迷惑亭

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アジアを放浪中です。見た映画や小説の感想を書きます。だいたいネットフリックスかアマゾンプライムです。筆力を鍛えるために1,000字以上を目指します。良ければ読んでください。

最近の記事

「私たちがインディアンだと思っていた人々」展/韓国•国立中央博物館

ソウル市ヨンサン区にある国立中央博物館に行ってきました。「우리가 인디언으로 알던 사람들 /私たちがインディアンだと思っていた人々」展を見た報告と感想を綴らせていただきます。2024年10月9日までの特別展なので、訪韓予定のある方はお早めに。 入り口すぐ、スキーの板のようなものが展示してあった。説明文を見ると、子供のゆりかごだった。子供をここに入れて馬に繋いだり、持ち運ぶという。布で体に括り付ければいいものを、わざわざ一つ作るのにでも骨が折れそうなゆりかごで子供を守る。子

    • 市民運動に大事なのは「楽しさ」ではなく、「意義を信じられているかどうか」だと思う。

      どうすれば日本の市民運動が盛り上がるのか、悩みに悩んでいた。 日本の集会やデモを見渡せば学生・青年が少なく、30-50代の中年層がぽっかりと抜け落ちている。単純に同世代の運動家が少ないのは寂しい。そして、使い回しの言葉と自己紹介ばかりで内部への問題提起もない「予定調和」な各運動団体のスピーチ。集会を締める(※締まっていない)覇気のない全体コール。一本調子で前回から工夫をした痕跡の感じられないデモコール。 このどれもに、ずっと、ムシャクシャしていた。なぜもっと一回一回にエネ

      • 2021年総裁選に見る、自民党員ですら総理大臣を選べない究極の茶番劇

        時代は「誰」を求めるか? いま世間を賑わせている今年の自民党総裁戦のキャッチコピーである。よくこんなに白々しい言葉を使えたものだ。 〈日本には民主主義がない〉という市民の嘆きをよく聞くが、そもそも間接民主主義や三権分立ですら成立しているとは言えない、はるか手前の政治制度になっていると思う。 小学生の時に社会の授業で、日本は国会議員の投票で総理大臣が選出されるから「立法権」と「行政権」の距離が近いと教えられた。思えばこの時から、日本の選挙制度に対する不信感が生まれた気がす

        • 【活動家必見!】台湾旅行で行くべき歴史・政治スポット(台北編)

          (まだ執筆途中ですが、もうすぐ台湾に行くであろう方もいると思うので現段階で公開します。また後ほど加筆していきます。良い旅をお祈りしています。) ★台北で絶対行くべき!…なところ★ 二二八国家記念館 蒋介石が行った白色テロ(独立運動家や知識人の大量虐殺)の歴史が学べる。説明文もそこまで多くなくスッキリとしていて見やすい。展示の見せ方も工夫がされている。 ※一展示ごとにQRコードがあり、スマホで読み取れば音声案内が聞けて内容をざっくりと理解できるようになっているが、館内のWi

        「私たちがインディアンだと思っていた人々」展/韓国•国立中央博物館

        • 市民運動に大事なのは「楽しさ」ではなく、「意義を信じられているかどうか」だと思う。

        • 2021年総裁選に見る、自民党員ですら総理大臣を選べない究極の茶番劇

        • 【活動家必見!】台湾旅行で行くべき歴史・政治スポット(台北編)

          サピエンス全史が与える人類史観の背骨、また「マクロ視点」の不在という日本の課題

          「サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福/ユヴァル・ノア・ハラリ」 読了! 積ん読になっていたのを旅の友に連れ出して、タイ→フィリピン→韓国→香港→台湾と読み続けてきました。とても刺激的で、それでいて読みやすいのですがなんだかんだ時間がかかってしまいました。今日やっと読み切りました。 まず、この本を旅の中で読むことができてほんとうに良かったと思います。大きな流れとして人類の進化史と未来について考えることができ、地理的なだけではなく時間的な感覚でも世界をマクロに捉えて考える

          サピエンス全史が与える人類史観の背骨、また「マクロ視点」の不在という日本の課題

          【台湾の赤ひげ】貧困者の治療に生涯を捧げた清水照子

          現在、台北(タイペイ)からこの記事を書いている。今回は台湾を旅する中で知り感銘を受けた、ある日本人の方を紹介したいと思う。 その方は、施照子(シー•ジャオツー)さんという女性だ。帰化される前の日本名は、清水照子さん。以下に彼女の生涯をまとめた。 清水照子は1910年、京都市の下京区で生まれた。家庭は父親が和紙問屋を営んでいて裕福だった。二条女学校を卒業した後、夫となる施乾と出会う。台湾総督府の商工課に勤務していた施乾は、台北市内の貧困層の調査をしていく中で、生活困窮者や不治

          【台湾の赤ひげ】貧困者の治療に生涯を捧げた清水照子

          斎藤幸平の「オリンピックをボイコット」は正しいが、少しだけ違和感。

          NEWS23での斎藤幸平氏のコメントが話題になっています。 「スポーツウォッシュに加担したくない。」「ロシアは出場できないのに、国際司法裁判所も違法としているイスラエルが参加している。みんながオリンピックよかったね!ってなるとパレスチナの人が忘れられたことになるので抵抗している」 いつもオモシロ批評か薄口コメントでお茶を濁している割には今回は頑張ったな、という印象です。ただ、「ダブルスタンダード」という指摘には少しモヤっときました。ほんとうに重箱の隅をつつきたいわけではない

          斎藤幸平の「オリンピックをボイコット」は正しいが、少しだけ違和感。

          韓国ドラマ「旋風」に見る言葉の力と独特の政治文化

          いま話題のNetflix制作の韓国ドラマ、「旋風」を見始めました。 相変わらず、韓国で作られた政治を扱った作品はレベルの高さを感じます。権力闘争やミステリーを絡めてはいるものの、観客に媚を売るような小手先の工夫はなく、ハードな政治モノにしつつも圧倒的な駆け引きの面白さでもって視聴者を惹きつけてきます。 まだ一話しか見ていませんが、印象的だったセリフを紹介します。 「政治は算数じゃない。数学よ。 変数もあるし、未知数だってあるの」 しびれますね。残念ながらこれは、主人公

          韓国ドラマ「旋風」に見る言葉の力と独特の政治文化

          夏目漱石の「こころ」は小説としての構成が終わっている。

          高校生の時にはじめて読んだ「こころ」を、久しぶりにフィリピンで読んだ。海外放浪中でやることがなかったので、小説に飢えて、スマホに青空文庫のアプリをインストールした。昔の旅人は日本から持ってきた本を読み終えたら、旅先で出会った人と交換していたらしい。自分が全く手も出さなかった山岳小説や詩集なんかを偶然手にするのを想像すると、新しい世界が開けるようでロマンを感じる。いまではスマホを持っていればKindleで新著も読めるし、青空文庫のアプリを入れれば古典の名著も楽しめる。交換する必

          夏目漱石の「こころ」は小説としての構成が終わっている。

          「銀の匙」で日本語の美しさを堪能する。

          今まで読んできた小説の中で、一番表現が美しいと思ったのは、中勘助の「銀の匙」です。 この小説は日本文学の名作で、僕が憧れてやまない地元兵庫県のエリート学校「灘中学」の教材として使われたことでも有名です。灘中学・高校は今となっては東京の開成高校と肩を並べる日本屈指のエリート学校ですが、まだ「関西の進学校」程度の存在だったころ、ある国語教師が教材としてこの本を使いました。彼は一般の教科書は使わず、中学3年間をかけて「銀の匙」一冊を徹底して熟読するという前代未聞の授業を行ったので

          「銀の匙」で日本語の美しさを堪能する。

          「白夜行」東野圭吾/圧倒的な構成力!しかしここでも東野は実力を出し切らない

          ずっと家にあった一冊だ。東野の本はいくつか読んできたが、この本は読んだことがなかった。トリックだけのミステリー小説のくせして気取ったようなタイトルをつけているのが気に入らなかった。 この本と、バンコクのバックパッカー宿で再会した。にわかに小説を読みたくなり、手に取った。せっかく海外にいるのに…と言われかねないだろうから、もう少し本当のところを話すと、旅のペース感を掴むのに本を読むのはちょうど良いと思ったからだ。高校生の時、東北・北海道を一人旅をした。せっかく旅してるんだから

          「白夜行」東野圭吾/圧倒的な構成力!しかしここでも東野は実力を出し切らない

          映画「TOVE:トーベ」/ただの恋愛映画

          ムーミンの作者として有名なトーベ・ヤンソンの人生を描いた本作。 トーベは風刺画家としても有名で、独裁者を痛烈に批判し、戦争に反対し続けた。 そんなトーベの生き様が見られると思い、Amazonプライムで再生したものの、画面を流れるのはトーベの恋愛模様のみ。 とある既婚者の女性に強烈に惹かれて、彼女よりも前に出会っていた男性と結婚して忘れようとするも、忘れられない…みたいな。 なんじゃそりゃ。 この映画の監督は何を考えて、トーベの物語を作ろうと思ったのか。 トーベである必要が全く

          映画「TOVE:トーベ」/ただの恋愛映画

          【小説「本心」】/平野啓一郎は活動家を描くことから逃げない。

          「本心」平野啓一郎 【ストーリー】 母を亡くし天涯孤独になった青年が、VF(バーチャルフィギュア)という技術を使って仮想空間で母親を復元し、その本心を知ろうとする。さまざまな人と出会い、亡き母の実像に迫ろうとする中で、自分のこれからの生き方を見つめ直していく。 【おすすめポイント】 前作「マチネの終わりに」「ある男」でも感じたが、平野啓一郎の小説には一本の話の軸の中に、さまざまな社会問題が巧く盛り込まれている。「マチネの終わりに」ではラブストーリーでありながら、中東地域の

          【小説「本心」】/平野啓一郎は活動家を描くことから逃げない。

          【映画感想】ラスト・エンペラー/皇帝の孤独

          「ラストエンペラー 」 昔テレビで放送されていたのを録画していた。 先日、やっと見ることができた。 清朝最後の皇帝・溥儀(ふぎ)の生涯を描いた壮大な歴史大作であり、坂本龍一が音楽を手掛けたことでも知られている歴史スペクトラム大作。 溥儀の幼少期からの孤独と、皇帝の座に居続けようとするエゴイズムが丁寧に描き出されていた。 紫禁城では皇帝として崇められながらも、実質的には袁世凱が中国の皇帝となり、溥儀の権力は紫禁城の中に限定されたものだった。城外へ出ることは許されず、軟禁状態

          【映画感想】ラスト・エンペラー/皇帝の孤独

          映画「時計じかけのオレンジ」/狂気が足らない!

          映画「時計じかけのオレンジ」 強盗・強姦・ホームレス狩りなど、やりたい放題のかぎりを尽くす荒くれ者軍団のリーダーが捕まり、刑期の大幅な短縮を条件に新しい治療の被験者となる。 (以下、感想)(若干のネタバレあります) 名作と言われてるので、一回見てみようと思ってチャレンジしたが、はじめの理解不能な導入で断念していた。 ところが先日、短い漫画で名作映画を紹介するTwitter上のアカウントで本作の紹介があり、それなりに面白そうなストーリーだったので再チャレンジすること

          映画「時計じかけのオレンジ」/狂気が足らない!

          《映画感想》Netflix配信「ロ・ギワン」/ マフィアいらない…

          Netflix配信映画「ロ・ギワン」 ※あまり好意的な感想ではないです。 ベルギーに流れ着いた天涯孤独な脱北者の男性と、心に傷を負ってベルギーで生きる韓国人の女性が出会い、お互いを支え合いながら生きていく。 現在、Netflixの映画部門で1位となっている。 イマイチでした。 まず、主人公ギワンと出会い恋に落ちる女性マリの設定がしっくりこなかった。 マリはマフィアに借金をしており、その返済のために地下の違法賭博場で射撃対決をさせられている。集中力を高めるドーピングのため

          《映画感想》Netflix配信「ロ・ギワン」/ マフィアいらない…