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日本発、世界へ。Jiteraが見据える生成AIの可能性とグローバル展開

「ソフトウェア開発の次の時代を創る」をミッションに掲げ、2017年に設立されたJitera。生成AIを活用したソフトウェア開発自動化プラットフォーム「JITERA」の開発やソフトウェア開発支援等をおこなっています。

社員の外国人比率は80%を超えるなど、グローバル展開にも注力するJiteraの目指す世界観や今後の展開について、代表の栁澤直さんにインタビューしました。

<プロフィール>
株式会社Jitera 代表取締役CEO
栁澤 直(Nao Yanagizawa)
1994年生まれ。慶應義塾大学在学中にソフトウェア開発企業を設立。大型のIPOやM&Aを果たした急成長中のスタートアップを中心に開発業務に従事する。新卒でリクルートホールディングスに入社しSUUMOの開発を担当。2017年に株式会社Jiteraを設立。急成長中のスタートアップ、IPO前後、売上高1,000億円など幅広いフェーズのプロダクト開発を経験する中でコーディング効率化の着想を得て、開発自動化プラットフォーム「JITERA」を開発。「Forbes 30 Under 30 Asia 2024」では「Enterprise Technology」部門にて選出。

受託会社ではなくスタートアップとして社会に挑むことを決め、調達を実施

──DEEPCOREとの最初の出会いは、起業から5年後の2022年にリード投資家として調達に参加したことでしたね。これに至るまでの経緯をお聞かせください。

栁澤:私は元々ソフトエンジニアのフリーランスとして働いたり、開発会社の立ち上げを経験したり、リクルートのSUUMOで1,000億円規模のプロダクト開発に携わったりしてきました。リクルートを辞めた後も、IPO前後のスタートアップや東証一部上場企業など様々な規模の企業でプロダクト開発を経験し、2017年に株式会社Jiteraを立ち上げました。当時は受託開発がメインでしたね。

受託事業は順調だったのですが、今の事業に辿り着く転換期となったのは2020年頃にノーコード・ローコードという概念が注目を集め始め、その領域のスタートアップが急成長していたことです。日本にはエンジニア出身の起業家がまだ少なく、私の経験が活かせる面白いマーケットだと感じ、「スタートアップ」として企業を成長させていこうと決めました。そこから受託事業に加え自社プロダクトの開発の2軸で事業を展開しています。

──それで投資を受けることになったのですね。

栁澤:スタートアップは会社や事業を100倍、1,000倍の規模にいかに早く成長させていけるかを試されています。投資を受けることでスピード感を持ってミッションを追求していきたい、中小企業の社長ではなく、スタートアップとして大きく急成長させる挑戦をすることに意義とやりがいを感じて決めました。投資を受けたことでようやく起業家としての道を歩み始めた自覚があります。

自身の志向性に加えてテクノロジー分野にも大きな変化がありましたが、「ソフトウェア開発の次の時代を作る」という会社のミッションは今もブレていませんし、新しいやり方を追求する姿勢は変わっていません。それゆえ、ChatGPTの台頭によるマーケットの変化もいち早く感知し、生成AIの活用に大きく舵を切りました。ミッションに向かう姿勢があるからこそ、変化を取り入れていきたいです。

代表取締役CEO 栁澤直(写真左)、取締役COO 沼田洋太(写真右)

──DEEPCOREとの出会いは何か変化を起こしましたか?

栁澤:まず、DEEPCOREからの出資を受けたのは代表の仁木さんがグローバルに勝負をしてきた経歴やスケールの大きさに惹かれたからです。今担当いただいている三宅さんもグローバルなコネクションが強く、海外の優秀な人材やVC、銀行を紹介いただいたりしています。こういった出来事もあり、もともと関心の強かったグローバル展開をさらに強く目指すようになったと感じています。

実は、当社社員の外国人比率は80%を超えているんです。外国のメンバーと仕事をすることで目線が自然とグローバルに向かいました。

日本の未来のためにも、本気でグローバル展開を目指す

──では今後はグローバル展開を強化していくのですね。

栁澤:はい、グローバル市場への進出を強化していきます。エンジニア×グローバル×起業家という組み合わせは国内外で希少です。この立ち位置でまずアメリカのマーケットを取れれば、他の市場にも進出しやすくなります。私たちのプロダクトドメインであるソフトウェア開発はローカライゼーションがほぼ必要ないというのは強みになってくると思いますし、最近出展した国内の展示会で大きな反響もありました。

これまでは日本マーケット向けに受託開発とプロダクト開発を並行して行ってきましたが、9月からは海外マーケットに向けたプロダクトを正式にローンチし、その販売を本格化させたいと考えています。すでに顧客もおり、売上も順調に伸びています。

──生成AIは日々変化が激しい領域です。グローバル展開をするにあたって、何を参考にどのような目線でマーケットを見ていますか?

栁澤:以前アンドリーセン・ホロウィッツというアメリカのVCで生成AI関連に投資をするサティッシュ氏とディスカッションする機会をいただきました。Jiteraのプロダクトに対するサティッシュ氏の反応は興味深く、ベンチマークとして非常に参考になりました。また、トロントで開催された北米最大級のテックカンファレンス「コリジョン」でシリコンバレーのVCにピッチを行った際も、彼らの生成AIに対する反応を通じて、業界全体の進捗状況や自分たちが今どのような立ち位置にいるのかを確認することができ、大きな学びになりました。

また、私たちが「100億円規模でIPOするのが目標だ」と話しても、アメリカの投資家から見れば「それで?」という反応になります。これは、日本とアメリカの市場規模や影響力の違いを実感させられる部分ですし、東京や日本全体がアメリカから見ると小さな市場に見えるという現実を認識することができました。
もっと身近な目線でいえば、アメリカはランチのパスタが4,500円もするし、サンフランシスコでは年収2,000万円以下の人がフードスタンプ(低所得者向け食料購入補助制度)をもらう状況であるのです。このような現実を踏まえると、円安の影響を考慮したり、外貨を稼ぐ重要性が一層感じられますし、日本が貿易赤字を抱えているいま、トヨタのような企業が生まれない限り厳しい状況が続くと思われます。

アメリカにはY Combinatorやセコイア・キャピタルのような起業家の強力なコミュニティがありますが、日本にはまだそれがありません。ディスアドバンテージを持った上で、向こうのハーバードやスタンフォード出身の超天才たちと競争する必要があります。そのような中でスタートアップがグローバル展開を目指すのは困難な道ではありますが、日本の未来にとって非常に重要なのです。

生成AIの成長はインターネット黎明期とリンクする

──生成AIの領域が今後どう拡大していくか、どのような予測を立てていますか?

栁澤:現在注目しているのは、生成AIがインターネットバブルと同じ規模になるのか、それ以上の規模になるのかという点です。1994年にネットスケープがモザイクを作り、インターネットが爆発的に普及し、Microsoft Windows 95が生まれました。2000年頃にインターネットバブルが弾けましたが、その時のトップテクノロジー企業はIBMやインテル、マイクロソフト、シスコでした。しかし、最終的にはサービスを提供するGAFAが勝者となりました。

そして現在、2022年11月にChatGPTがローンチされてから1年半ほどが経ち、NVIDIAの売上が倍増しています。これはかつてのインテルに似た成長パターンです。NVIDIAのGPUリソースを使って、オープンAIのような企業が成長することが予想されます。今後は、生成AI版のGoogleやAmazonが出てくると考えています。この領域はマーケットが非常に大きく、セールス、開発、カスタマーサポート、マーケティングの4つの市場において、生成AIの活用が進むでしょう。このマーケットにインパクトを出せるスタートアップはすでに生まれているか、もうすぐ生まれると思っていますし、私たちもその一員となりたいという思いが強いです。

──なるほど。大変興味深いです。そうした生成AI市場の進化を追いながら、今後の成長のために会社として大事にしていることはなんでしょうか?

栁澤:私たちが大事にしているのは、「グローバルで使われるソフトウェア開発のデファクトスタンダードを作る」という最終ゴールを変えないことです。例えば、日本国内市場に特化し、SaaSマーケットや生成AIを活用した開発ベンダーとして活動すれば、確実に儲かり、ユニコーン企業になることも可能だと思います。数百億円規模のIPOを達成することは素晴らしい経営成果ですが、目指しているゴールに対して十分なインパクトはありません。

私たちは、生成AIの時代においてソフトウェア開発の領域でマーケットのリーダーになりたい。この目標をぶらさず、日本からグローバルで勝負していきます。そのためにも、直近は国内を任せられるマネジメントレイヤーの採用が非常に重要だなと思っています。生成AIの進化をインターネット時代の変わり目と同じくらい大きなものだと感じられる方と、その可能性を共有し、一緒に変化を楽しみながら仕事がしていきたいですね。

──ありがとうございました!

■会社概要
会社名:株式会社Jitera(英文名: Jitera Inc.)
設立日:2017年8月21日
コーポレートサイト:https://jitera.com/ja

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