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「いい絵だな」それでいいのだ。

「芸術の秋」だそうで。そもそもなぜに秋は芸術かといったら1918年雑誌「新潮」で「美術の秋」というフレーズが使われたことに因るらしい。ところで今時、日常会話に「芸術」なんて言葉は出てこないが。ましてや「芸術の秋」なんてジョークでしか使わない。世に芸術と呼ばれるものは、いつも頭の中にあって、勝手に敷居を作られても困るのだ。

伊野孝行氏と南伸坊氏が、古今東西の絵画談義をする「いい絵だな」を読む。伊野孝行氏は少し新しい人(1971年生まれ)だが、南伸坊氏は20代だった80年代、数多いる「こんな私に誰がした」の一人である。読書感想文など書いてどうするという気がするので、章立てだけを。

第1章 海の向こうから来た写実
第2章 絵画と写真の間
第3章 俺たちの印象派
第4章 ヘタよりうまいものはなし
第5章 シュルレアリスムはまだ終わってない宣言
第6章 イラストって何?
第7章 現代美術のいただき方
第8章 服を脱ぎ捨て裸の目で見よう!

表紙と章立てで、本の湯加減が何となく伝わるのではないでしょうか。芸術とかいうものに「敷居」を感じている人がいたら、ぜひ浸かってみたらいかがかと思います。

生半可な知識がある人(そういう人って確かにけっこう良く知っていたりはするのです)というのは案外困りもので、どうにもペダンチックになりがちだ。それなりに知っているから、色々と引用はする、さりとて自分の五感には自信がないからその威を借りて偉そうに振る舞う。若気の至りは苦笑いで済むが、年寄りのソレは聞くに堪えない。「クラシックをBGMにする人は音楽をわかっていない、音楽をなめるな」という人までいる。そもそも「わかる」とはどういうことか皆の衆が「わかる」ように平たい言葉で語ってごらん。ゲージツ(篠原勝之か!)なんて、歳をとればとるほどワカラナくなる。ワカラナクなるから面白い。知識イコール造詣ではないのであります。

とはいえ、作品世界の知識を深めることは鑑賞の愉しさを何倍にも膨らませてくれることは間違いない。まず直感、そのうち疑問が生まれてきたらシメたもの。興味があったら四方八方から舐めてみる、不味いか美味いか決めるのは自分だけ。そして「これは嘗めてはかかれねえな」と思ったりするのであります。


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