小林秀雄と「禅」はなじみ深い
『私の人生観』という講演会の課題を与えられた小林秀雄は、そこに含まれる「観」という言葉から連想するものやことを連ねて話を進めていく。はじめは「人生観」という言葉の由来や成り立ちを近代の西洋思想の翻訳語を考え、次に語感からわが国における仏教思想を思い浮かべる。まずは7年間の能楽鑑賞で、その美に触れた『当麻』の中将姫とも結びつく、浄土教の重要な経典である『観無量寿経』について語る。
次に小林秀雄は、お釈迦様が菩提樹の下でさとりをひらいたとされる哲学的な観法である「禅観」の「観」