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5.恋愛はタイミング


19歳 春

私には好きな人ができました。

1年ほど前に大好きでこの世の何よりも大切にしたいと思っていた恋人と別れ、泣き腫らし、前を向いて、やっと「元彼」として笑って話せるようになった頃です。

同じ学科の同じグループで課外学習をしていた彼は、よく気付く人でした。私が言って欲しいこと、私が次にやるであろうこと。そして場の空気を優しくしてしまうとその上にふわりと暖かい言葉を添えられる。そんな人でした。

一緒にいるとあまりに心地よい空間を作られるので、まんまと私は恋に落ちました。

しかし私は奥手なだけでなく、好きになるとどうやって話していたか分からなくなる程のウブさをいつまでも持ち合わせているので、19歳の秋まで物語は何も進みませんでした。そしてこれがこの恋愛において最大のミスであることを私はまだ気づいていませんでした。

19歳 秋

事の転換点は、友人にカミングアウトしたことでした。19歳の夏、クーラーをガンガンにかけた車内で私は口早に「好きな人がいるんだよね」と言いました。
すると友人は「当ててい?𓏸𓏸でしょ」
と言い放ったのです。

えーーーー!!そんな!分かりやすかったの!?
私って自分が思ってるより顔に出てるのかな!?
え!?それってみんなにバレてるの!?

と頭の中で数人の私が騒ぎ立てている中、現実世界に一人ぼっちの私は
「えは…そう…えぇ…」
なんて弱々しい言葉を吐くしかありませんでした。

友人は笑いながら、「お似合いだよ、協力するよ」と言うと次の日から恋のキューピットムーブを見せつけ始めました。


夜のドライブ、カラオケ、飲み、夜のドライブ、夜のドライブ、電話、飲み、夜のドライブ…

今まで見るだけで良かった彼が急に1週間に1回のペースで目の前に現れるのです。友人に何度ノーベルキューピット賞を授けたか分かりません。
そりゃもう楽しかったし、毎日頭の中の数人の私はお祭り状態でした。

しかし夏が終わり、秋の風が吹き始めた頃私は女の勘が働きました。

彼は私のことを見ていない


例えば、
「あっちからはあまり誘ってこない」
「遊んでいても時折LINEを見てソワソワしている」
「好きな人の話になると急に黙り込む」

これは女なら百発百中で分かるやつ、を彼は何度も見せつけてくるわけです。

恋愛は楽しい局面の方が少ないですね。私は毎日悲劇のヒロインぶって家でしくしく泣くことしか出来ませんでした。

19歳 冬

そして悪魔の冬が来ました。

今年も双子座流星群という名を冠して、たくさんの星が夜空を駆け巡るニュースが私の耳に飛び込みました。

これだ!これでもう終わってもいい、だからありったけを!

そう思いながら、流星群、見に行こうよと彼に送り了承を得たあの日。私の心は星よりも月よりも輝いていたと思います。(もちろん奥手すぎるので友人たちも一緒)


そして運命の日、友人と合流しさぁ、彼のところに行こうとした瞬間、電話がなりました。

出なくてもわかりました。私の悪い勘は百発百中で当たります。

来られない、ごめん、と。
しかも、しかも、ほかの女と見る。
と言うのです。

全人類が激怒するでしょう。全人類がここで涙したでしょう。
私もです。友人と見た流星群の記憶も無く、気がつくと家にいて涙をいっぱいに貯めて布団で寝ました。

私が悲しかったのは、正確には他の女と見たことではありません。
仮に私をただの友人として思っていたとしても、友人とした約束を破るような人間であって欲しくなかった。そんな人を好きになったと思っていなかったから。
私のエゴですね。いつの間にか「私の好きな彼」としてしか見ていなかったのかもしれません。
でもそれが、何より悲しかったのです。人として無下にされたその瞬間が。そしてこの瞬間から冷めた熱の温度にも悲しみを覚えずにはいられませんでした。


19歳 冬の終わり

年が明け、冬がまた春を呼び戻している頃、彼に恋人ができたと聞きました。

そして、同時に彼が18歳夏の頃から19歳の春頃まで私を好きだったことも知りました。

この喪失感をなんと例えたらいいのか、私は未だに言葉にできません。

あの時、あの瞬間、私が彼に伝えていれば、彼が私に伝えてくれれば、今隣にいたのは私でした。

この1つのボタンの掛け違いが、1つの恋を終わらせ、1つの恋を実らせたのです。ドラマかよ、と言いながら友人と笑いました。



ね、恋愛はタイミングでしょう。

一昨日バスに揺られている時、急に彼のことを思い出して涙が出ました。そして友人と見た双子座流星群があまりに綺麗だったことも思い出しました。もう私は大丈夫なんだ、そう思ったのでこうしてnoteで供養させてもらった訳です。



私はこれから少しの恋をし、いつか本当に好きな人を見つけるでしょう。
そしてその時、タイミングを逃すつもりはありません。
また、彼を思い出すこともありません。

ただひたすらに掴むのです、このサバイバル勝者の称号を。
1%にも満たない恋愛生存率の中生き抜くのです。

ただ彼に見せつけてやるのです。
どうだ、幸せそうな私のこの顔は!
と。

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