕は、この江原という町がすごくいいところだと思っています。でも、住民の中にはそう感じていない人もいたり、移住者も住民と関わりを持たない限り、町の魅力には気づけません。
そんな中でイベント開催のきっかけとなったのは、豊岡演劇祭です。初年度は日高町が中心エリアでしたが、プログラムの数が毎年減っていて、会場もだいたい同じ。もっといいところや魅力的な人を知ってもらいたいんですが、このままでは、日高町の演目はさらに減り、町もフォーカスされなくなります。
私たちも日高町でお店をやっているので、豊岡演劇祭の日高町エリアがどんどん縮小していくのは気になっていました。それもあって、伝所鳩では住民が主導で何かやる必要があると思って、去年も今年も自主企画で日高町のグッズを作ったんです。
それで去年は、江原 101の皆さんがグッズを代わりに販売してくれて、ヘンテコウィークでもグッズを販売してくれる予定なんですよね。自主的に盛り上がろうとしている人たちが私たち以外にもいるのは、とても嬉しいし心強い。
だから演劇祭とは別で、日高っていいところだな。なんなら移住しようと思ってもらったり、自分の住む場所を見つめ直すきっかけにもなる企画が作りたくて、ヘンテコウィークははじまりました。
でも、演劇やアートは初心者には難しいです。ヘンテコウィークも同様に説明を読んでもよく分からないものが多いので、参加しづらいし、そもそも広くたくさんの方に参加してもらいたいと思ってない感じが少ししました。
正直、私も分からないことのほうが多いです。
実行委員の一人なのに…?
私たちが通っている大学は、芸術文化と観光分野があって、みんなが演劇について学んでいるわけではないんです。私も、宿泊業や交通業、旅行業などを中心に観光分野について学んでいるので、演劇の子たちの話についていけないこともたくさんあります。
だから、無理に理解しようとせず、分からないまま参加して結果楽しかったり、感じるものがあればいいんじゃないかなと思います。少なくとも身内ノリにだけはしたくないので、間口は広くしておきたいです。
なるほど。それぞれの解釈で楽しめばいいわけなんですね。
でも、プログラムが分かりづらくて、初心者からするとどれに参加すればいいのか分からないのも正直なところ。
ターゲットが各プログラムによって違います。平日に開催するプログラムは、学生や舞台芸術関係の人、地域の高齢者が来やすい時間帯で設定しています。
外の人がターゲットで来ていただきやすいのは、土日や祝日のプログラム。パフォーマンスやフリーマーケットがあり、たくさんの方に来てもらいたいです。
ヘンテコウィークは、今年が初なので、予算は豊岡演劇祭の100分の1くらいで、全体的な規模は小さく、町全体が盛り上がる感じにはなりません。ここでなにかやってるなくらいの規模感になると思います。
ただ、ワークショップ系は10~15人くらいがベストなので、逆にたくさん集まりすぎると運営側で見きれなくなってしまうので、まずは近所の方に来てもらうことが、一番だと思っています。
確かに散歩のイベントで何十人もゾロゾロ歩いてたら、周りの人も何事かと思うかも(笑)ちなみに、地域住民にこそ参加してもらいたいのはなぜ?
江原を題材にしたプログラムもありますが、そうでないものもあります。じゃあ、それがどう江原と関わっていくかというと、住民たちとお客さんが交流したり、地域と観光客が交流しているみたいな場自体を作ることが僕らの役割だと思っています。
例えば、アートフェスティバルは関係者しか来ていないことが多くあります。豊岡だと、移住者は集まるけど、地元の人は来ていなかったり。それが一般化されつつあるので、ヘンテコウィークは7割くらいが地元の人を目指し、演劇やアートに興味がない人でもお祭りとして楽しめる。外から来た人には、地元の人たちと学生や芸術がどういう風に関わることができているのか、そんなことを見てもらえたらと思っています。
ヘンテコウィークの裏側のテーマは、学生や地域住民、舞台芸術の関係者の人たちに、こういう場が作れることを示したいのと、日高町ってこういうことができる場所なんだってことを知ってもらえたら、町全体が良くなっていくのかなって思っています。
演劇初心者である私の感覚とわりと近い末本さんから見て、初心者でも楽しめそうなプログラムでおすすめはありますか?
イベントが始まる最初の「オープニングパフォーマンス」です。これは地域住民が参加する演劇です。
近所に住むおじさまたち11人が、夜な夜な公民館で練習をしているのっておもしろいんですよ。肩書などを取っ払って一人のおじさんとして、全力でみんなで力を合わせて演劇をしているのってとてもいいんですよね。これはたくさんの方に見ていただきたいです。
まさに、温泉や銭湯での裸の付き合いみたい。
会社の社長さんや、銀行の上のポジションの方も参加してくださっていて、そんな方たちも変な動きのパフォーマンスをします。それを上司や部下が見に来てくれるかもしれない。それに地域のコミュニティに入っている人もいれば、入っていない人もいて、会社や地域でのポジションの違いがあっても、この場ではみんなフラットに楽しめるんです。
偉い方が率先して参加してくれるのはいいですね。まさにイベントがいろんな繋がりを作ってくれている。
僕らの住むシェアハウスの住民も、運動会や神社清掃に積極的に参加しますが、個人間でうまくいっていない時期でも、行事に参加すればみんな集まって仲良くなれる。完全に地域のイベントに助けられています。地域のイベントは、お隣さんと仲が悪いときでも、掃除は一緒にしましょうねって役割だと思うんです。お互い思うことがあっても運動会のときは結束しようとか。
地域の行事って意味あるの?ってことも多いけど、人間関係の潤滑油の役割もあるわけだ。
こういうのは少し強引である方が意味があると思うんです。例えば、秋祭りで神輿を担ぐのも、ほんとは嫌な人もいるけど出ていかなきゃいけない。でも、最後はみんなでごはん食べてて結果いいものになっています。
謎イベント!空き家超さんぽ
ヘンテコウィークのヘンテコなプログラム。個人的に気になったのは、「◯△□空き家超さんぽ」。空き家好きとしては見逃せないイベントですが、これはどういうものなんだろう。
担当である前川 友萌香さんに伺ってみます。彼女もヘンテコウィーク実行委員の一人です。
空き家さんぽって、この地域の空き物件情報が得られるようなものですか?
そういうのではないんです。大学で空き家の芸術的活用方法について研究をしていて、ドイツでは、空き家を使った作品を作ったり、アーティストが空き家を占領する事例が多く、リサーチを兼ねて半年留学しました。
私の地元である岐阜県には、日本一のシャッター街があります。そこが若い人たちを中心に盛り上がっていて、その理由や活用方法、そして私が空き家だったここに住んでいるし、実家も空き家になったので、そういうのを元に30分くらいプレゼンをし、実際に空き家を見にいきます。
空き家って、持ち主はリフォームしたいけどお金がなくて厄介者にされたり、周りの人からも邪魔者扱いされてしまいます。だから、空き家も成仏した方がいいんじゃないかと思って、空き家のことをみんなで考えたいと思っています。
いろんな事例を見て、そして自分たちの町を空き家視点で見てもらったらどうだろう。空き家を中心に町を見ることで、人はいないけどどういう風に生活していたのかなどを考える散歩になればなと。
ゆるいイベントと思いきや、意外にちゃんとしたイベントなんですね(笑)伝所鳩も私たちのおじいちゃんが住んでいて、長らく空き家になっていた建物なので、お話しを聞いてますます興味が湧きました。
意外としっかりと考えられたプログラムの数々。でも、参加費は全て無料です。これはなぜでしょうか?
ヘンテコウィークでは、カンパ制を取っています。これは、地元のお祭りとして続けていきたい気持ちがあるからです。
盆踊りや獅子舞、歌舞伎も、日本で行われてきたパフォーマンスやアートイベントも昔は参加自体は全て無料で、より深く関わるなら寄付や企業に協賛を募る形でした。これが日本の馴染みある芸術の関り方だったので、広く募ることで盛り上がりも出て、結果いいフェスティバルになると思うんです。
ただ、今回は協賛もなく、助成金とクラウドファンディング、あとはイベント期間中の物販とカンパだけです。助成金とクラウドファンディングで赤字にはならないようにしていますが、今後継続するには企業からの協賛や皆さまからの支援が重要です。
伝所鳩が物販スペースの協力をさせてもらいますが、そこでの売上もこのイベントを続けていくための重要な資金の一部となるわけですね。
物販では、私たちが企画した日高町のグッズの他に、全国のつくり手さんの商品も少し並べる予定で、末本さんが今まさに頬張っているドーナツもその一つです。
このドーナツ、めっちゃ美味しい。私、これ自分で買いそう!
このドーナツは、石川県金沢市にある「ウフフドーナチュ」さんのものです。冷凍ドーナツですが、自然解凍で30分〜1時間すると、冷凍とは思えない美味しさになります。伝所鳩でもファンの多い商品です。お母さんたちが子どもたちに安心してたくさん食べてもらおうと開発された商品で、保存料なども入っていません。
これ、冷凍なんだ…。すごい。
こちらは昨年の豊岡演劇祭で、学生さんたちに販売してもらったブースの様子です。今回もこんな感じの物販エリアを設けてもらう予定なので、お買い物も楽しんでもらえたらと思います。
あと、今回はもう一つ。10月12日(土)に開催される「ヘンテコフリーマーケット」にも出店させてもらいます。フリマはお店の商品ではなく、私たちの私物を出す予定です。この日は伝所鳩も通常営業のため、店頭に立つことはできないので商品のみですが、よかったらぜひ見に行ってみてください。
販売場所は、物販、フリマともに江原 101です。とにかくまずは、江原 101に行けばOK!です。
フリマはまだ出店者を絶賛募集中しているので、出してみたい方はぜひお気軽にお申し込みください!
フリーマーケットの詳細はこちら
https://weirdweek.tajima-arts.com/?p=280
ヘンテコクラウドファンディング実施中
ヘンテコウィークでは、現在クラウドファンディングにも挑戦中で、返礼品として用意されているグッズは、末本さんがデザインしたそう。
ロゴが恐竜のようなキャラクターですが、これはなぜでしょう?末本さんが福井出身だから恐竜をモチーフにしたとか?
これは小ザウルスの「コザ」と言います。でも、これワニなんです。
ワニ…?後ろに流れている円山川には、かつてワニが生息していたとか?
緑で尻尾が付いてるのってワニじゃないですか。子ワニじゃなくて子ザウルスなんですよ。
???
なぜワニなのかは、結局よく分からなかったのですが、日高町を盛り上げたい方、ぜひともクラウドファンディングからの応援をお願いします。
そもそも日高町江原(えばら)って?
豊岡市日高町は、人口15,000人ほどの小さな町。今では市街地へ働きに出る人たちのベットタウン的な町になっていますが、江原地域はかつて商人の町として栄えた背景もあります。
養蚕で盛え、多くの従業員を抱える企業もあり、映画館やビリヤード場、飲み屋などの娯楽施設も立ち並び、冬場になれば神鍋高原へ向かうスキーヤーで溢れ、年間を通して賑やかな地域でした。
しかし、日高町も多くの地方と同じく、高齢化や若い人の流出などによって人口は減り、空き家が目立つようになってきています。
そんな中で、2021年4月に豊岡ではじめての4年生大学ができ、日高町にも学生が住み始めるようになりました。来年は初の卒業生を輩出し、多くの学生たちはこの町を離れていくことになるでしょう。
でも、こうして外からの風が吹き始め、学生時代の間だけでも、この町の魅力を感じ盛り上げようと、地域と関わって活動してくれる人たちがいるのは、町にとってとてもいい影響があるように思います。彼ら彼女らを応援することは、結果として町のためにもなるはずです。
少しでも気になった方は、ヘンテコウィークへ足を運んで、学生さんたちとお話しをしてみてください。きっと何か得られるものがあるはずで、私たちもここに行くといつもいい刺激をもらっています。
※竹内くんは、今後もこの町に残り活動をしていく予定なので、卒業後もいます。
伝所鳩はヘンテコウィーク中も通常営業です!
ヘンテコウィーク期間中、伝所鳩は通常通り金曜、土曜、日曜の10時〜16時で営業する予定です。また10月14日のスポーツの日も営業するので、よかったらヘンテコウィークと合わせてお立ち寄りください。
伝所鳩では、ものづくりを通して技術や暮らしの文化を伝えています。演劇やアートとはまた違った文化を、商品を通じて感じてもらえたらと思います。
また、日高町には他にもたくさん魅力的なお店があります。ヘンテコウィークで日高町にお越しの際は、ぜひ日高町を巡ってみてください。
<ヘンテコウィーク>
・開催期間:2024年10月11日(金)~10月20日(日)
・案内所営業時間:9:00~19:00
※16日(水)のみお休み
公式Web:https://weirdweek.tajima-arts.com/