夢を叶えた五人のサムライ成功小説【川端雄平編】14
この作品は過去に書き上げた長編自己啓発成功ギャグ小説です。
見事に大役を務めた雄平を皆が祝福する。
いざ、演奏が始まるや否や本来の調子でアップダウンストロークを繰り返し、手際よくリズミカルにコード進行も叶い、何の問題もなかった。
雄平自身、満足感と達成感に胸踊らされていた。
高ぶる気持ちは抑えきれずにいた。
由里が真っ先に雄平に声を掛けた。
『さすがだね、雄平。やはり囚われていては駄目だってことね』
『なんだよ、それ。意味ありげだね』
『口がすべっちゃった』
『何か隠しているな・・・』
二人の会話を邪魔するかのように、手枕昌平やセンチュリー吉田、ナンセンス南と高枝切子、万田小百合が揃いも揃って駆けつけて雄平を胴上げした。
こいつらはどうやら胴上げをするのが趣味らしい。
やがて柴田が至近距離にやってきた。
『柴田さん、どういうことですか?』
『知りたいか?』
『はい』
柴田は葉巻を取り出した。
雄平にチャッカマンを放り投げ、点火させた。
『お前は歌よりギターに才能がある』
『・・・』
『ギタリストになれ。ギタリストとしてなら今すぐでもプロに通用するだろう』
『どういうことですか?』
『同じ川を泳がずに違う川を泳げってことさ。つまりは歌い手より、ギタリストのがお前は成功するってことだ』
そう言ったあと、柴田は付け足すように言葉を口に出した。
『そのポストは用意してやる。音楽が好きなんだろう。才能が発揮できるギターで音楽の世界に飛び込めばいい』
『柴田さん』
雄平は感動のあまり、声が胸につかえて出なかった。
それでも渾身の力を振り絞って言葉で伝えた。
『どうしてそこまで俺のことを思ってくれるのですか?』
『しつこいな。最初に言っただろ。夢を夢で終わる哀れな連中を夢で終わらせたくはないのさ』
『それだけじゃないような・・・』
『才能の欠片と努力の継続、腐らない諦めない気持ち、覚悟の決意がある人間だけ、サポートしてやるのさ』
雄平はただただ頭を深く下げた。
『ただひとつだけ、条件がある』
『ま・・・まさか』
『まさか・・・どうした?』
『その条件は柴田さんの葉巻の火付け役じゃ・・・』
『馬鹿、そうではない。条件は林の専属ギタリストとして取り組んでもらう』
雄平はそれでも構わないと今は思っていた。
ギタリストとして活躍し、やがては歌い手としてもやっていけたならそうしようと胸に強く想いを刻み込んだ。
『お願いします。引き受けます。やらせてください』
雄平は二つ返事でOKした。
喜ぶ由里の瞳から大粒の涙が溢れ出した。
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