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自分マガジン 短編小説編

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自分の書いた短編小説をまとめました。まだまだ下手くそですが、少しづつ精進しています。良かったら、読んでみて下さい。
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記事一覧

近未来小説 東京都知事選20XX

西暦20XX年、東京都知事選は未曽有の局面を迎えていた。前年に週刊誌にスクープされ、政治資金規正法違反で都知事が辞任したため、その年の1月に急遽都知事選が行なわれることになった。 2024年の東京都知事選をキッカケにして、東京都知事選の候補者数は増加の一途を辿っていた。2024年の選挙では56人が立候補したが、その次の都知事選では100名を超える候補者が立候補した。 20XX年の立候補者は1005名となり、遂に立候補者数が4桁の大台に突入した。東京都知事選は、さながら”お

短編小説 弁当男子は出世できない!?

俺にとってはどうでもいい話だけど、どうやら弁当男子は出世できないらしい。弁当男子とは、自分で弁当を作って会社や学校に持って行く男性のことを指す言葉だ。「出世できない・・・」は、どこぞの大手企業の社長さんがコラムに書いた”ありがたい御意見”で、「いまどき昭和かよ!」と思わずツッコミたくなる時代錯誤の意見だ。そもそも弁当とは関係なく、”会社に入った全員が出世を望んでいる”と思っていること自体が、時代遅れな考え方だ。こんな社長がいる会社の社員には本当に同情するよ。 永く不況が続い

短編小説 『イケメンが陽キャなんて誰が決めたんだ?』

俺の名前は鈴木三郎。名前から予想できるように三男だが、実は男4兄弟の三番目だ。俺の下にはもう一人、兄弟がいる。 自分で言うのも恥ずかしいが、どうやら俺はイケメンらしい。それを自覚し始めたのは中学生になった頃だった。小学校までは男女関係なく一緒に遊んでいたのに、中学生になるとその関係性が何となく余所余所しくなった。みんなも経験あるだろうが、子供から大人の身体に変化する第二次性徴が始まる、いわゆる思春期というやつだ。 中学二年生になると俺のモテ期がやってきた。その頃はやたら同

現代の寓話 裸の王子様

ある王国に、車好きの王子様がいました。その国の王様は、後継者である王子様を溺愛し、何でも買い与えました。王子様が、あの高級車が欲しいと言えばすぐに注文し、あのスポーツカーが欲しいと言えば、これまたすぐに買い与えてくれました。王様は王子様の車を購入するため、少しずつ税金を上げていきました。王子様の専用ガレージには、車の博物館のように古今東西の名車が並んでいました。 王子様は、自分の愛車を自慢するのも好きでした。王子様は毎週末、お城の外のメインストリートで、愛車を使ったパレード

短編小説 『夏の悪魔』

 僕の名前は鈴木勇気。都内の大学に通う、どこにでもいる普通の大学生だ。中学・高校の頃から勉強は出来る方だったが、コミュニケーション能力に欠けるため、友人はほとんどいない。いわゆる陰キャ・ボッチというヤツだ。彼女も当然いない。友人もいない僕には、カノジョはハードルが高すぎる。女性に興味が無いわけではないが、自分から話しかけたことはないし、ましてや告られたこともない。現在20歳、世間で言う『彼女イナイ歴イコール年齢』というヤツだ。  今日は、大学のクラスメートの杉山に、近くの喫

短編小説 『ピンクのサウスポー』

「父さん、天国から見ててね。ようやく父さんとの約束を果たせそうだよ」 今日は、202X年のワールド・ベースボール・クラシック (WBC) の開幕戦。今回のWBC予選のPOOL Aは、日本で開催されるため、日本対チャイニーズ・タイペイの開幕試合は東京ドームで行なわれる。WBCは、メジャーリーグベースボール(MLB)機構とMLB選手会によって立ち上げられたワールド・ベースボール・クラシック・インクが主催する、世界野球ソフトボール連盟公認の野球の世界一決定戦である。 予選はAか

絵の無いマンガ#5 『結婚詐欺』

私の現在の名前は佐々木アケミ、本職は結婚詐欺師だが、いまはS市の駅前にあるホームセンターでパートとして働いている。S市に来たのは、R市での”仕事”を終わらせた後だったので、かれこれ二月ほど前だ。ホームセンターでは、驚くほど簡単に採用された。面接のときに提出した履歴書は、全部デタラメだ。しかし、パートさんの履歴書を丁寧に調べるはずもなく、店長による簡単な面接の後に無事に採用された。 今回のターゲットは、ホームセンターの向かいにあるS市では大きな鈴木総合病院の一人息子だ。ターゲ

絵の無いマンガ#4 『迷える子羊たちよ』

高校の入学式を季節はずれのインフルエンザで欠席した俺は、高校デビューに失敗した。それ以来、見事なまでのボッチ状態を貫いている。もともと人とのコミュニケーションが苦手だった。しかし、はじめて高校に通学した時には、既に同じクラスの生徒はいくつかの小グループに分かれていた。このことも、俺がボッチになった原因だった。 ラノベやYouTube動画の主人公なら、”実はイケメンで有名な俳優だった”とか、”IQ180の天才だった”とか、”中学時代は最強の元ヤンキーだった”ということになるん

ホラー小説は苦手です。

本は大好きで、純文学、SF、歴史小説、ノンフィクション、ルポルタージュなど、これまでに様々なジャンルの本を読んできました。しかし苦手なジャンルが2つあります。1つは官能小説です。ラブロマンスなら何とか読めますが、エロいのはチョッと・・・。ただし、エロを否定しているわけではありません。いい年した大人のオッサンが言うのもなんですが、ちょっと恥ずかしいのです。 もう一つの苦手なジャンルが、ホラー小説です。ホラー小説で読んだことがあるのは、スティーヴン・キングの数冊だけです。キング

短編ホラー小説 アナタの後ろに・・・

最近、オレには悪いことが続いている。一週間前には、二年間も付き合った彼女に振られたし、三日間の出張を終えて会社に出勤すると、会社が倒産したことを知った。『二度あることは三度ある』とはよく言ったもので、傷心旅行のため空港に向かう途中、交通事故に遭ってしまった。命に別状はなかったものの、左手を骨折して救急車で運ばれた。結局、乗る筈だった飛行機には乗れずに、旅行もキャンセルすることになった。 骨折以外の自覚症状は無いが、念のため検査入院することになった。病院には、大学時代からの友

短編ホラー小説 ブラック企業

オレはブラック企業に勤める、いわゆる社畜という奴だ。ブラック企業の正式な定義はないが、”労働者に劣悪な労働環境を強いる企業”というのが一般的だ。特徴としては、① 労働者に対し極端な長時間労働やノルマを課す、② 賃金不払残業やパワーハラスメントが横行するなど企業全体のコンプライアンス意識が低い、③ このような状況下で労働者に対し過度の選別を行う、などが挙げられる。オレの会社は①の条件にピッタリ当てはまる典型的なブラック起業だ。オレは、最初からこの会社を希望して入社したわけではな

笑い話!?『青い果実』

記事にするネタが切れてきたので、大学生の時に友人に聞いた『青い果実』というお話を、記憶を頼りに書きます。記憶が曖昧なので、細部は違っているでしょうし、かなり脚色をしています。登場人物は3人の青年と、お爺さんと孫娘の5名+α(アルファ)です。ここでは3人の青年をA君、B君、C君としますが、話を聞いた当時は、その時人気だった三人組の実名(芸名)が使われていました。すこし不快な表現が含まれているので、嫌な人はご遠慮ください。 ***************************

ショートSF#5 『社畜』

俺はブラック企業に勤める、いわゆる”社畜”だ。社畜は公式な用語ではないので本来定義なんてものはないが、”勤めている会社に家畜のように飼いならされた結果、自らの主体的な意思や判断を示すことなく、言われるまま辛い仕事や理不尽な仕事をひたすらこなすようになった会社員”のことを指すらしい。 そんな社畜な俺には、人に言えない重大な秘密がある。この秘密は”本当に重大”なので、その話をしても誰にも信じてはもらえないだろう。その秘密というのは”俺に地球を滅ぼす権限が与えられている”というこ

ショートSF#4 『ブレークダンス』

今日は地球の運命を左右する大事な会議だ。俺はその会議の中でも超重要な役割を担っている。俺は、オリンピックで金メダルを取ったことがあるブレーキンのチャンピオンだ。ブレーキンというのは、2024年のパリオリンピックから正式種目になった競技ブレークダンスのことだ。今ではその経歴が買われ、国連の職員として勤めている。 俺が国連に採用されたのは、ユニセフなどの活動でスポーツを普及させるためではなく、通訳のためだ。それも国連事務総長直属の通訳だ。俺は語学が得意な方だ。俺はブレーキンの大