見出し画像

デレラの読書録:千葉雅也『現代思想入門』


『現代思想入門』
千葉雅也,2022年,講談社現代新書

かつてないほど平明達意に現代思想について書かれた本。

コツを知りたければこれだけ読めばいいとさえ思う。

とはいえ、描かれているコツは本格的である。

それは、複雑なことを高解像度で理解するために、二項対立を意識してダブルで考えるということ。

現代思想を代表してデリダ・ドゥルーズ・フーコーが呼び出される。

彼らは二項対立を脱構築する思想を展開していた。

脱構築とは何か。

ようは、二項対立は必ず片側が優勢に設定されていることを指摘し、当の二項対立の前提となるもう一段高い視座を提示することだ。

彼らが脱構築するのは彼ら以前の思想である。

現代思想以前の萌芽としてニーチェ・フロイト・マルクスが呼び出される。

彼らは、秩序の外部にある非理性的なものを発見していた。

ニーチェなら、アポロン的なものに対してデュオニュソス的なものを、フロイトなら無意識を、マルクスは労働力を発見していた。

これらは、秩序ではなく秩序の外部(下部)にある蠢く力だ。

秩序の外部にあるもの、その蠢く力。

それはカントが物自体として表現し、ラカンが現実界=捉えられないもの=対象aとして指し示していた。

ここからどう距離を取るか(一段高い視座に上がるか)というのが現代思想家たちの脱構築的な思索である。

ようは否定神学批判という視点がニーチェ・フロイト・マルクスからデリダ・ドゥルーズ・フーコーへの変遷の根底に流れている。

秩序と秩序の外部という二項対立、そしてその外部を対象aとして否定神学化しないために、ダブルで考える。

外部を追い求めて、対象a=否定神学化すると、当の「外部」には永久に追いつけないだけで終わってしまう。

そうではなく、仮固定して、一旦秩序化する。

仮固定とは何か。

それは、固定する秩序に変化可能性があることを担保する、ということだ。

固定するけど、変わるかもしれないよ、という意味で、仮の固定なのである。

秩序と秩序の外部をダブルで考える(秩序は仮固定に過ぎないと考える)ことが、複雑なことを単純化せずにそのまま思考するためのコツである。

秩序が生成変化するということ。

この記事が参加している募集

#読書感想文

189,023件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?