平和とは。(#シロクマ文芸部)
「平和とは……、清純な処女みたいなもんさ」
腰に提げたステンレスのスキットルの蓋を歯でこじ開け、干からびた喉にバーボンを流し込む。苦い酔いを噛みしめる。なんでそんなことが口をついたのか、たちまち後悔が滲む。錆びた風が粉塵を巻きあげる。
「処女……ですか」
アッシュがまだそばかすの残る丸い鼻をふくらませる。四十過ぎのおっさんが何を言ってるとでも思っているのだろう、若者特有のしらけた侮蔑を口もとに微かに漂わせる。世界のことをまだ何ひとつ知らないのに、もうすべてをわかっている気