西島大介(島島)
法に照らせば違法がわかる〜音楽配信2021年末の現状〜
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法に照らせば違法がわかる〜音楽配信2021年末の現状〜

西島大介(島島)


 例えば宮崎駿の戦車と自然描写のように、ミリタリーマニアであるのと同時に世界の平和を願うことはできる。「人生で一番やめて良かったこと」と訊かれ、即答で「覚醒剤」と答えるラッパー孫GONGのように、違法を知ったうえで健康をキープする人もいる。法に照らせば違法がわかるリーガルとイリーガル、合法と違法は、実は両極に離れているのではなく常に背中合わせだ。

 『劇場版 呪術廻戦 0』が公開されたので、映画を観る前に主題歌を聴こうとキーワード「呪術廻戦 」でSpotify検索をしてみた。するとKing Gnuではない「呪術廻戦」という曲を発見。アーティスト名はSkyzoRndomizer。曲名が「呪術廻戦」なだけで、Eveともヌーとも無関係な、ヒーリング系インストゥルメンタルの曲。でも、題名(タイトル)は著作権を持たないから、「呪術廻戦」というタイトルのオリジナル曲を作ることに違法性はない。

「呪術廻戦」という曲

「なにわ男子」という曲

「オミクロン」という曲(これは流行らないでほしい)

 他の曲をチェックすると「なにわ男子」「カムカムエヴリバディ」「オミクロン」「石橋貴明鈴木保奈美」「あつ森アプデ」など、今時のツイッタートレンド的な言葉ばかりが並ぶ。Spotifyに「なにわ男子」の曲は存在しないから、明らかに検索ワードでアクセスさせ、踏ませる(再生させる)作戦。でも、音源はオリジナル。ギリギリ違法ではない。なるほどなと感心した。

 さて、電子書籍はイメージとしては「本」だけど法的には「データ配信」だ。日本旧来の「取次」システムが該当しないため、だから、紙の本の流通では不可能な「無料読み」や「セール」ができる。言葉を変えれば「脱法書籍」だと思う。

 マンガ、音楽、映像、アートフォーム(表現形態)が異なっていてもそれらは等しく「データ配信」。マンガをePubデータ配信できるなら、音楽だって同じこと。だったらDJまほうつかい」「ひめとまほう(姫乃たまさんとのアイドル・ユニット活動)などの名前で行ってきた膨大な音楽活動も、マンガ作品同様に配信できるのでは? そう考えて、過去にCDRSoundcloudで発表してきた音楽のサブスクリプション配信を2021年の夏頃からスタートした。プロがマスタリングしたアルバムもあれば、スマホで録っただけのものもあり、質はバラバラ。ジャンルも様々。

 配信にあたり、ディストリビューターは国内のサービス(TuneCore Japan、narasu、Frekul他)ではなく海外の「Distrokid」を利用した。年間80ドルの維持費さえ支払えば、制限なく曲を配信できるし、100%の売り上げを手にできる。Spotifyと連携し、どんなインディ音楽家でも公式アーティスト登録可能。配信曲数は無限で、アルバムでもシングルでも何枚でもOK。もちろん音楽配信のいわゆるApple税やAmazon税は、ディストリビューターの手前で電子書籍同様に取られている。

 「どう広がるか」「どう届くか?」を検証したいため、ニュース・リリースを打ったりはせず、静かに、少しずつ配信をスタート。気がつけば、レーベルとして「DJまほうつかい」は99曲、6時間19分、「ひめとまほう」は34曲、1時間57分 = 合計約140曲、約8時間分の音源を、SpotifyApple MusicAmazon Musicを中心に、約20の音楽アプリに配信している。Distrokidや、それと連携するSpotify For Artistでは詳細なデータが可視化されるので、北米、南米、ヨーロッパ、もちろん日本と様々な国と地域で再生されていることがわかる。僕の音楽は、現状、一曲単位ではSpotifyで「最低再生数」として表示される1000再生にも届かない。でも一曲あたり10回再生されれば、それだけで1300再生にはなるだろうし、100再生なら・・・。

アフリカ、オーストラリアは未踏

 配信された楽曲たちは、Instagram、TikTokにも埋め込むことができるので、もしインフルエンサーに曲が使われたら(是非、使ってください!)ぐるぐると再生数は回るはず。Spotifyの場合「Lo-Fi Beats」など、公式プレイリストに採用されると再生数が上がるそうなので、Spotify For Artistの機能を使い「Submit」(自己推薦)をしてみたけれど、一度も公式プレイリストに入らない。多分ミックスの時点で「流行りではない」と却下されている気がする。流行りのアプリ「Anchor」を使って、曲埋め込み式Podcastもやってみたけど、完全に無風。世界中で聴かれていると言ってもSpotifyに限れば月間リスナーはわずかに57人。2、3ヶ月遅れて判明するスタートから6ヶ月分の総売り上げは60ドルに過ぎない。

 例えば「松本隆 Works」「川谷絵音 Works」など、偉大なる音楽家は運営側がプレイリストを作ってくれるのけれど、「DJまほうつかい Works」は誰も作ってくれないので自作してみた。少しだけフォロワーさんもいて良い自己紹介になっていると思う。でもこれは「公式風非公式Works」なので、違法ではないが合法でもない感じ。ついでに言うと「THIS IS DJまほうつかい」「THIS IS ひめとまほう」も自作。

公式風に自作
こちらも自作
自作それはDIY

 僕の曲自体は、全て作詞&作曲、トラックメイクを自分で行うオリジナル。サンプリングもメロディのパクリもしない。長く未発表だった「Yoshiki」という曲は、Aメロのコード進行がX JAPAN「Endless Rain」と同じ。しかし、奏でるメロは違うし(というかメロが存在しない)、音楽ジャンル的にもメタルではなくハウスまたはテクノだ。途中8:35秒あたりからドラムが破壊される展開は、破滅に向かって演奏するバンドへの深いリスペクト。Spotifyでキーワード「Yoshiki」で検索すると一番上に来てしまう。

 同様に限りなくMETALLICA「Enter Sandman」に近い「Sandman」は、キーが違うし、音符が違うし、音色も違う。Bメロへの展開も全く異なる。メタルマナーとパロディ的な精神性で権利的には回避できる。METALLICAはナップスター訴訟の事例があるように権利に対して厳しい音楽家の代表格だが、今の所申し立てはない。

 音楽だけでなく、自著『世界の終わりの魔法使い 完全版 1 すべての始まり』のオーディオドラマも配信中している。すでにAudibleaudiobookJPでも配信しているタイトルだが、サブスク配信版はジングルをつけて音源として差別化。出版社との契約は紙の出版権のみなので、電子マンガもオーディオドラマ配信も「島島」から行っている。

 『Saudade(サウダーデ)』は、過去に20本限定でカセットテープでリリースしたトリオ編成によるボサノバ曲集。Apple Music、Amazon Musicでは比較的上位で聴かれている。「DJまほうつかい選ぶサウダージを感じるボサノバ曲」というプレイリストを作って、大好きなボサノバ名曲に自作曲を混ぜ込んで心地よく聴いているけれど、まだこのプレイリストにフォロワーはいない。

 法に照らすと違法がわかる」自分が版元(レーベル)になると常に法律にさらされている実感を持つ。個人電子出版レーベル「島島」として約二年、自著、IPの権利を整理しインディペデントな電子出版を行ってみて、強く実感することはこれに尽きる法治国家に暮らし、著作物によって著作権を持つ僕の立場は、法によって守られ、著作権法のルーツを辿ればスイスで結ばれた「ベルヌ条約」への加盟に行き着く。電子書籍は昨日今日のブームに見えるけれど、それを守る権利は100年以上前の明治時代に設定され、スマホやコンピューターによる現実生活の変化に合わせその法と権利を拡張した結果なのだろう。

 島島の電子書籍は現在34冊(2022年2月中には38冊を予定)、音楽配信はそれを超える140曲超。タイトル数を増やし、制作基盤を整えることはメジャーな出版社や音楽レーベルが行う行為と一緒。「一冊あたりの部数を減らしながら、中身を問わず、博打のように点数を増やし書店棚を埋める」とか「新人を買い叩いて働かせ、売れなきゃ契約解除」という旧来の出版社やレコード会社のやり方を、それでも「文化」と自称するなら、「なにわ男子というタイトルの曲」だって、僕の「自作WORKS」だって、それは合法な文化だ。そんなことを考えながら、作った曲(↓)もある。

(「法に照らせば違法がわかる」という歌詞を含むポップソング)

 さて、逆に考えてみよう。ビジネスだけが目的なら、僕も量産曲にキャッチーな題名をつける行為をやってみたらどうなるだろう? 作家的な信頼は失うけれど、一方売り上げは間違いなく上がるはず。だったら、名義を変えればOKなのでは? 1000曲作れば、単純計算半年で600ドル。それを一年続けたらなら1200ドル? 悪くない。作曲が面倒なら、公園や喫茶店、あるいはファミレスでフィールドレコーディングしてみようか? 海外向けに、ディスカバー・ジャパン路線なら意外と当たるかも? ていうか、サブスクで音楽配信できるなら、マンガもサブスク化すればいいのでは?(実際やってみたのがdaisukenishijimacom。是非ご登録を!) アイデアは広がる。

 法に照らせば違法がわかり、違法でなければきっと何でもできる。ここから先は内緒で・・・。(おしまい、初出はFANBOXです)

140曲中、最も謎な音源。こんなものまで配信可能。

ざっくり自主配信とまとめて語りましたが、厳密には『All those moments will be lost in time EP』『Ghosts in the Forest EP』(ともにHEADZ)リリースの音源2枚は「島島」からの配信ではありません。再生数はレーベルを通して配信された音源(=楽曲の質、パッケージのリッチさがあるもの)の方が高い気がします。マスタリング、デザイン含め予算と手間が違うし、A&Rもいるから当たり前でしょうか。アナログ盤『Girl / Boy EP』は盤のリリースはHEADZ、電子のみ島島です。フィジカル(紙)は出版社、電子は自前、という最近の僕のマンガ出版と同じスタイルになっています。

今後も新譜を準備中。まだまだHDには未配信音源が眠っています。気分は故・Princeの金庫「The Vault」?

さて、記事内では記していませんが、2021年下旬に、報告のない楽曲使用が発覚。それは商業イベントでの著作権侵害、つまり完全な「違法」でした。使用料が適切に支払われたため「マイナス20ドル」だった2021年の島島の音楽配信事業は大幅に黒字化。やっぱりIP管理、権利の取りまとめ大事すぎる〜〜〜っ! と強く実感しました。

最後に大晦日配信のおめでたい新曲をどうぞ。2022年もよろしくお願いいたします。

【追記1】
なんと、音楽配信苦節半年、ついにSpotify公式の「THIS IS DJまほうつかい」が生まれました!なんらかのアルゴリズムか、もしくはエディターさんの人力か・・・。なんにせよ嬉しいです。さあみんなでフォローしよう! 

また、このnote記事の効果か、リスナーは少しずつ増えて現在「130人」くらいで安定しています。


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西島大介(島島)
マンガ家の西島大介です。2020年自分の本だけをせっせと電子化する個人電子出版レーベル「島島」設立。『ディエンビエンフー完全版』『世界の終わりの魔法使い』他、40タイトルを配信中。新連載『コムニスムス』TMS-Lab https://daisukenishijima.com/