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(6/27)「仮構できる、仮構できないのはどういう場合か」〜スピノザ『知性改善論』ゼミ(@ソトのガクエン)レポート#7

こんにちは、ソトのガクエンの小林です。

先日行われました、スピノザ『知性改善論』ゼミのレポートです。今回は、講談社学術文庫43ページの「方法の第一部ー真の観念と他の諸知得の区別」から読み始めました。内容をダイジェスト的にまとめておきます。

[B50=A33] 偽なる観念、仮構された観念ならびに疑わしい観念を真の観念と混同しないことが必要。
[B51] ここでは、知得の本質を説明しようとしてはいないので(これは哲学にぞくする)、方法が要求するものとして、仮構された観念にかんする考察からはじめよう。
[B52] あらゆる知得は、実在すると考えられたものについてか、あるいは本質のみについてのものであり、仮構は実在すると考えられたものにかかわる際に頻繁に生じる。
[B53] 私が不可能なものと呼ぶのは、それが実在するとされる場合にその本性が矛盾を含むことになるもの、必然的と呼ぶのは、それが実在しないとされる場合にその本性が矛盾を含むことになるもの、可能的と呼ぶのは、その実在がその本性においては、そのものが実在しようと実在しまいと矛盾を含まないものである。そのため、その実在が外的な原因に依存している当のものの必然性あるいは不可能性が私たちに知られていたなら、この実在についても何ら仮構できなかったであろう。
[B54] よって、神の本性を知ったあとでは、神を実在するものとしてあるいは実在しないものとして仮構することもできない。
※デカルトの『省察』には、神は完全な実体であり、「存在しない」は不完全を表す観念であるため、神の観念には含まれない。よって、神は存在するという論証があります。スピノザの場合は、神の本性を知れば「実在しない」どころか「実在するもの」としても仮構することができないという点に違いがあるように思われます。
[B55] 或るものの本質と他のものの本質のあいだにある差異は、そのものの現実性あるいは実在と他のものの現実性あるいは実在のあいだにある差異と同一である。実在が〔本質〔真の観念〕ではなく〕より一般的に概念されるほど、それだけ実在は混然とした仕方で概念され、仮構されうる。
[B56] 仮構されていると言われるが、その通りではないことを私たちが明晰に知解していることがらの例として、私が「地球は半球であって、半分に切られて小皿に置かれたオレンジのようなものだ」と誰かに言う場合が挙げられる。
※おそらく、誰もが仮構されていることを知っており、事態が仮構されている通りではないことを知っている場合、このとき、一体何が生じているのかをスピノザは問うているかと思います。
〔しかし、日の出入り、船が東西南北海の向こうへ消えていくこと(等でしょうか?)を考えると〕これは不可能であることを私は知っているので、地球の実在について仮構することができない。ならば、ここで私がしているのは、私がかつて図らずも犯した誤り、はまり得た誤りを記憶に呼び戻し、相手もそこにはまり込みうると仮構すること、あるいはそう見立てること以外ではない。ここから、不可能性と必然性を見ない限り仮構することができることが分かる(逆に、不可能性か必然性のいずれかを知解していた場合は仮構できない)。


今回は、最後の第56節の解釈に、佐々木さんも参加者の皆様もなかなか悩まされました(こちらのノートに記載したのは小林個人の解釈です)。
また、今回も、参加者の方々が積極的に質問され、それに答える形で進められました。仮構するとは何か? 仮構と虚構はどう違うのか?(訳は違うが同じとのことでした)、本質(essence)と本性(nature)の違いは何か? 真と偽は善と悪に対応しているのか?(スピノザにおいては対応していないし、自然には善も悪も、美も醜もないとのことでした)等々。


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次回は、7月4日(木)です。次回、7月初回は、佐々木さんがこれまでの議論のまとめを紹介、参加者の方々からの質問に答える時間を設ける予定です。ぜひこれを機にご参加いただけますと幸いです。

詳細&お申し込みはホームページ、Peatixをご覧ください。
・HP https://www.dehors-org.com/koten-spinoza

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