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優しく易しい医療情報は、どうやってつくる?届ける?③ けいゆう先生編

消化管外科医のけいゆう先生。ヤンデル先生の紹介では「京大卒イケメン外科医学術業績豊富若手研究者のホープイクメンSNS医療のカタチの大エース」!! Twitterの外科医けいゆう @keiyou30 として4万超フォロワー、Yahoo!ニュース個人オーサー、医療情報サイト「外科医の視点」で活躍しておられます。

YouTubeでも医療情報が検索される

かなり早い段階で医療者から情報発信が重要だと認識され、新聞への投稿からwebへと場を移し、「読まれる」記事の書き方からSEO対策まで網羅・駆使した情報発信を実践しておられる。一言ひとことに「どこにそんな時間が…」と思ってしまう私なのだが(このイベントで紹介される、あらゆる専門家たちがそうなんだけど)、持てる知力と情熱と使命感を惜しみなく使い、行動していおられる。そんなけいゆう先生の発言でガツンときたのがこの発言。

YouTubeでも医療情報を探している人が多い。また、検索ワードを見ると自分たち専門家だからこそ書かない、あるいはありえない組み合わせがある。たとえば「血便 ストレス」など、医療者では絶対に並べないキーワードで検索されている。それは、医師が見落としがちな、あるいは思い至らない患者や一般の人の考え・気持ちであり、そこに気づく機会にもなっている。

YouTubeで医療情報を探す!? ぜんぜん思い至らなかった。私にとってYouTubeは8割がロックバンドのライブとか音楽関係で、1.5割がと空耳アワーのアーカイブと映画情報その他で、残りが…そうだわ。健康情報だ。検索はめったにしないけど、TWにリンクしてあるストレッチとか筋トレとか、あれってどうやるんやったかいなとヨガのアーサナを調べたりしている。病気のことは調べたことがないのだけれど「○○について、説明します/紹介します」という健康情報は多い。

私はオールドタイプなのでYouTuberの番組など見ないけど、量産型のWeb記事
・今話題の○○病について調べてみました~いかがでしたか?

と同じテイストで作られている動画は少なくない。語り口やビジュアル、あるいは語り手自身の顔や声を聞くことで、入りやすさもある。テレビと違って、自分で検索し、選んで視聴している。だが、真偽のほどはわからないものが多いだろう。

アカン医療情報をバンバン通報するけいゆう先生

けいゆう先生は、これはアカンという動画(Twitterでも他のメディアでも)は、どんどん通報し、削除依頼を出されているという。WELQ騒動でgoogleが検索結果について大幅な改善をしたが、他でそういった動きはまだまだ難しいところだ。かといって、通報や削除依頼にスムーズに対応できているわけでもない。誰が・何をもって削除依頼をしているのか、緊急案件なのかということを精査は難しいことだろうし、そこにどれだけコストを注入できるか、注力する意義を見だすかどうかは、それぞれの媒体の姿勢に寄るしかない。

このノートの②で「情報チェック機関」を提案したけれど、エセ情報パトロールも必要だろう。少なくとも、けいゆう先生がそこに時間を割かれるのはもったいなすぎる。これもまた各メディア、プロバイダやSNS運営者と連携して、このパトロール隊から届いた通報は優先的に精査するというような取り決めができるとスムーズかもしれない。

厚生労働省の『医療機関ネットパトロール』

実は、医療情報についてのネットパトロールは厚生労働省が行っている。『医療機関ネットパトロール』だ。

「医療法における病院等の広告規制について」という施策の中で行われている取り組みである。嘘や大げさな広告についての規制を行っているので、エセ医療情報もここに通報していくのがいいのだろう。平成29(2017)年8月24日から実施されているが、私は全然知らなかった…。もったいない。
(事業については、こちらのPDF資料をご覧ください)

2018年3月31日時点での結果報告を見ると、ガン関連が4分の1を占めている。

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ただ、ここでは医療機関とそのウェブサイトに限定されているので、民間のエセ情報は通報できない。それから、TwitterやYouTubeも連携が確認できれば通報できるかもしれないが、クリニックのHPはまともだがTwitterでの発言がおかしい(しかも本名を名乗っていない)場合の通報など、やや手間を感じる。躊躇せずに通報!といっても、それがどんどん増えてしまったら厚労省の担当部署がパンクしてしまうだろう。

SNS上のエセ情報パトロールも必要

けいゆう先生のお話で上がっていたが、Yahooニュースのトップに掲載されたり、Twitterでバズったとしてもクリック率はなかなか上がらない。タイトルと前文くらいは読まれるかもしれないが、肝心の本文まで読み進められることは困難な上に、タイトルとその雰囲気だけがSNSを駆け巡る時代である。それが「正しい情報」であっても「間違った情報」でも、同じ速度と重さで駆け巡り、そして消える。あるいは、ちょっと着替えをして駆け巡る。読者・視聴者にはその違いはあまり関係なくなっていくのだ。どちらのSNS情報に影響されるか。どちらの言葉で病院の門をくぐるか、あるいは遠ざかるか。

もはや正しい/正しくないではなく、届く/届かないの問題なのだ。だから、正しい情報を、より届くようにしようというのが、けいゆう先生が提案し、実践することなのだ。と同時に、エセ情報をできるだけ届かないようにすることも重要で、やはりそれにはちゃんとしたスキルを持つ人が、信頼できるやり方で、責任をもってサステナブルに従事する仕組みが必要だろう。

医療者には想像がつかない「求められる情報」

そして、もう一つ大事な視点が「誰が情報を求めているのか」ということ。はっきり言えば「どんな人がエセ情報に惹かれるのか」ということだ。むろんリテラシーの問題もあるし、発信者の巧みさもある。だが、一番の理由は「不安」だ。不安の内容はけいゆう先生が指摘した「医療者では絶対に並べないキーワード」で知ることができる。当事者は藁をもすがる思いだ。その藁がネット上に、SNSにたくさんあるのだ。その中でより良い藁を求めてしまう。医療者は藁でなくちゃんとロープを提供しているのだが、当事者には同じ太さの藁に過ぎない。

どんな不安を持って、何を求めているのか。どんな藁がすがりつくのに良さげなのかという分析はすでになされている。しっかりしたロープを届きやすいところに用意することと同時に、空虚なニセモノの藁を除去していくことも早急に必要になっていると感じた。

これまでのnote
優しく易しい医療情報は、どうやってつくる?届ける?① SNS発信の医師4人集結のトークイベントから

優しく易しい医療情報は、どうやってつくる?届ける?② ヤンデル先生編にて

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