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エビデンスなんかいらない!?

医学部等で臨床試験を行う際においては、試験実施計画書等には必ず、求めるべきエビデンスがなんであるか明確にしないといけなかったんですね。エビデンス、科学的根拠(Medical Evidence)とも言われ、基本中の基本ですよね!

しかし、ヘルスケアビジネスという分野がメディア等でも一般的に言われるようになり、さらに最近ではデジタルヘルス産業とかが注目されるようになってくると、誰もが「それってエビデンスあるのか?」「エビデンスの確立がポイントだよね!」とか色々言うようになってきましたが、それ言っている人は自分がどのような視点から言っているのか認識して発言しているのでしょうか。

基本的には、まともな学会に査読を経て論文として発表されたものであることが必要ですが、企業内でちょこちょこっと実験してエビデンスがあるとか、レポートをまとめて、これがエビデンスだ、的なことを言う方(企業)もちらほらいらっしゃいます。インパクトファクターなども重要視されますが、エビデンスと言う言葉をいとも簡単に使っている人に限って、エビデンスの信頼度合いを気にする人は少ないです。

で、それがダメなのでは無く、考え方の問題かと思います。創薬や医療機器分野で求められるのは明確な科学的根拠(真の意味でのエビデンス)ですが、もっと暮らしの現場(フィールド)におけるヘルスケア(製品やサービス)の検証においては「科学的妥当性」というものが定義として必要であり、別物として扱われる必要があるのかな〜とも思っています。

特に、RWD(リアルワールドデータ)を基に社会実証(フィールド実証)で確立されるものは科学的妥当性ですよね。医学における科学的根拠の確立には、実験的環境下における比較検証が不可欠ですから、実社会で行う実証とは、おのずと意味合いが異なってくると思います。

ヘルスケア分野において、大学や研究者の多くの方々と議論すると、その部分のすり合わせがうまくできなくて、向こうは科学的根拠構築の視点から発言しており、こっちは科学的妥当性の視点から発言していて、着地点が見えなくなってしまうことも多々ありますね。

なので、フィールド実証(暮らしの中での実証)においては、確立されるものは科学的妥当性であって、科学的根拠では無い、と言うことを認識しながらプロジェクトを進めないと、よくあるBad Caseのように、論文は完成したが、ビジネスはできなかった。理由は、まだまだエビデンスが足らないからだ〜!もっと更なる実験が必要だ〜!的な魔の循環モデルに入ってしまうこともありますよね。(よくあるPoC疲れもその1つかも)

ヘルスケア分野(メディカル分野を含まない)では、多くの企業が「産学連携の呪縛」に囚われてしまい、事業を開発することが、いつの間にか実験をしてより多く論文を発表することに精力を注いでしまうケースも多いです。これにベンチャー等がはまってしまうと大変で、10年たってもいまだにベンチャーやってます!と言う企業も珍しくありません。

「フィールド(暮らしの現場)実証において確立された科学的妥当性」について、エビデンスに変わる新しい単語が欲しいですね!!もっと実証というフェイズを真剣に考える必要があると思う今日この頃です。

臨床試験と実証試験との比較
考え方(私見ですが)
実証パターンの比較


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