見出し画像

これから「東北モノローグ」を読む。

今日から3月。草木が生い茂って「弥生」らしいが、新暦では4月あたりに該当するので春は名のみの風の寒さは当然なのだ。とはいえ城址公園の梅園はもう満開。青空にその容姿を誇っている(写真は2月28日)。

2月は夫婦揃って体調を崩してしまった。体調が悪いと本を読む気力も減退する。月も改まり、買ってあった「東北モノローグ」(いとうせいこう著)そろそろと読み始める。2021年から2023年、宮城・福島・岩手・山形そして東京で聞き取りをした「ひとりひとりの」声を採録したもの。あれから13年、忘れてはならないものは忘れないようにしたい。

あの日に起こったことは何だったのか、10年余の歳月を経て何が変わり何が変わらなかったのか、100人いれば100人の、100万人いれば100万人の想いがそこにある。文字を通してでもその幾ばくかに触れることは決して意味のないことではない。翻って言えば、そういう「小さな声」を素通りして喧伝される「復興」や「原発政策」の何て空しいことか。「左が右が」「男が女が」とレッテル貼りに忙しい方々の、時に舌鋒鋭いご高論が往々にして血の通わない唯我独尊に感じてしまうのも、そこに「ひと」がいないからかも知れない。当たり前だが「ひとりひとり」にはその数だけのグラデーションがある。まあこんなことを言っている奴は到底政治には向かない。

ところでいとうせいこうという人のキャラクターがけっこう好きだ。著作も数冊読んだだけ、TVなどで見かけるとちょっと気になってしまうという程度なのだが。ある人は小説家という認識、ある人にはラッパーはたまた「ベランダー」、ひょっとしたらみうらじゅんとよく一緒にいる仏像好きな人、近頃は朝ドラで鉢植えのサボテン持ってたけれど何の人?かも知れない。国境なき医師団に帯同したルポルタージュなども上梓している。マルチタレントと言ってしまうととたんにつまらなくなってしまうが、実はこんな人になりたいというのが学生の頃の夢だった(すぐに無理だと悟ったけれど)。旺盛な好奇心と知識・知見、風が吹けばどうして桶屋が儲かるかを真面目に、かつ不真面目に考えられる人。「右か左か」から物事を思考し始めない人。ソウイウヒトニワタシハナリタカッタ。

近頃本を読むペースが限りなく遅いのだが、3月11日までには300頁余りのこの本を読み終えよう。こういうモノローグは一気に読んではいけない。ただでさえ鈍いアタマなのだ。ひとつひとつの声を反芻しながらでなければ、そのグラデーションは浮かび上がってこない。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?