商売の基本は『三方良し』
今から約半年前、サッカーの元日本代表の本田圭佑さんのTwitter投稿↓↓がキッカケになり、”ラーメン適正価格論争”が勃発しました。時間がかなり経過して、遅きに失した感はありますが、今回はモノの適正価格や商売について少し考えてみました。
ラーメンの価格が高いと感じるか、安いと感じるかは人ぞれぞれです。本田さんのように”安い”と感じる人もいるでしょうが、”高い”と感じる人も少なくないでしょう。本田さんが食べたラーメンは、感動するくらい美味しかったのでしょう。そのため、こんなツイートをしたのだと思われます。彼は文章中で、”値上げするべき”と言う言葉を二回も使っていますが、果たしてそうでしょうか?。
モノの値段には適正な価格があって、値段をつけるのは売り手ですが、実際の価格は売り手と買い手のパワーバランスで決まっていきます。いくら美味しいラーメンでも、2000円出すくらいなら他のものを食べたいと思う人は多いでしょう。ある番組で、500円の値段でラーメンを提供し続けている店主がインタビューを受けていました。レポーターが「どうして500円に拘っているのでしょうか?」聞くと、その店主はこう答えました。「特に500円には拘っていません。でも、ラーメンに600円も出すのなら、かつ丼を食べた方がマシでしょう。そう思いませんか?。自分ならそうします」と自信たっぷりに言いきっていました。
売り手は多くの人に買ってもらうためには価格を下げる必要がありますが、下げ過ぎると利益が無くなるので、販売を継続することは出来ません。買い手は良いものを安く買えるのは嬉しいのですが、店が潰れてしまえばその商品を二度と購入することは出来ません。モノの価格は微妙なバランスの上で成立しています。ウィン=ウィンの関係と言われるように、売り手にも買い手にもメリットが無ければ、売買は成立しません。
一般的な飲食店の場合、原価率は30%が目安なので、先程の730円のラーメンなら219円が原価になります。飲食店の場合、原価の大半は材料費なので、材料費をケチって原価を落とせば短期的な利益は増えますが、味は落ちてしまいます。味が落ちればお客は減って、結局トータルでは損をすることになります。大雑把に500円がラーメン一杯の利益と仮定すると、ひと月に50万円の利益を出そうと思えば1000杯のラーメンを売る必要があります。ラーメン屋さんは、決して楽な商売ではありません。
先程は、売り手と買い手のウィン=ウィンの関係について説明しましたが、商売には『三方良し』という言葉があります。これは”三者にとって良いことがあるのが商いの基本だ”という考え方です。その三者というのは、”売り手”と”買い手”と”世間”です。この言葉は、いまの滋賀県にあたる近江の国に本店を置き、江戸時代から明治時代にわたって日本各地で活躍した近江商人が大切にしていた考えです。三方良しとは、商売で信頼を得るためには売り手と買い手がともに満足し、さらに社会貢献もできるのが良いとするウィン=ウィンの上位概念です。
一昔前の公害は、三方の内の”世間”を蔑ろにした商売のツケが廻った結果です。また、食品の産地偽装や賞味期限偽装は、”買い手”を蔑ろにした商売でした。たぶん、三方良しの商売ができると、持続可能(サステイナブル)な商売になるでしょう。