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【基礎ゼミレポート】ラ・ボエシ『自発的隷従論』#03 ルソーはラ・ボエシを読んでいたのか?【ソトのガクエン】

みなさん、こんにちは。
2023年6月20日(火)の基礎ゼミレポートです。

今回は、『自発的隷従論』「民衆は隷従を甘受している」(21頁)から読み進めました。内容としては前回から引き続き、いかに民衆が弱弱しい支配者に自ら服従しているのかということが語られる部分です。

一点興味深い箇所としては兄弟愛の議論があります。「神のしもべで人間の支配者たる自然」は、わたしたち人間を、まるで同じ鋳型から作られたように、似たものとして作った。それは、お互いを兄弟として認識するため、また、お互いがお互いのなかに自らを見出し、兄弟のように自分の考えを分かり合うようになるためである。「みなを仲間とした自然が、だれかを隷従の地位に定めたなどという考えが」生じてはならないとラ・ボエシは主張します。

この箇所はまるで、私たち人間は自然状態において、同胞が苦しむのを見ることを生得的に嫌悪するという、ルソーの「あわれみの情」のようで、所々、ルソーはラ・ボエシの『自発的隷従論』を読んでいたのでは?と思われる箇所が見られます。そこで色々調べていると、宮下志朗先生の文章を見つけました。

こちらの記事によると、ルソーが読んだ可能性のあるモンテーニュ※『エセー』は、
①1725年版のピエール・コスト版だが『自発的隷従論』の収録無し
②1724年版全6巻には収録予定であったものの、検閲で発禁となり全巻刊行には至らず。
③1727年コスト版第5巻に『自発的隷従論』収録、ルソーはこれを1735年に購入。
④20世紀終わりに古書市場で発見されたルソーの書き込みのある『エセー』は1652年パリで出版された。こちらには、ラ・ボエシのテクストは収録なし。

どうもルソーは、『エセー』のいくつかの版を手にしており、③も手元に置いていたものの、ラ・ボエシへの言及はなし。 結局はよく分からないという結論とのことでした。

次回は、6月27日(火)22時より、『自発的隷従論』(ちくま学芸文庫)27頁「動物も自由を求める」から読んでいきましょう。

※モンテーニュはラ・ボエシの親友で、ラ・ボエシの死後『自発的隷従論』の草稿を預かっていた人物でもあります。彼は、ラ・ボエシの著書が政治的扇動をする本として読まれることを避けるため、出版することをあえて避けていました。


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