読書日記「そして、バトンは渡された」
作品名「そして、バトンは渡された」
著者:瀬尾まいこ
出版:2018年 文藝春秋
優子には5人の父と母がいる。その全員に愛され、全員を愛していた。
その設定の複雑さに、初めはミステリーかSFかと思った。でも、現実(作品の中で)の話だった。
感想。
優子が、その名前の通りに優しい。ただ優しいのではない。高校の先生が言っていたように、父や母が変われば子どもの時や思春期なら何かありそうだが、それがない。いろいろと気を遣ったり逡巡するが、自然体でとっても素直だ。だからこそ、この物語が成立している。
親たちも、誰も悪くはない。悪い人は出てこない。その時々で人生を選んでいる。物語の設定からして現実的ではないところもあるけど、ちょっと変わっている人もいるけど、みな魅力的だ。優子のことを「そんなに?」と思うほど大事にしている。
結局、バトンってなんだったのだろうと思う。家族とはなんだろうと思う。優子には、家族がいる。それは血が繋がっていてもいなくても関係ない。離れたりくっついたりするけど、どこかで繋がっている。
優子を想う心が、バトンとなって渡されていったのだ。渡すときが幸せなのは、未来を想うことができるから。
その人を想う心をバトンというなら、私もたぶん、そんなふうにバトンを渡されてきて、今ここにいるのだと思う。読み違いかもしれないけど。そう考えてもいいんじゃないかと思う。
過去と現在が交互にあわられる構成が読ませる。
付け足したいのが、食事のこと。相手のことを思って作る食事やデザートが美味しそうだった。ちょっと食べ過ぎだろ?と思ったけど、その時々で何かを象徴していて、(たぶん、幸せ)大きな役割を果たしていた。それと音楽。中島みゆきの「麦の唄」私も好き。
最後のシーンは泣けた。
書評ではみんな、すごーく感激したって。それほどではないけど、読み終わって、ちょっとホワッとした。
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