こどもの義務教育に縛られず、家族で秋田に暮らす。小学校短期留学やってみる。
東京に出てきて20年がたつ。
大学、コンサルティング、広告業を経て起業したわけだが、その大半を都市のど真ん中で過ごしてきた。なんなら故郷・金沢もそこそこ都会だったので、人生の大半をアスファルトの上を歩きまわって暮らしてきたことになる。
唯一、次男が生まれてすぐに育休をとり韮崎あたりで1ヶ月間、鍋と1冊の料理本を持ち込んでゆっくり過ごしたことがあるが、それはかけがえのない豊かな時間だった。
その頃から、働く時間における東京の心地よさと、暮らしにおけるストレスが強いコントラストになって感じるようになっていた。
そして2021年、長男の思いつきから「庭」を探して逗子で暮らし始め、大都市と海を往復する毎日が始まり、それなりに調子良く生きている。
しかし、困ったことに人間のストレスは底なしだ。
義務教育は親の生き方のブレーキになっていないか?
子供はのびのび砂浜や野山で遊ぶ時間が増えて、いい感じではあるのだが、二人とも小学生になったことで、以前より親の行動範囲に制限がかかってしまったことに、次なるストレスを感じている。
これは僕だけの話ではなく、多くの家庭で再現性があるはずだ。
子供が義務教育に入る家庭は、親も働き盛り。スキルも板について、新しい挑戦を始めるには格好の時期。仕事人生における青春時代だと言っていいだろう。
でも学校があるから、かならず一箇所に定住する必要がある。多拠点居住や遊牧といった暮らしとはほど遠くなる。
義務教育が親の行動範囲をロックしてしまう鎖になっているのだ。
それは当たり前とされてきたし、別にそれで問題ないという親も多くいるが、一定数は僕と同じようにストレスを感じているのではないだろうか。
世界中もっとグルグル回りながら暮らしたい。
興味がそそられる方角へ移動しながら働きたい。
一度や二度、素朴な欲望を持った親も多くいるのではないだろうか。
都市では「子供の小学校入学のために引っ越す」という家庭も珍しくない。行かせたい学校の近くに家を構え直す。子供にとってとても幸せなことだし、子供をきっかけとして親の人生も変わるいいことだと思うが、とにかくそこに定住しなきゃいけないことに、僕はストレスを感じてしまう。
かくいう我が家も子供の教育に関心が高い方だけど、親もできるだけわがままに生きてたいと思って暮らしている。
雑に言えば、親の方が楽しくやってれば、子供はその背中を見てよろしく育ってくれるだろうという楽観。
子供のために親が我慢しすぎるのは、逆効果もあるんじゃないかと疑問視するタイプの教育観だ。(そういうと、妻からは「わたしめっちゃ我慢しとるやないかい」と言われそうだが、そこはまた別の機会に話題にあげるとして、蓋をさせてください・・)
親がすごしたいところに子供ごと移動して、身軽に留学させながら暮らせたらいいのに
だらだらと書いてしまったが、端的に言いたいことはこれだ。
そして2024年1月、これを実行に移してみる。
今日から3週間、秋田県に家族四人と犬一匹で暮らしはじめる。
五城目小学校の教育留学
義務教育による居住地の縛りを開放してくれるきっかけは、この制度。
数日から数週間程度でも子供の留学を受け入れてくれる。
期間が終わると、もといた学校に戻れる。
つまり、子供はその間に2度転校することになる。(※1/15追記後述)
これ、めちゃくちゃ大変なんじゃないか?と思われるが、実質は電話1本、書類2通で打診から確定まで、約3週間程度の準備期間で手続きは完了した。
五城目町教育委員会側にとっては、過去何件も実績があるためとてもスムーズに快く対応を進めてくれた。
一方、逗子の教育委員会にとっては、おそらく初めてのケースだったようだが、こちらも快く対応してくれ、クラスでは「送る会」まで開催してもらえた。先生や関係各所に感謝。
これによって、子供は3週間「欠席」あつかいにならず、教育を継続することができる。成績も2つの地域間で情報のやりとりがされるようだ。
着目すべきは「区域外就学制度」という既存の制度を活用しているので、実は何も新しいルールを作っていないという点だ。
行政や自治体が関わることでも、ルールメイクなしにゲームチェンジができるんだと、勇気がもらえる。
越える学校
五城目小学校は2021年に7つの小学校の統廃合によって新築された、最新の学校。
人口が少ないという特性に根ざして、小学生だけでなく地域住民も使える、開かれた学校だ。
もともと公園やスポーツ施設があった場所に校舎をつくったため、市民にとっても行きやすい場所になっている。
未来を託す子供達の教育のために、住民から意見をつのって校舎の機能が設計されている点も素敵だ。
教室にドアはなく、オープン。教壇も黒板前になく、先生の机は教室の外にはみ出している。そんな柔軟な教室でどんな学びが繰り広げられるか、楽しみだ。
ネオ集落 森山ビレッジ
ではなぜ秋田で暮らしたかったのか。
実は五城目町はシェアリングエコノミーの先端地区でもあり、数々の先鋭的な取り組みが進んでいる。
資本主義経済主導の社会から、社会関係資本を重視して共助や「コモンズ」の概念が成り立つのか、たのしく実証している町だ。
そこで暮らす友人が、シェアハウスの概念をアップデートした「ネオ集落」をつくったというのだから、そこで暮らしてみたくなったのだ。
建て方が新しい。
デジタル建築のプロ集団「VUILD」の技術で、秋田の里山からもってきた木材で建てる。
住まい方も新しい。
5世帯の長屋のような建築には、自宅として使っている世帯と、別宅として使っている人が共存しており、別宅の非稼働時間は地域の人や、地域外からの来訪者とシェアしていく仕組み。
森山ビレッジに住むきっかけを与えてくれた友人は、ウッシーこと丑田俊輔さん。古民家を引き継いで、シェアビレッジを立ち上げ、数千人のデジタル村民と新たなコミュニティの形を探ってきた第一人者としても有名だ。彼は欲にストレートで、好奇心の赴くままに、いろんなプロジェクトを立ち上げまくって全国を飛び回っている。自称、プロの遊び人だ。彼がいる五城目町にしばらく身を置くと、自分と家族の中にもまた新しい価値観が芽生える気がして、楽しみだ。
おまけ
ウッシーと出会って、なんでそんなに楽しそうなのかを掘り下げたPodcastがあるのでよかったら聞いてみてほしい。
快く送り出してくれたKonel・知財図鑑のメンバーにも感謝している。
3週間という限られた時間だけど、精一杯あそんで働こうと思う。
秋田と東京を行ったり来たりしながら、きっといいアイデアを量産するので、多めにみてもらえたら、これ幸い。
では、また逗子に転校したら振り返りを投稿するので、お楽しみに。
※現地情報は Xでつぶやきます。
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