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Separation After Darkness

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短編、掌編を載せます。 幻想小説だったり(恥ずかしい)日常の一場面を切り取ったり、そうではなかったり。 私が見ている景色、感じた情景をみなさんにも共有したくて。
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#文学

魔女の空

 僕は轟音の後ろに座っている。そこは屋根の上、僕たちの家。
 すぐ横にはライフル。あと500mlの缶ビールが6個。その脇をまだ熱い薬莢が転がっていく。
 遠くの空に黒い転々が見える。魔女たちだ。僕は目を細め、次弾を装填する。
 ぬるくなった缶ビールを開ける。プルトップから炭酸が弾ける音。口を付けるとひどい味がした。まるで蛙の小便だ。そもそも僕はビールが好きじゃない。ぬるいビールは終末の味がする。で

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薫り馳せ絹

凍てしむその巳想えども
薫ずる絹の残り香よ
されし褪せる時の穂る
げに裂けふたぐ在ル枷ル