マガジンのカバー画像

くらしのともしび

112
病とともに生きること
運営しているクリエイター

#旅の準備

とくべつな日まで

とくべつな日まで

大切なひととのお別れは

わたしに体のあることを

すっかり奇妙に思わせた

不自由になってゆく病は

わすれていた体のことを

めいっぱい思い出させた



いつか体を抜け出したら

心のままに飛びまわって

大切なひとにまた会おう

そのときまで自由な心を

とびきりきれいに磨いて

とくべつな日に備えよう

わたしならではの

わたしならではの

みんななにかを抱えていて

わたしはそれが病気だった

ってあるときふとおもって

それなら病気を与えられた

わたしだからできることは

ってかんがえはじめたとき

すこしこころが前をむいて

未来が明るくみえてきたよ

未来を信じる自由

未来を信じる自由

病のあるからだと
暗くなるこころの
不自由はわたしに
なにをなすだろう

いかなることをも
想いえがいていい
ひとに与えられた
えらぶことの自由

未知なるものから
明かされる調べが
信じるものにのみ
ささやく音なき音

からだとこころは
みずからを用いて
開かれた入り口を
わたしに指し示す

***

病に導かれた命へ

病に導かれた命へ

病があるからこうだという
わたしの思いを離れたとき

そう在るわたしそのものが
命のあらわれとして在った

足かせをはずせないという
わたしの思いこみを捨てて

わたしそのものを見たとき
病をこえた命が生きていた



なにもさえぎる柵はないと
わたしが気づいてはじめて

命はどこまでもつづく地を
みずからの足で踏みしめる

病にみちびかれたわたしの
命がようやく歩きだしたら

いつか自由に駆け

もっとみる