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新連載『Kommunismus(コムニスムス)』イメージアルバム全曲総解説

 Chum Reap Sur!!(チョムリアップ スォ!=クメール語でこんにちは)

 新連載『Kommunismus(コムニスムス)』がスタートしました。掲載媒体は、アニメーション制作会社TMSエンタテイメントさんの新規IP開発部門「TMS-Lab」『Kommunismus(コムニスムス)』は、カンボジア内戦を題材にした完全新作であり、現在電子書籍による「完全完結計画」(ご支援にXin Cam On)が進行中の『ディエンビエンフー』正当な続編です。

(WEBTOONではないけど、縦読み&横読みどちらも対応なのだっ!)

(ページをめくらなくてもマンガが読めて楽だっ!TMSアニメ公式YOUTUBEより)

 思い出せば、『ディエンビエンフー』を連載した「Comic新現実」「月刊IKKI」は、完全に大手出版社の「実験開発部」と呼べるセクションでした。つまり、僕の企画が奇跡的に通る場所は常に「実験場(Lab)」。連載の機会に心から「オークン!」(クメール語でありがとう)です。

 連載準備期間はとても長く、構想を練る中で、カンボジアのムードに浸るべく、先行してイメージアルバムを制作しました。連載開始のタイミングで『Kommunismus Image Album』(DJまほうつかい、17曲入り)として、SpotifyApple MusicAmazon Music他各種音楽アプリでサブスク配信開始。レーベルは、個人電子配信レーベル「島島」の音楽部門。実験ということで、このように作者がサントラを作り自主配信することも許可されています。

Amazon Music:Kommunismus Image Album

 「ディエンビエンフーの続編?」「舞台がカンボジアなのにタイトルはドイツ語?」 と多くの「?」があると予想される本作ですが、イメージアルバムの各楽曲に関する解説は、未知なる物語に対して相互補完の機能を果たすかもしれません。以下は全17曲を総解説したセルフ・ライナーノーツです。曲を再生しながら、マンガ本編を読みながらお楽しみください。

M1-Kommunismus Theme

通称「OPテーマ」。TVアニメ尺を意識した「TV Size」が先行リリース。歌詞にある「スーリヤヴァルマン」とは、厳密には「スーリヤヴァルマン二世」を指し、彼こそアンコール・ワットを建設したカンボジアの王です。「ぽるぽとぽるぽと…」というアウトロは、クメール・ルージュの指導者オンカー? サロト・サル? それともただ水が滴る擬音? サビの「He's Coming」は、Prince「Let's Go Crazy」調。 Vo.は伊吹咲希さん。「三国志愛ラヴ・テーマ」みたいな歌があったらいいな、そのカンボジアverを作ろう! が動機で、一番最初に仕上がった曲です。

M2-Tonle Sap

カンボジアの巨大な淡水湖「トンレサップ」をイメージした曲。ベトナムのニュクマムと同じ要領で、カンボジア人はトンレサップ湖の淡水魚を使って魚醤「トゥック・トゥレイ」を作ります。詳しくは無料公開している第1話のおまけマンガ「アオザイ通信」改め「クメール通信 #1」(ビューワーの最終ページ)をご覧ください。ヒンディー教の影響が濃いカンボジアの寺院は「インド的宇宙観」によって建設され、トンレサップ湖は「ガンジス川」に見立てられています。

M3-The Khmer Rouge

カンボジアの共産主義革命組織「クメール・ルージュ」をイメージした曲。暗闇でコソコソ密談、あるいは密告し合っている雰囲気です。「クゥワァ〜〜〜」という悪霊(?)の声は作者によるもの。

M4-Le Rouge Et Le Noir

曲名はスタンダール著『赤と黒』に由来。マンガ『Kommunismus』デザイン上の配色は、共産主義や血の色を示す「赤」と、クメール・ルージュの衣服、カンボジア人の褐色を指す「黒」にちなんでいます。カラフルだった『ディエンビエンフー』とは異なり、本作のデザイン上の配色は「赤と黒」の2色のみ。マンガ本編でも電子の特性を生かし、印象的なシーンで赤いページ(パートカラー)が登場します。

M5-Goldberg Variations BWV988

グレン・グールドの演奏が有名なバッハの「ゴルトベルク変奏曲BWV988アリア」の電子音響的なカバー。クラシック曲(西洋)ですが、最後は銅鑼(ドラ、東洋)を鳴らして曲が終わるアレンジです。

M6-Let's Talk About Kommunismus

「共産主義について話そう」という、会話劇とも脱力ラップとも呼べそうな、不思議なナンバー。「お金持ちは?」→「農業をさせればいい」。「土地持ちは?」→「没収するしかない」。「家族は?」→「みんなが家族になればいい」など、原始共産制を夢想する農民たちのほのぼのトークです。掛け合いVo.として、伊吹咲希さん、黒木信乃さんが参加。ビートはパッド手打ちで補正なし。のんびりとした揺らぎがあります。

M7-Re-Education

直訳すると「再教育」。「自己批判」「総括」を促す曲で、インダストリアル・ノイズぽい音響に、薄くM5「Goldberg Variations BWV :988 Aria」のメロディが並走します。

M8-Neue Tanz

直訳すると「新しい舞踏」。これも「Kommunismus」同様ドイツ語です。カンボジアが属するインドシナは、インドと中国の間。大地を踏むようなトラップぽいビートと、中国的な音色&メロディ、京劇のようなヴォイスが混ざった摩訶不思議な曲です。M1「Kommunismus Theme」の別アレンジ。

M9-Arriere Petit Fils

通称「プティのテーマ」。「ひ孫」を意味するフランス語が「Arriere Petit Fils(アリエ・プティ・フィル)」で、これが『Kommunismus』の主人公「プティ」の名の由来します。おばあちゃんがフランス語でひ孫を呼ぶのは、仏印(フランス領インドシナ)時代の名残り。プティはまだ反抗期前、どんな夢を見ているのでしょう?

M10-Far East Far West

西洋クラシック音楽のオーボエと、東洋の弦楽器の調べが乱暴にぶつかり合う曲。それを繋ぐのは、電子音のスクラッチ? 洋の東西、資本主義と共産主義など、思想や文化をぶつけ合う曲が多いですね。

M11-Swamp Thing

タイトルはDCコミックのキャラクター『スワンプ・シング』より。「カンボジアの沼からよくわからない怪物が出現した」、そんなイメージですが、今の所、沼のモンスターは登場予定はありません。でも、蛇と亀のモンスターは登場予定。

M12-Erhu And Piano

中国の弦楽器「二胡=Erhu」と、厳格な12音階に縛られた「ピアノ」が、カンボジアの森の中で共演している、というコンセプト。森の中でどうやってマイクを立て録音しているのか、完全に謎な曲。ある意味メタバース的音響空間と言えるかもしれません。

M13-Angkor Vat

アンコールワットの悠久の歴史に思いをはせる、通称「エンディング曲」。歌詞の「私はワタシと旅に出る。」は、高畑勲のジブリ映画「おもひでぽろぽろ」のイメージだし(権利上、厳密には歌詞は異なる)、そもそもプティ&ヒカルこそ『火垂るの墓』のキャッチコピー「4歳と14歳で、生きようと思った」なのかも? 同様に歌詞にある「象の鼻テラス 歩いてる」とは、横浜のイベントスペースではなく、アンコール文明の遺跡「アンコール・トム」の一角を指します。アンコール・ワットはスーリヤヴァルマン2世によるものですが、象の鼻テラスを含むアンコール・トムはジャやヴァルマン7世による建造。Vo.は黒木信乃さん。JRの音声、途中の謎のアジア市場の言語のやり取りも、聴きどころです。「阿片」を意味するダウナーな「Opium Mix」、浮遊感のある「Floating Mix」、二種のREMIXも先行リリース済み。アンコールワットは英語表記では「Angkor Wat」ですが、アンコール遺跡を発見(再発見)したフランス人アンリ・ムオに因んで、フランス語表記の「Vat」を採用。

M14-Kommunismus Theme (Instrumental)

OP曲のインストver。

M15-Let's Talk About Kommunismus (Instrumental)

「共産主義について話そう」のインストver。この曲をカラオケに、ある思想について話し合えば曲になりそう?

M16-Angkor Vat (Instrumental)

Angkor Vatのインストver。ボーカルを外すと完全にテクノロジックなサウンドです。あれもこれも欲しい! という果てない欲望が駆動させる資本主義と比較すると、「Kommunismus」には、もっと非人間的、SF的、未来的なイメージがあると感じています。

M17-Pol Pot Loop

「ぽるぽとぽるぽと…」と息が上がるまで繰り返す、いわば「苦行ソング」です。

 マンガ本編より先行して仕上がっていたこのイメージアルバム。動画内でも一部お使いいただいているので、改めてモーションコミックを視聴すると「あ、あの曲だ!」とわかるかもしれません。

 ボーカル、環境音の録音、謎の奇声、セリフ以外は基本ソフトウェア音源で作られています。未マスタリング。ベース弱め。かなりチープな状態なので、マスタリングも含めていつか新録して作り直したいです。アナログ盤になったら最高〜。(原稿やれ!)

【おまけ1】
Spotify公式さんが制作してくれた(つまり西島の仕込みではない)「THIS IS DJまほうつかい」プレイリストです。200曲以上を配信しまくっている音源から、厳選。Check It Out Yo!!

【おまけ2】
アルバムに先行してリリースされたシングル3枚。

【おまけ3】
フィジカルCDの発売決定です。発売が決定した紙の単行本『コムニスムス』(nr press)と一緒にリリース予定です。現在制作中。詳しくはVtuberヒカル・ミナミ動画をご覧ください(特に後半)

特厚!! 紙の単行本はこちら



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