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(7/25)「偽の観念と夢を見ているのはほとんと変わらない、では何が違うのか?」〜スピノザ『知性改善論』ゼミ(@ソトのガクエン)レポート#11

みなさま、こんにちは。ソトのガクエンの小林です。

7月25日(木)は、佐々木さんのスピノザ『知性改善論』ゼミ、7月最終日でした。今回は、講談社学術文庫版、58ページの第66節(B66=A40)から読み始めました。

今回読んだ箇所で論じられていたのは「偽なる観念」についてです。スピノザは、これまで議論されてきた「仮構された観念」と同じように、いかにして偽なる諸知得に陥らないようにするか、私たちの偽なる観念を改善するかということを論じています。

まず、初めから大いに悩まされたのが下記の部分です。
偽なる観念と仮構された観念とのあいだの相違は、(どちらも仮構ではあるが前者は)「仮構を行っている場合にはそれらのことがらがそのひとの外部にあるものどもに由来していないと推断できる原因が〔偽なる観念をもつひとには〕まったく提供されないことーーーこれは目を開けたまま、言うならば目覚めていながら夢を見ているのとほとんどことならない」(58)。

この部分の解釈をめぐり、佐々木さんと参加者の方々とのあいだで、ああではないか、こうではないかという様々な意見が交わされました。その場で一義的な結論が出なかったので、ここでは、あくまでも小林個人の理解・解釈を書いておきます。

スピノザは直前の注でこう書いています。目覚めている人々には感官によって原因が提供され、彼らが現に思い浮かべていることがら(表象)が、目下自分の外に位置するものに由来しているのではないと推断するのに対して、夢の中では諸原因が提供されないという違いがある。すなわち、覚醒時と夢の違いはこうなります。

  • 覚醒時の認識(表象の原因が提供されている/表象は外部の原因に由来しないという推断あり)

  • 夢の中の認識(表象の原因が提供されていない/表象は外部の原因に由来しないという推断無し)

これと、冒頭の部分、仮構された観念と偽なる観念のあいだの相違は、偽なる観念の場合、「仮構を行っている場合にはそれらのことがらがそのひとの外部にあるものどもに由来していないと推断できる原因が〔偽なる観念をもつひとには〕まったく提供されないことーーーこれは目を開けたまま、言うならば目覚めていながら夢を見ているのとほとんどことならない」(58)と言われています。これを先ほどと同様の形で並べると、

  • 偽なる観念(表象の原因が提供されていない/表象は外部の原因に由来しないという推断あり?)

偽なる観念の場合は、夢と同様に、表象の原因が提供されていないけれど、当人は、覚醒時と同様に、自身の表象は外部の原因に由来しないと推断している、ということになるでしょうか(あくまでも小林の解釈です。)スピノザは、夢を見ているのと偽なる観念を持つことはほとんど同じであると言っていますが、ほとんど同じであるということは、何か決定的な違いがあるわけで、それが何なのかが問題となります。一般的に考えれば、夢と偽なる観念の違いは、「目覚めることが可能である」かどうかにあるように思いますがどうでしょう。いずれにしても興味深いのは、この偽なる観念を持つこと(誤謬)があまりに顕著な場合は錯乱と呼ばれると言いつつ、スピノザは、偽なる観念を持つこと自体は、私たちの日常的によくあることだと考えている節がある点だと佐々木さんは言われていました。

このように、偽なる観念をめぐって、一同かなり悩みましたが、一旦切り上げ、この後、第71節まで読み進めることができました。


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この部分を含め、内容としては、偽なる観念についても仮構の観念と同じ仕方で改善できるということなので、それほど難解な内容ではないのですが、佐々木さん曰く、『エチカ』の内容と明かにバッティングする箇所が散見されるなど、どうもこのあたりから、スピノザの論述が若干怪しくなってきている(結局、『知性改善論』は未完のまま終わります)ような感じがするとのことでした。

さて、5月からスタートしました、スピノザ『知性改善論』ゼミも、8月がラストです。次回は、8月1日(木)22時からです
ここでしか体験できない古典の読解体験にぜひご参加ください!

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