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「52ヘルツのクジラたち」を読みました

 いま、本は読み出したら最後まで読みたくなる。時間はたっぷりある。
というわけで、町田そのこ著「52ヘルツのクジラたち」を読み終わりました。
 感想を書いておきます。書かないと忘れちゃう。

 例によって内容に触れます。これから読む人は読まないでくださいね。

 この本は本屋さん(紀伊國屋)をブラブラして見つけました。
本屋大賞第1位だったし、話題になっていたし。

 今気がつきましたが、私の本のチョイス傾向は「話題の本」だな。
これ、装丁もきれいなんですよ。惹かれますね。

まず感じたこと

 読み終わっての感想。
「うーん、いい話なんだけど、ちょっと切ない。突っ込みどころもたくさん」と思いました。

 「52ヘルツのクジラ」というのは、他のクジラは聞き取れない周波数を出す。そのため仲間に届かない孤独のクジラ。
 そんな「クジラたち」が登場する。誰にも自分の声が届かないんだよ。

でも、そんなクジラの声を聞こうとする仲間はいる。

「助けて」と呼べば、必ずその声を聞いてくれる人。
そうすると、絶対に孤独ではない。



良かったところ

 この本が良かったなと思うところ。
一つ目:筋書き(話の流れ)がとてもよくできていると思いました。

 何か事が起こっているのだけど、なにがあったのか。その詳細は初めの方では描かれない。

話の流れの中で、明らかになっていく。1つずつ。
その筋立てが素晴らしいと思いました。

ふたつ目:登場人物が目に浮かびます。主人公も、影を抱えているけど魅力がある。特に女性としての。

みっつ目:現代の抱える社会問題を取り上げています。考えさせられます。孤独について。虐待について。L〇〇〇について・・・ここが一番ショックだった。「あ!」と思った。私はこの本について、裏表紙に書いてあることくらいしか知らないで読んでいますから。(ここはいくらネタバレと言っても、これから読む人のために〇〇にしておきます)

 

よっつ目:救いがある。悲しいことも起こったけどこれから未来がある。未来はちょっとだけ明るい。

 

うーんと思ったところ

「うーん」と頭を抱えたこと。
 一つ目。悲しいことが起こる。切ない。悲しい。私(キナコ)の生きてきた過去も壮絶。

 キナコが少年にクジラの声の話をするところ。

「どんなに遠く離れたところにいても、自分に向けられた思いを感じるってすごいよね。でもね、そういうしあわせに巡り合えない子も・・・」

P64より引用

 小説なので問題提起が目的ではないと思います。でもかなり厳しく書いています。これが書かれたのが2020年。L〇〇〇については今なら少しは社会に理解されてきていると思うのですが、どうでしょうか。実際にはまだまだなのでしょうね。
 虐待のほうは、深刻です。今日もニュースでやっていました。かすかな声が届きますように。そして声を聴かなければならない。 


 二つ目。少しハードボイルド(?)なところがある。最初の3行で出てきますから。
 三つ目。いや、それってどうなん?と思うところがいくつか。それをやってもいいのかな。確かにひどいやつなんだけど、一方的に悪役にしていませんか?・・・小説だから良いんか。
 四つ目。ビール飲み過ぎ。いやいや良いんです。小説なんですから。



 

最後に 「52ヘルツでも」

まとめです。

 「52ヘルツのクジラ」とはとても印象に残る象徴(イメージ)ですね。声の届かない孤独。「52ヘルツのクジラ。世界で一番孤独だと言われているクジラ。その声は広大な海で確かに響いているのに、受け止める仲間はどこにもいない」

 でも、たとえ周波数が違っても、受け止めてくれる人はいるんだよ。


 広大な海で、大きな声で話したり、手をつないだりはしないけど、かすかにでも自分に向けられた声を聞いたり、反対にかすかな声でもちゃんと受け止めてくれる仲間がいるよ、必ず。「だから絶望はしないで」と思った。


 これを書きながら、この話の持っているイメージの優しさ柔らかさを感じました。書いたから気がついた。

いま、私はそのイメージの海にたゆたっています。

 (そ、細かいことはいいのだ)



 映画化が決まっているそうです。
私、映画の原作本買う傾向もあり? 

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