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利用者目線の映画レビュー チャットゾーン

今回は映画レビューをしてみたいと思います。
当noteはアダルトチャットを中心に様々な発信をしていますので、チャットにまつわる映画を取り上げます!

チャットゾーン
監督 今野恭成
脚本 村川康敏 ※脚本監修
能塚裕喜
野渡駿
出演者 鈴木まりや
牧田哲也
折井あゆみ
りん
長井秀和
主題歌 AstoLights
「アルタイル」
製作会社 ライバーサポートグループ
配給 パル企画
公開 2017年4月3日


いままで存在は知っていましたが、なんというか……、あまりに面白くなさそうだったので観る気はなかったんですよね。noteも始めたことだし、せっかくだしと鑑賞。

よくある売り出し中のアイドルを主演に据えた映画ですね。元AKB48の鈴木まりやさんが主人公のチャットレディを演じています。
一週間限定のレイトショーにて公開され、おそらくアイドルファンを中心に鑑賞されたようです。映画サイトのレビューはほとんどが鈴木まりやさんのファンレビューです。

監督は今野恭成という方。フィルモグラフィでは新人女優主演のホラー作品などを監督されています。今作も同じような雇われ仕事なのでしょう。

製作にチャットサービスを提供するライバーサポートグループが入っています。タイトルは同社サービスが運営するチャットゾーンというサイトに由来。
あとであらすじでざっくりと説明するところですが、この映画、いわば公式が製作した映画にもかかわらず、作品の根幹がれっきとした規約違反なんですよね(笑)
チャット嬢と利用者の出会い
というのが全面展開します。いいのかよ!ライバーサポートグループよ!

ちなみに本記事ネタバレありです。


◎あらすじ

主人公は都内のアパレルにつとめる森(鈴木まりや)。彼女はNYでの海外留学の夢を叶えるため、アパレルでの仕事の傍ら深夜にチャットレディとしての仕事をしています。
森にはチャットで気になっている存在のトレントさんなる利用者がいます。彼は脱いで要求などもせず(少なくとも劇中では)、泰子の社内のコンペのためのプレゼン資料の添削なんかをしてくれています。そんなトレントさんにすっかりお熱の泰子。自分の資料の添削のためにお金使ってくれる奇特な人はいいカモでしかないもんなあ。
ついには会ってみたいと言い出し、都内で待ち合わせをするも待ちぼうけをくらい、すっかり意気消沈。

そんな中、彼女の勤めるお店に本部から専務の早川(牧田哲也)が赴任してきます。彼は売り上げ至上主義をかかげて、店の人間と衝突するような人間です。泰子もすっかり「ヤなやつヤなやつ!」状態。
彼はまた彼女の社内コンペへの参加をするようにしつこく、彼女が諦めたと言ってもしつこく提出するように言ってくるのです。康子と早川との溝は深まるばかり。
ところが彼は急逝した前社長の息子であり、そのプレッシャーから実績に追われており、いやいやながらファストファッションを推していたことがわかり、泰子も心を開いていきます。

そんな中、トレントさんとのチャットも再開。
泰子はある疑念の確認のために、再度トレントさんに会ってくれるに頼みます……。


というのがあらまし。
まあ数十分も見ればだいたいわかる、というか、宣伝を見ればわかるくらいなんですが、この早川という専務がトレントをやってるんですね(とは言えちょっとしたツイストがある)。
以下本格的にがっつりネタバレをしますので、この映画をどうしてもネタバレなしで見たかったのに!という奇特な人は注意してください。


◎映画としての評価

さて、本作なんですが、映画として見てまあ酷いもんです。
面白くはないです。アイドルファンだけが満足する内容でしょう。
いい加減な脚本、ところどころ底の抜けた登場人物の倫理観、サンプル音源のようなピアノ劇伴、平板な演技、なんの意図も感じない演出。

ただ映画としての評論はほかの人に置いておいて(誰もしないという問題はあるけど)、わたしとしてはアダルトチャットの利用者としてレビューします。

ちなみに唯一映画評論家の柳下毅一郎さんが取り上げている記事のみ見つかっています。
さすが、日本の底辺の映画を浚うような評論活動をする柳下さんです(笑)



◎チャット利用者としての評価

冒頭。
チャットレディの仕事の舞台は都内のマンションの一室のような場所。
廊下に枝分かれするように扉付きの個別の部屋へ、次々と女の子たちが入っていきます。女の子たちが服を選び、メイクをしています。

ちょっとわからないのは、どうにも住み込み?のように仕事をやっているように見える点。チャットをやっている女の子同士で朝ごはんを食べたり、案外距離が近い。こんなことあるか?聞いたことないぞ。ここは謎でした。


でも「ほお~、こんなところでやってるんだ!」という点はけっこうおもしろく、なかなかわくわくさせるオープニングです。
女の子が見るPCの画面の表示なども面白い。
個人的に笑ったのは、2ショットの相互カメラチャットをしているとき、男をうつす画面表示の下に、ぼかしというボタンがあったこと(笑)
キモい男がうつってきたときにぼかされちゃうことがあるんですね(笑)あれは知らなかった!

オープニングからすぐ主人公の話に入ってしまうのですが、個人的にはライブチャットサービスについての仕事紹介パートのようなのがあるとよかったとおもいます。
わたしみたいなライブチャット浸りは問題なく呑み込めるサービスですが、普通の人はライブチャットなんか知らないでしょう。
お仕事映画としてもある程度成立すれば、もっと間口が広がる気がします。

なにせ仕事中のチャット嬢はちょっとしか映らないんですよね。あれだとなにが面白いのかよくわからない。もちろんアダルトもなし。もしかしたら主演がアイドルである以上アダルトは完全NGだったのかもしれませんし、アダルトなイメージを打ち出したくないという製作の意向だったのかもしれません。
少なくともわたしからすると、ぜんぜん面白くなさそうだなあと思っちゃう(笑)

そして主人公もひどい(笑)
すぐに会おうとするのもひどいんですが、仕事に対してもどうにもやる気がないような。アダルトはもちろんなし。この女の子の魅力はなんなのだろう?と少なくとも観客にはわからない。まあこのアイドルのファンにはすっかり自明なのかもしれませんが……
トレントさんとのやりとりも、チャットでお金を貰っているくせにパワポの指導を受けてるし、あげく途中に寝てしまいます(笑)
こいつのどこがいいんだ!

でもって、トレントさんもひどい。
泰子はすっかりトレントさんにぞっこんなわけですが、どうして好きになったのかさっぱりわからない。終始敬語で、落ち着いているといえば言葉はいいですが、面白くない堅物です。ややずれた返答が文字情報でそっけなく返ってくるのみのトレントさん。
こいつのどこがいいんだ!

後半、再度トレントさんに会いに行く展開で衝撃に事実が判明します。
待ち合わせ場所に現れたのはやはり専務の早川。ところが早川は、実はトレントは元は会社の社長がやっており、死に際にアカウントを譲り受け泰子をサポートするように伝えたのだそう。

えええ???

気持ち悪い!という泰子。
まったくもってその通り!気持ち悪すぎる!!

自分の会社の社員がこっそりやってる夜の副業を社長とその息子が代々監視していたわけでしょう?これ気持ち悪い以外のなんなんだ??
描き方によっちゃあ余裕でホラーになるような奇行です。
自分の息子にチャットのアカウントを引き継がせるというのも常人には思いつかない発想で、突飛な展開があればいいってもんでもないよ!
それでもラストにはなんやかんや結ばれて、幹線道路の脇で呑気にチューしてました。
めでたしめでたし。やれやれ。



◎まとめ

・映画としては全然ダメ
・お仕事の裏側モノとしては弱い
・チャットレディも利用者も魅力的じゃない
・まっとうな倫理観は鑑賞の邪魔になる

といったところでしょうか。
まあ、少なくともわたしみたいな人間はこの映画のターゲットじゃないんでしょうね。

最後に、この映画で述べられていたチャット三原則を引用しましょう。

誘われても会わない
会おうと誘わない
絶対に会わない

ま、主人公は速攻破ってるんですけどね(笑)


チャットレディと2人付き合った経験から、
こんな記事も書いています。
16000字、無料で2500字くらい読めますのでどうぞ。


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