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北風のリュート

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「#創作大賞2024」の応募作品、『北風のリュート』をまとめました。
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#航空自衛官

【連載小説】「北風のリュート」第3話

前話 第3話:空を泳ぐもの(2)  海水浴に訪れたK海岸の岬にはアクアパークという水族館…

deko
5か月前
92

【連載小説】「北風のリュート」第4話

前話 第4話:見えないもの 【3月25日、航空自衛隊鏡原基地上空】   今日も曇ってるなあ、…

deko
5か月前
89

【連載小説】「北風のリュート」第8話

前話 第8話:奏でるもの(4) 「デブリが長引いて、お待たせしました」  深緑のつなぎ姿の…

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5か月前
80

【連載小説】「北風のリュート」第12話

前話 第12話:謎の増殖(2) 【4月23日 小羽田家】  あいかわらずの曇り空に夕陽がにじむ…

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5か月前
73

【連載小説】「北風のリュート」第16話

前話 第16話:糸口(3)  小羽田家は、県道を挟んで基地の東の住宅街のなかにあった。百坪…

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4か月前
64

【連載小説】「北風のリュート」第17話

前話 第17話:糸口(4) 「四日前に、空の魚がレイさんにコンタクトを取ってきました」  向…

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4か月前
70

【連載小説】「北風のリュート」第18話

前話 第18話:糸口(5) 「結婚式の前日に母に呼ばれてね。座敷に桐の箱が一つ置かれてたの」  美沙の実家は岡崎にあるという。 「庭のハナミズキが満開で、空に捧げられた薄紅の花束のようだったわ」  記憶をたどるように美沙は目を閉じる。 「桐箱には、銀に光る弦楽器が一棹入っていて。娘が生まれたら必ず嫁入りのときに持たせなさいといわれた。もらったのは、それだけ。他には何もなかったはず」  美沙は静かに目を開けた。流斗は美沙から目を離さずに聞いていた。 「龍秘伝なんて巻物、渡され

【連載小説】「北風のリュート」第19話

前話 第19話:糸口(6) 【5月1日 岡崎/鏡原】  朝から岡崎の祖母宅に出かけていた娘のレ…

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4か月前
71

【連載小説】「北風のリュート」第20話

前話 第20話:糸口(7) 「ざっとそんな感じです」  流斗が岡崎での顛末を話してくれた。 …

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4か月前
64

【連載小説】「北風のリュート」第21話

前話 第21話:糸口(8) 【5月5日 北堂家】  曾祖母の北堂家は、鏡原本郷にあった。  小羽…

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4か月前
68

【連載小説】「北風のリュート」第22話

前話 第22話:赤の正体(1) 【5月20日 鏡原基地】  事態は別方面から動いた。  デブリが…

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4か月前
68

【連載小説】「北風のリュート」第23話

前話 第23話:赤の正体(2) 【5月25日 鏡原基地】  赤い異物をうまく採取できるだろうか…

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4か月前
74

【連載小説】「北風のリュート」第24話

前話 第24話:赤の正体(3)  赤い異物の正体は、無数の鱗のようなものの集合体だった。  …

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4か月前
70

【連載小説】「北風のリュート」第26話

前話 第26話:散らばる異変(2) 【6月1日深夜 鏡原中央病院】  もう限界だ。  鏡原中央病院で看護師三年目の朝倉凪は、疲労が錘のように貼りついた体を引きずり夜の病棟廊下をふらつくように歩く。ダウンライトが凪の小柄な影を薄暗いリノリウムの床に引き伸ばす。ナースステーションの明かりが誘蛾灯のようだ。  ピーポー、ピーポー。  まただ。サイレンが川向うから漣のように近づいて来る。  また呼吸困難での搬送だろうか。  連日ひっきりなしに運び込まれる。昼過ぎに到着した救急車が患