「私たちがインディアンだと思っていた人々」展/韓国•国立中央博物館
ソウル市ヨンサン区にある国立中央博物館に行ってきました。「우리가 인디언으로 알던 사람들
/私たちがインディアンだと思っていた人々」展を見た報告と感想を綴らせていただきます。2024年10月9日までの特別展なので、訪韓予定のある方はお早めに。
入り口すぐ、スキーの板のようなものが展示してあった。説明文を見ると、子供のゆりかごだった。子供をここに入れて馬に繋いだり、持ち運ぶという。布で体に括り付ければいいものを、わざわざ一つ作るのにでも骨が折れそうなゆりかごで子供を守る。子供のことを大事な構成員の一員として捉える先住民たちの眼差しが感じ取れる。
北米インディアンの移住用住居をティピー(Tipi)という。彼らは自然の循環を表現するために、複数のティピーを円形に配置した。丸い床は大地を象徴し、中央のポールが大地と空を繋いでいる。 個々の家族のティピーは、より大きな円の一部だ。円を繋いでいる形は、先住民族の家族同士の関係を象徴するものでもある。 この住居の形は、人と自然、過去と未来が交流する世界観を反映している。布には狩猟や踊りの様子が描かれていて、彼らのアイデンティティを表現している。
彼らは季節の変わり目やバイソンの群れを追って移動するので、ティピーを素早く設置•撤去しなければいけない。ティピーの模型は少女たちに家の建て方を教える優れた教材となっている。サイズは小さいが実際の形にとても近い。実物も模型も、どちらも150年ほど前に作られたものだ。
プエブロ族は「カチーナ」という精霊を信仰していて、この寂しそうで愛おしい生き物は道化の「コシャレ」という。自分の折れた角(耳?)を修理するために針に糸を通している。集中して、足の指を組んでいるのがとても人間らしい。
今回の展示の中で、私に最も鮮烈な印象を残した絵が下のものだ。先住民の男性が太陽の光に目を細めて立っている。私には、朝目を覚まして冷えた体に熱を取り戻す瞬間に思えた。この絵に先住民たちの生き方が全て詰まっているように感じた。自然からの恵みを全身で受け取り、余すところなく取り込み、今日目覚められたこと、命を繋げられることを地球に感謝する。私には、何よりも彼の表情が眩しく思えた。
入植者たちからの暴力、そして立ち退き、移住。自然と共に、自然の中で生きてきた先住民たちの生活は変化を余儀なくされた。それでも彼らは自分たちの物語を語り継ぎ、繋いできた文化の営みを絶やすまいと表現し続ける。
やはり考えさせられるのは、私たちの生き方がこれでいいのかという問いだ。時間、お金、他者からの評価。それらに一喜一憂し、こなす日々。私たちはどう生きたいのかを、もっと根源的なところまで立ち返って考えてみるべきではないか。国内の田舎でもなく、ニューヨークやロンドンのような外国の都市と比べるのでもなく、もっと私たちとかけ離れていて、それでいて「自然の中の一つの揺らぎ」として1秒1秒を生きる人々に学びたい。
ただの美術展ではなかった。草原を揺らす風となって、少し離れたところから自分のこれまでの人生を見つめ直す時間だった。彼らの言葉や思いが自分の胸の中に入って、体温を分けてくれた。日が昇り、日が沈むように、血が流れ、皮膚が替わる。この地球の流れの中に自分の存在を感じていたい。ちっぽけな存在でもなく、大きな存在でもなく、ただそのままの大きさで。なによりも、正直な人間として生きていたい。
ここまで読んでくださったみなさんへ最後に、壁に貼られていた先住民たちの言葉を送ります。
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