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読書日記~『よみがえる変態』星野源著

いつも行く美容院は大型商業施設の中にある。同じ階に本屋さんがあり、毎回どうしても寄ってしまう。そして買ってしまう。そんな本。

星野源といえば、去年の紅白。寒そうなビルの屋上で、高そうな(余計)コートを着て、自曲を楽しそうにイキイキと歌っていた。躍動していたその姿を思い出す。


読み始めて

買ってしばらくしてから読み出したが、「エッ?何これ?」と立ち止まる。改めて、本のタイトルを見る。
『よみがえる変態』


そうやんか、「変態」だ。
読み始めるまで、その言葉に気を止めなかったのである。「エロい」話も何気なくすーっと出てくる。この話は後で。

星野源


1981年生まれ。音楽家、俳優、文筆家。
2016年、音楽家として、シングル『恋』で大ヒットを記録。俳優として、ドラマ、映画の数々に出演。大河ドラマ『いだてん』「逃げるは恥だが役に立つ』など。賞もたくさんもらっている。

大活躍である。天才かもしれない。
文筆家としても優れているのは、この本を読めばわかる。星野源の仕事や日常生活、自分の思いを素直に赤裸々に描き、よどみない文章で読ませる。表現力、素晴らしいと思う。


ものつくり地獄

星野源はセルフプロデュースする。詞も曲も作る。編曲もする。
星野源は妥協しない。
満足いくまでやり抜く。「一生後悔するから」スタッフから嫌われようと。

レコーディングの日になっても歌詞ができない。スタッフを待たせて詞を書く。
星野源は妥協しない。
ものづくり地獄である。

毎回ストレスとプレッシャーで押しつぶされながらも笑顔でゲロ吐きながら作ってる。「楽し辛い」感じがしてぴったりである。

P45より引用

自分が面白いと思ったことを満足いくまで探りながら、できるだけたくさんの人に聴いてもらうように努力する。それが我が地獄における真っ当な
生きる道だ。生きるとは自分の限界を超え続けることであり、生きるとは、死ぬまで諦めないことである。

P46より引用

こんなふうに、たくさん引用したくなる言葉が並んでいるのだもの。
星野源のストイックさと文章の両方に、「すごい」と思った。


くも膜下出血

これだけ頑張って頑張って、睡眠時間削って神経削って仕事をしていたら、そりゃあ、病気になるって。くも膜下になった経緯、入院、再発、手術、その後など、赤裸々に書いてくれている。

詳しいことは知らなかった。やはり大変だったんだね。辛かったね。良かったね、完治して。


「寂しさ」と岡本太郎

「寂しさ」について書いている。
気になった。

海の底に一人でいるような、後ろヵらひたひたと自分の影の中から背中を通って体を包むような、そんな寂しさ。

P103より引用

彼のそんな「寂しさ」はどこから来るのだろう。この後、「寂しさとは性格であり、チャームポイントだ」とも言っている。否定ばかりではない。

ここで私は、岡本太郎の「孤独」を思い浮かべた。岡本太郎は、「人間がいちばん人間的なのは、孤独であるときなんだ」と言った。(『自分の中に孤独を抱け』岡本太郎著より)

才能ある者が自分の思いや信念を貫き通す、そこに、「寂しさ」や「孤独」があるのではないか、と私は思う。

星野源はきっと岡本太郎に共鳴する。
(その両者とも、しっかり理解していないのにスミマセン)

変態

そして、「変態」である。ここを書かないと終わらないので許してほしい。自慰とかAVとか「エロい」話が堂々と書かれている。

しかもこれは、女性向けファッション誌『GINZA』に連載していた「銀座鉄道(ぎんざてつどう)の夜」という、紛らわしいタイトルのエッセイをまとめたもの。女性誌だ。

でも、こんなのは、実は当たり前のこと(のよう)で、「そうなんだ!」と納得した。
本人に言わせると、

あまり自分の中に「話の種類」に垣根がないだけなんだと思います。感動の逸話も、セックスの面白体験談も、どちらも平等に興味があるというだけです。

「単行本あとがき」より引用

この、「垣根がない」というのが、よくわかった。ひとりの人間として、普通に自然に生きているというだけだ。

そっか!ここで、気がついた。変態=(イコール)エロいではないのだ!
そうだよね。

文中にもあった。
「変態であること、それすなわち普通の人間である証明なのだと思います」と。
私も「変態」かも。

最後に

雑誌に連載されていたのが、2011~2013年。つまり、星野源が30歳。文庫本になったのが38歳。

自分がなりたいと思う姿を追いかけながら理想とかけ離れている自分を追い込み続けた

「(当時の自分は)今の自分と違うところが多い」と書いている。別人の人生のようだ、今はずいぶん幸せだ、と。

あの頃は「世の中もっと良くなる」と希望を抱えていた。今は「どうにもならない」と絶望がある。しかし、「あの頃の自分が死ぬほど頑張ったからいまの自分が居る」(文庫化に際してのあとがきより)

やはり、自分というものを深く見つめている。だからこそ、こんな文章が書けるのだね。
ああ、私はもう何回も、星野源を「書くライバル」として、この文章を書いている。悔しいが。

最後に、もう一つ星野源の言葉を紹介して終わりにしたい。

世間を面白くするには、世間を面白くしようとするのではなく、ただ自分が面白いと思うことを黙々とやっていくしかないのだと。

文庫化に際してのあとがきより引用

「日本変態協会」の会長はタモリさん。星野源は会員に認められたらしい。

           ********

星野源というと、明るい笑顔を思い浮かべます。今は無茶していないと思うけど、身体には気をつけて、ますます活躍していただきたいです。
睡眠が大事ですよ!


*ヘッダーお借りしました。ギターが弾けるようになりたい。

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