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中編純愛小説【好きを伝えきれなくて】

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#人生

中編純愛小説【好きを伝えきれなくて】5

この作品は過去に書き上げた中編純愛小説です。

明るいムードのなか、愛が絶賛するかのように舌鼓をしたあと、突然、声を張り上げた。

『ここのスープ、美味しい。麺もこしがあって歯触りも最高』

麺をずるずると口にそそる。

かなり味覚があったのか、黙々と食べ続ける愛を見て、涼はひとり、今はまだ告白は控えておこう、この関係を失わないようにしようと唇を噛み締めた。

愛は僕のことをどう思っているのだろう

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中編純愛小説【好きを伝えきれなくて】1

過去に書いた中編純愛小説です。


樹齢百年以上だろうか・・・。

随分と昔からこの場所に立っている気がしてならない。

麻倉涼は桜の木に背もたれしながら、木々の枝先の切れ間から射し込む太陽の光を顔に浴びながら、ぼんやりと空を眺めていた。

透き通るコバルトブルーが様々な形状をなす白い雲を際立てている。

涼は大きく深呼吸をした。

そっと瞼を閉じて幾度となく繰り返したのち、視線を少し落とした。

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