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月からやって来たレプス君

こうして戯れ言を連打していると、視界のはしにウサギのキーホルダーが入ってくる。月の三日月部分からやってきたレプス君(レプスとは英語でうさぎ座の意味)。故鴨沢祐仁氏が生み出したキャラクターで、かなり前に河口湖の北原ミュージアムで購入した。

鴨沢氏は1952年岩手県北上市生まれ(妻と同郷だ)。岩手大学を中退し上京、1975年「ガロ」から「クシー君の発明」で漫画家デビューした。クシー君はレプス君の相方(というか本来は彼が主人公)で、多くの作品がこのコンビで成り立っている。その絵世界は、わたせせいぞうの「こじゃれた」作風とはまた違ったファンタジックな魅力で、プラザ合意前、80年代前半の「不思議、大好き」な空気を体現している気がする。

氏の絵は、当時の代表的サブカル誌「ビックリハウス」の表紙によって多くの人に記憶されていると思う。

ビックリハウス終刊号

名物編集長・高橋章子(初代編集長は萩原朔美)の「ビックリハウス」は、読者を巻き込むコンテンツの先駆けとしてバブル前夜を駆け抜け1985年終刊。この年のプラザ合意から、世の中は狂乱のバブルへ本格的に突入する。思うに投稿規定を逸脱した者を「緩く強く」戒める「ハジラ」というコーナーなど、この時代こそ学ぶべきと思われるものを多く内包しているように思える。糸井重里の「ヘンタイよいこ新聞」もここからだ。それにしても、レプス君とクシー君(一体いくつだ)はいつもタバコを手にしている。今やったら叩かれまくること必至だ。

鴨沢祐仁氏は、2008年自宅で急逝し数日後に遺体が発見されたという。アルコール障害を患っていたという話もある。「ガロ」に代表されるサブカル系の表現者は夭逝が多いとどこかの誰かが書いていたような。そうであろうがなかろうが、一人の死はあくまで一人の死だ。その個人的な死を悼めばいい。此岸からできるのはそれだけだ。

月からやって来たレプス君は、まだタバコをふかしてそしらぬ顔をしている。



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