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YouTubeの誤BANは決して他人事ではないよという話

 にじさんじ所属のバーチャルライバー『ラトナ・プティ』が、4/30の午後にチャンネルが無警告で停止されるという憂き目に遭った。
 当初はYouTube側から停止措置の理由が公表されず、複数の憶測が流れていたが、数日後に『性的なコンテンツ及び複数の重大な違反に基づく停止』という旨のメッセージがチャンネル上に表示されるようになった。また、にじさんじ運営から一連の事案に関する声明が発表された。

 ただし、チャンネルを停止する件について、YouTube側からの事前通告や警告は存在せず、やはりYouTube側の裁定基準やシステム上の手続きには疑問の残る状況であった。
 5/12に彼女の公式チャンネルで停止措置が解除され、一部の機能を除いて復旧したことが彼女のTwitterアカウントより報告されている。サブチャンネルでの活動、その他配信サービスでの活動を検討していた中での復旧であり、彼女を応援するファンの一人としてはとても喜ばしいことである。

 今回の事案について、バーチャルライバーに関する騒動を扱う一部の配信者から『にじさんじ運営が警告メールを見落としていたのではないか』という指摘が行われたが、これは筋違いである可能性が高い。
 運営が発表した声明文には、チャンネル内の個別コンテンツについての通告メールが届いていたことや、そうした連絡を含むメールがライバー側に転送・共有する仕組みとなっていなかったことが記されている。YouTubeからのメール送信の仕組みを把握していなかった点や、連絡の不備に気づかず活動を続けていた点は、にじさんじ運営の問題であり改善が強く望まれる要素と言える。
 しかし、チャンネルが停止された理由については、現時点で公開されている情報から推測することはできない。また、誰に今回の事案の責任があるのかについても外部から推測することは難しいだろう。

 ただし、4月から5月現在にかけてのYouTubeの稼働状況やBANの判定状況を考慮すると、今回のチャンネル停止措置はYouTubeの抱える不具合によるものである可能性が考えられる。すなわち、条件さえ満たせばどのコンテンツを扱うチャンネルであっても被害に遭う可能性があるということだ。
 注目すべきは4月期にライブ配信の唐突なBANや動作不具合が相次いだ点である。後者についてはソフトウェアの不具合とハードウェアの不具合の双方が疑われるため、直接的な要因ではない。しかしながら、スコア算出の項として関わっている可能性があるため、一応ここで触れておく。

 直接作用していると思われるのは、前者として挙げたライブ配信BANの頻発である。ライブ配信を開始して数分のうちに接続が途絶え、画面を更新すると『YouTubeの規約違反により削除』という表示が現れる。4月のYouTubeはこのような状態に陥り、枠の取り直しや配信の断念を余儀なくされるライブが相次いでいた。
 ラトナ・プティの場合、このようなBANに遭遇していたのはもっぱら定期配信していたASMR(ささやき声配信)でのことである。24時という深夜帯にライブで行われるこの配信枠が、4月においては頻繁にYouTubeのAIによる停止を受けている。彼女は枠の取り直しという形でこうした不具合を乗り切っており、その後特に警告や規制を受けることがなかったため、チャンネルを停止させられるまでこの方法を採り続けていた。
 もし、AIの誤った判断によるBANがすべてカウントされていたとすると、形式上の動画停止回数は相当数溜まっていたことになる。この停止措置の内容が精査されず、表面上のカウントのみで判断していたとすれば、
『YouTubeの度重なる警告や規制を無視し、問題のあるコンテンツをアップロードし続けたユーザー』
としてYouTubeのシステムから評価される可能性が高い。一か月分のスコアから重大な違反ユーザーとして認定され、チャンネルが停止させられたとしても、決しておかしくはない状態なのである。

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