見出し画像

食を通じたサステナビリティへの取り組み:「スーパーマーケット・トレードショー2024」参加レポート

公益財団法人流通経済研究所
研究員 田嶋 元一

 2024年2月16日(金)――昨日までの暖かさは今何処?と言わんばかりの2月らしい冷たい風が吹きつけます。そんな寒さの中、幕張メッセにて開催されている「スーパーマーケット・トレードショー2024」へと足を運びました。


スーパーマーケット・トレードショーとは?

海浜幕張駅から幕張メッセまでの道中

 スーパーマーケット・トレードショーとは、その名の通りスーパーマーケットを中心として、食品流通業界にその時々の最新情報を発信すると同時に、トレードショーを標榜していることから、製品の見本を展示し、各種企業の商談の入口たる場としての意味も有しています。国内外から各種関連企業・団体が一堂に集結し、幕張メッセ全館がこの展示会で埋め尽くされます。食に関する展示会としてはまさに国内最大級です。

*なお、会場内では同時に「デリカテッセントレードショー2024」「こだわり食品フェア2024」も本イベントの一部として開催されていました。

ご当地名産品が大集結

 最初にHALL9~11の地方・地域産品エリアから見学を始めました。筆者は都内各所に点在するアンテナショップめぐりが趣味のひとつでもありますが、日本各地のご当地名産品・特産品が一堂に集結していて、この会場は見回っているだけでとても楽しい気分になってしまいます。「こんなものまでこの県の名産品だったのか!」「最近では伝統的な名産品もこんな進化を遂げているのか!」等々、楽しみながらも教養的学びに資する部分がありました。

地方・地域産品エリアの様子

 様々な都道府県のブースがある中で、岡山県はかわいいピンクの色で目を引きました。岡山県の有名な特産品の1つに白桃が挙げられようかと思います。まさに桃を想起するかわいらしいブースでした。

桃をイメージした岡山県のブース

食品業界のサステナビリティ

 次いで、HALL1~8に場所を移します。このエリアでは食品そのものはもちろん、店舗開発や販促に関わる機材、食品生産設備や資材なども展示されていて、実際にその担当者様からお話を聞くことができます。
 一研究員として、食品製造業・卸売業、あるいは食品小売業等々の産業に関連する最新動向は「見て、学ぶ」ことが肝要です。時間の許す限り広大な幕張メッセを行脚して、多くの事業者様から製品に関する説明を頂き、ディスカッションをさせていただくなど、非常に有意義な時間を過ごしました。
 私は普段、「流通・店頭・環境部門」という部署の一員として業務にあたっていて、環境≒サステナビリティという枠組みのうち「食品ロス」に関連する業務を担当しています。ここでは、「サステナビリティ」に関する展示ブースについてご紹介したいと思います。
 
 食品ロス削減に向けての取り組みを推進する事業者は年々増加しており、新たな技術やサービスが生み出されつつありますが、やはりそうした取り組みの重要性が人々に理解されること、そのうえで一人でも多くの人が日々の生活の中でそうした取り組みに貢献できることが重要でしょう。写真はそうした取り組みを行うある事業者様のブースです。
 食品ロス削減と訴えかけるにも、まずもって見た目がかわいらしいため、親しみを持ちやすく、見た人はそれを取っ掛かりに食品ロス問題への関心を抱くかもしれません。食品ロス削減の新しいアピール方法として、まずはカタチから!このデザイン、とても良いのではないかと思いました。

食品ロス削減の新しいアピール方法が紹介されていました

 最近、横浜の関内駅で賞味期限内でありながらも売れ残ってしまい、廃棄されゆくパンをロッカー型自動販売機で購入できる取り組みが行われており、連日非常に大盛況というニュースを見ました。
 こちらもまたまたかわいい収納ロッカーのような自販機は、まさにそうした商品と消費者をつなぐ重要な役割を担っています。この自販機は新宿駅の新南口側に設置され、運用がなされているそうです。
 多くの人々が行き交う殺伐としたターミナル駅に、こんなかわいい自販機があると思わず足を止めてしまうのではないでしょうか。私も、新宿駅に行く機会があれば、ぜひ探してみたいと思います。読者の皆様も発見したら、ぜひ使ってみてください!

自動販売機の設置例

所感

 食品関連事業者におけるサステナビリティの取り組みの重要性を痛感している者として、こうした展示/ブースが多くの人の目に留まり、食を通じたサステナビリティに対する更なる興味・関心、あるいはその重要性の理解が進んでいけば、と思っています。
 SDGsを筆頭にサステナビリティの重要性が社会的に大きなトピックになっているのは決して今に始まったことではありません。一方で、その推進が食品関連業界の中で進展しているかと言われれば、自信をもって首を縦に振ることはできていない現状があるのも事実です。
 今後、ますますサステナビリティに配慮した事業経営を企業は求められることになるでしょう。しかし、そこで大事な視点は、それをコストとして捉えるのではなく、また社会貢献の一環として捉えるのでもなく、むしろ企業における成長戦略の重要な要素と見なすことにあるのではないでしょうか。
 スーパーマーケット・トレードショーは大盛況で、多くの人で溢れていました。それに比例するかの如く、我々が真剣に向き合い解決すべき課題、そのヒントやアイデアもたくさん溢れていた素晴らしい展示会でした。


2024年2月に当研究所が主催した「流通大会2024」では、流通業のサステナビリティ成長戦略をテーマに、ウエルシアホールディングス、ロッテ、イオンのご担当者様よりご講演いただきました。弊所からは独自調査の結果をご報告しています。

サマリーはこちら👇